これがぼくらの愛情表現
※アイドル夢主
12月ももう下旬に差し掛かっている。年の瀬というのはどの業界も、これでもか!ってくらいに忙しい。それは芸能界も例外ではないのです。
というかまだ明けてないのに、更に言えばクリスマスも迎えてない頃から「あけましておめでとうございますー!」って言わなきゃいけないのマジで勘弁して。時々、脳がキャパ越えんのか何なのかわかんないけど、今って何年だっけ?って本気で考えちゃうから。
仕方ないのはわかっちゃいるけどさー…年明けに放送する番組だから、今から収録しなくちゃいけないからね。何年も同じようにやってきているけれど、いまだにこれだけは慣れることができない。今日も年明けに放送予定の収録を2本撮り終え、ようやく一息ついた。
「うあー…疲れたぁ……」
「お疲れ様です、なまえちゃん。今日はあと雑誌の取材だけだから、もう少し頑張って」
「んん、わかった……甘いもの食べたい。生クリーム飲みたい」
「生クリームは飲み物じゃありません。少し余裕があるから、取材前にコンビニに寄りましょうか」
やったー!これで糖分補給ができる…!
やっぱり疲れた時には甘いものだよね、うん。こういう時の為にチョコとか飴とか持ち歩くべきかなぁ。でも飴はいいとしても、チョコは暖房で溶けちゃいそうだし…楽屋に冷蔵庫があれば万事解決なんだけどそうもいかないし。
あ、小さな冷蔵庫を買って持ち運べばいいのかな。そうすればチョコだけでなく、クリーム系のお菓子も休憩中に食べることできるじゃん!よっし、これは早速マネージャーに相談だー!と口を開いた瞬間に「ダメですよ」と、即却下された。ねぇ待って?私、まだ何も言ってないんだけど?エスパーですか、貴方は。
「何年、貴方のマネージャーをしていると思ってるんです」
「さっすが敏腕マネージャー…察しなくていいことまで察しちゃうのね」
「そうでないと暴走する貴方を止められないでしょう?」
暴走なんてした覚えねーですよ、この野郎。
「今みたいな突飛な考えのどこが、暴走していないと言う気ですか。持ち運び用の冷蔵庫は断固、買うことは許しません!」
「発言がお母さん」
「誰がそうしてると思ってるんですか」
あ、私ですか。そうですか。…いいや、とりあえず今日の糖分補給分はコンビニで仕入れられるし。冷蔵庫のことは一旦置いておくとしよう。あー、そろそろ着替えて移動の準備しないとダメか。珍しくカツカツなスケジュールじゃないけど、のんびりし過ぎると慌てる羽目になるし、何よりコンビニに寄れなくなる。
衣装のワンピースを脱いで、私服に着替えてから荷物整理をしていると、ノック音が響き渡った。誰だろ、さっきの収録で共演した人達には挨拶済ませたんだけどな…というか、もう帰り始めてるか次の仕事に向かってると思うんだけど。時間的に。
訪ねて来る人物に全く予想がつかず、首を捻るしかできない。そのままの状態で固まっている私を余所に、マネージャーは今開けまーすってすんなりドアを開けた。
「ああ、お疲れ様です。アイドリッシュセブンの皆さん」
「お疲れ様です。おねーさん起きてます?」
「……アイドリッシュセブン?」
てか二階堂くん、います?とかじゃなくて起きてます?ってどういうことなの。私、そんなにいつでも寝ている印象なのか。君の中では。
まぁ、ひとまずそれは置いておくとして…何でアイドリッシュセブンが此処に?いや、この局にいる理由は収録があるからだろうって予想がつくけど、私の楽屋を訪ねてくる理由はさっぱりだ。だって私はもう雑誌の取材だけだし…この子達と共演する予定は、ないはず。
「あっなまえさんいた!お疲れ様でーす」
「うん、お疲れ七瀬くん。マジで勢揃いなんだね、君達」
「これから歌番組の収録。そっちはもう終わり?」
「環くん…なまえさんは先輩なんだから、口調気をつけて」
四葉くんと逢坂くんの関係は相変わらずだなぁ…でも最近は、割と仲が良いように見えるからちょっとホッとした部分もあるのよね。初めて会った時はもう少し、ギスギスした感じだったし。
成長したんだなぁ、と内心頷いていると、一織くんと三月くんに時間はあるか、と聞かれた。
「マネージャー、何時まで平気?」
「次の現場までそう離れてはいませんし、あと30分くらいは大丈夫ですよ」
「…だって」
「じゃあ大丈夫だな!テーブル借りても平気?」
「え?うん、今荷物どけるわ」
荷物整理しようとテーブルに置いていたバッグをソファに移動させると、何やら真っ白な大きな箱を持っていた三月くんがいそいそと準備を始めた。他の子達もわらわらとその周りに集まって、三月くんの手元をワクワクとした面持ちで見つめていらっしゃる。この箱の中…何が入ってるんだ、一体。
全く意味がわからないし、これから何が起きるのかもわからなくて、ただ立ち尽くしていたらそれに気がついた六弥くんがにっこり笑みを浮かべて近づいてきた。
「なまえ、どうぞこちらに」
「お、おう…顔面偏差値がたっかいね、相変わらず」
「?ワタシ、褒められましたか」
「うん、褒めてる。めっちゃ褒めてる」
六弥くんにエスコートされ、向かいのソファに腰を下ろした。そして目に飛び込んできたのは、軽く5〜6人分はあるであろう大きなホールケーキ。生クリームと、いちごでデコレーションされ、サンタクロースの人形が飾り付けられたショートケーキは、それはそれは美味しそうで。
お腹は空いてるし、糖分補給したくて仕方がなかった私は思わずゴクリと喉を鳴らした。
「なまえさんさ、生クリームが好きだって言ってただろ?だからショートケーキにしてみた!」
「……えっ三月くんが作ったの?!」
「正しくはオレと一織な。実家がケーキ屋なんだ、オレ達」
「あ、あー…そういえば、そんなこと言ってたね」
雑誌のプロフィールや対談、それからバラエティとかでもそんなこと言ってた記憶がある。それにしたって、…出来栄えがまるでお店で売られているのと変わんないんだけど。
「というわけで、どうぞ。兄さんの作るお菓子はどれも美味しいですよ」
「あ、どうも。…うっわ、うま!」
「ははっサンキューなまえさん!」
「てか、食うの早くね?そんなに腹減ってたのか?おねーさん」
二階堂くんの問いにコクリ、と頷きだけを返せば、にんまりと笑みを浮かべた三月くんがいっぱい食えよーって嬉しそう。他のメンバーもどこか嬉しそうにしてるし…何なんだろう。
でもこの子達、別に何かを企むなんてことしそうにないし気にしなくても大丈夫だろうか。というか、気にしたら負けって言葉もありますよね。うん。
「そのケーキな、作ったのはみっきーといおりんなんだけど」
「デコレーションはオレ達も手伝ったんだよ!」
「え?そうなの?」
「ええ、実は。統一感がありませんが、まぁ…」
「もうすぐクリスマスなので、皆でなまえさんにプレゼントをって話になって」
逢坂くんの言葉に思わず、咀嚼していたケーキを思いっきり飲み込んだ。危うく詰まらせかけたそれをお茶で流し込み、事なきを得る。
ちょっと待って?プレゼント?アイドリッシュセブンの皆が、私に?それがこのケーキ、ってことですか?……マジで?!
「ええっと、………まずはアリガトウゴザイマス」
「ふはっ!何で片言…!」
「だ、だって私、何もプレゼント用意してないぞ…?!」
というか、立場的に先輩である私が皆にプレゼントを用意すべきなのでは…!
「おねーさん、俺らがデビューしてからずっと気にかけてくれてるだろ?そのお礼も兼ねてるっつーか」
「いつも美味しい差し入れも頂いてますし」
「俺とりっくんで何かしてーな、って話してたら、ナギっちから甘いものが好きだって聞いてさ」
「でもお菓子作れないよね、どこのケーキ屋さんのにしようかって話になって」
「ちょうど良く現れたミツキが、それなら土台は作るからデコレーションを皆さんでしましょうと提案してくださったのです!」
「せっかくのプレゼントだからさ、なんか手を加えたくて」
「兄さん1人では大変なので、私も手伝ったんです。…お世話になっているのは、事実ですから」
フォーク片手にポカーンとしていると、アイドリッシュセブンはテレビでよく見るキラッキラなアイドルスマイルを浮かべ、メリークリスマス!と口にした。
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