これがぼくらの愛情表現その2
「八乙女さん、みょうじさんお疲れ様でした!これで本日の取材は終了となります!」
「ありがとうございます、お疲れ様でした!」
「お疲れ様でした」
アイドリッシュセブンお手製のケーキを頂き、元気いっぱいで本日ラストの仕事を終えることができました。はー、糖分の力ってすごいなぁ。
そして本当に美味しかった…今度、三月くんと一織くんのご実家だというケーキ屋さんにも行ってみよう。三月くん達はお店の経営に携わっていないだろうが、きっとお店のケーキも美味しい。そんな確信が私にはあった。
「なまえさん」
「八乙女くん。お疲れ様」
「お疲れ様です。あー…と、今時間いいですか?」
「うん?この取材が最後だから大丈夫だけど…君は平気なの?」
「俺も今日はこれで最後なんで。じゃあ、楽屋まで来てください」
雑誌で使う写真は先に撮り終ってて、対談は私服でやりましょうって企画だったから特に着替える必要もない。マネージャーにちょっと行ってくる、とだけ声をかけ、私は八乙女くんと一緒に彼の―――というか、TRIGGERの楽屋へと進路変更ー。
用事があるのは確かだと思うんだけど、わざわざ楽屋まで来てくれっていうのはどういう理由なのだろうか。別に襲われるとか、そういう心配は一切してないんだけど…ほら、いくらスタジオ内とはいえさ?取材も撮影も終わった後なのに、何で楽屋を訪ねるの?って変な勘繰りされちゃったら八乙女くんが困るから。
まぁ、そんな勘繰りするようなスタッフはいないと信じちゃいますけど。それでも一応、警戒心ってものは大切でしょ?この業界で生きていく為には。そんなことを考えながら歩いていたら、いつの間にかTRIGGERの楽屋に着いていたらしい。八乙女くんにどこまで行くんですか、って笑われながら腕を掴まれてしまった。
「あっお疲れ様!楽、なまえさん!」
「お疲れ様です」
「おー。ちゃんと連れてきたぞ」
「……九条くんと十くんって、結構早くに取材も撮影も終わってなかった?」
今日はTRIGGERとの対談の取材。でも4人ではなく1対1での対談だったから、九条くんと十くんはずいぶん前に全てを終えているはずだった。お疲れ様でした、とスタジオを出ていく姿も見ていたし、その後、見学をしに戻ってきていた記憶もない。とっくに帰っているか、次の仕事へと向かっているものだと勝手に思っていたのだけれど、どうやらそうではなかったらしい。
楽屋にいれば空調はきいているし、飲み物もないわけではない。残っていても然して問題は発生しないだろうけど…でも、残っている理由がわからない。3人での仕事があるなら納得もいくけど、さっき八乙女くんはこの取材で最後、と確かに口にしていたから。だからこそ、尚のことわからなかった。
「なまえさん、紅茶とコーヒーどっちがいいですか?」
「え、あ、紅茶…」
「楽はコーヒーでしょ?ミルクと砂糖、入れておく?」
「あー…じゃあ頼む」
「わかった」
「なまえさん?そっちのソファ、座って大丈夫っすよ」
ああ、うん、ありがとう…とりあえず、いつまでも立っているわけにもいかないから、遠慮なく九条くんが座っているソファの向かい側に腰を下ろした。だがしかし、下ろしたのはいいものの、何かソワソワするのは何でだ。
後輩とはいえ、世間を騒がすアイドル相手だからだろうか…そして相変わらず、3人共顔がいいなぁ。アイドリッシュセブンの皆もカッコイイ子が揃ってるけど、TRIGGER3人の破壊力は半端ないと思う。本当。私の周りには顔面偏差値の高い人間が多すぎやしないだろうか。…眼福だけど。
「で?私八乙女くんに呼び出されたわけだけど…3人揃ってるってことは、TRIGGERが私に用事があるってことよね?」
「ええ。ボク達からなまえさんに渡したいものがあって、楽に頼んだんです」
「渡したいもの?」
「その前に紅茶どうぞ」
「ありがと、十くん」
温かい紅茶を口にしながら、何かを取りに行った九条くんの背中を見つめ、再度首を傾げる。
「メリークリスマス、なまえさん」
「……うん?」
「シックな色合いのマフラーと手袋があって、なまえさんに似合いそうだなぁって楽と天と話してて」
「あ、はい」
「なまえさんがお気に入りのコスメの新作、って最初は思ったんだけど、多分、自分で買ってるだろうって話になったんですよね」
ああ、クリスマス限定カラーのかっわいいやつね。うん、確かに買ったな。自分で。コスメは大体、自分で買うし。たまにプレゼントでもらうことはあるけど、そうそう多くはない。
…いや、今はそんな話をしているわけではなくて!思わず手に力が入って、ガサリと袋が擦れる音がした。慌てて力を弱め、視線を向ける。ええっと、3人の話をまとめるとこの袋はー…TRIGGERから、私への、クリスマスプレゼントってことか?!
「もー…アイドリッシュセブンといい、君達といい、何なのよもう……」
「えっめ、迷惑でしたか?!」
「違う、違う。迷惑なんかじゃないよ…ないけど、こっちは何も用意してないから」
「別にプレゼントが欲しくて選んだわけじゃありません」
「俺達が渡したくて選んだんだ。世話になってますしね」
「同じこと言われたわ…あの子達にも」
「てか、アイドリッシュセブンにも何かもらったんすか?」
実は食べる前にしっかり写真を撮っていたので、無言でそれを3人に見せれば「ああ、成程」と深く頷いていた。
「ふふ、彼らも同じことを考えてたんですね」
「三月くんのケーキ美味しかったでしょう」
「めっちゃくちゃ美味しかった!」
「はは!甘いもんに目がねぇもんな、なまえさんは」
お菓子系にしなくて正解だったな、と笑う3人に、私はようやくありがとう、と言葉を返した。
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