03
高校生活にも大分慣れてきた7月。友達もたくさん出来たけれど、でも相変わらず私は新くん達と一緒に過ごしていた。だってこの3人といるの楽しいんだもの。それに一応、幼なじみでもあるからね、安心感があるんだと思うんだ。
そんなわけなのでもちろん、帰りも一緒だったりします。でも今日は蘭ちゃんが部活で、園子ちゃんが家の用事で一緒に帰れないらしく、久しぶりに新くんと2人きりでの帰り道。…いや、入学した後にも何回か2人きりで帰ったことはあるけども…やっぱり、緊張しちゃうんだよね。いまだに慣れてない、んだと思う。
それはきっと、私が新くんに対して恋心を抱いているから。
幼い頃はまだ憧れに近い気持ちだったんだと思う。それがいつしか"恋"という甘酸っぱくも切ない気持ちに変わっていて、それは引っ越した後も褪せることなく着々と成長させていっていたのです。…会ってもいないし、話もしていないのに恋をしているなんて…おかしいのかもしれないけれど。
けど、誰に何を言われようと私は新くんに恋をしているって断言できるんだ。だってこんなにドキドキする感情なんて、それ以外に説明しようがないでしょう?
「あ、ねぇ新くん。あれ食べていかない?」
「どれ?……移動、アイスクリーム?」
「うん。今日も暑いし、ああいうの食べたくなるじゃない」
「ま、確かにな。うし、食ってくか!」
わ、たくさん種類があるんだ…うーん、こんなに種類があるとどれにしようか悩んじゃうよね。昔っからこういうの決めるの、すっごい時間かかるタイプなんだよなぁ。
隣で同じようにメニューを見ていた新くんはどれにするのか決めたらしく、さっさとお会計している。
うう、どうしよ〜新くんが買ったんなら私も早く決めて買わなくちゃいけないのに…!
悩みに悩んでストロベリーとチョコにまで絞ったけれど、そこから先がまた長いのが私。だってどっちも美味しそうなんだもん。
いまだうんうん唸っている私の目の前に、1つのアイスが差し出された。…これ、チョコレート。
「悩んでたのってチョコとストロベリーだろ?」
「え、う、うん………えっどうしてわかったの?!」
「目線辿ればそんくらいわかる。特になまえはわかりやすいしな…俺、ストロベリーにしたからあとで一口やるし、これ食えば?」
「あ、ありがと…あっお金!」
「いーって。今日は奢ってやる」
ししし、と笑った新くんはとても楽しそうで。どんな楽しいことがあったのかまではわからないけど、でもやっぱり大好きな人が楽しそうに笑っているのは嬉しいことだ。こっちまで自然と笑顔になれるしね。
ありがとう、とアイスを受け取って、私達は公園内に設置されているベンチに並んで腰掛けた。日差しはじりじりと熱いけれど、幾分風が吹いてることが唯一の救いかも。
「んー!美味しい〜」
「…オメーって昔からアイスとかケーキとか、甘いもん好きだよな」
「大好き!だって美味しいもん」
「否定はしねーけど…」
「あ、そっか…新くんってあんまり甘いもの得意じゃないんだっけ」
「全く食えねーわけじゃないけどな。このくらいなら平気」
アイスを食べながらしばらく昔話に花が咲いた。
再会して3ヶ月経った今でも、こうやって小さい頃の話をしては懐かしんだり、大笑いしたりして楽しんでるの。
…あ、そういえばアイスで思い出した。
「新くん覚えてる?小さい頃、こうやってアイスを食べてた時に君が私のこと追いかけまわしてたこと」
ニヤリ、と笑みを浮かべて問いかければ、彼は「うっ…」と困った顔して黙り込んでしまいました。この反応は覚えてるんだろうな〜。
あれは確か小学2年生の頃だったかなぁ?今日みたいな暑い日で、好きなアイスを買ってもらって公園で食べてたんだよね。最初は大人しく食べてたんだけど、あっという間に食べ終わった新くんは暇になっちゃったみたいで、何処かに行っちゃって。でもアイスを食べてる最中だから捜しに行く、って考えは毛頭なく…蘭ちゃんと食べながら何処行ったんだろうねーって話をしてただけ。
そしたら戻っては来たんだけど、…後ろ手に何か隠し持ってるような仕草で私達は首を傾げるばかり。とことこと私の元まで歩いてきた新くんがバッと隠していた手を突き出してきたんだけど、その手に持っていたのは私の大嫌いな虫!!夏の風物詩でもあるセミだったの!
「嫌だ、って言ってるのに新くんは楽しそうに追いかけてきて、」
「…オメー、すっ転んだんだよな。アイスと一緒に」
「そうそう!虫は嫌だし、大好きなアイスは土まみれだし、足は擦りむいて痛いしでねー大泣きした記憶があるよ」
泣き出した私に必死に謝ってくれたけど、蘭ちゃんと新くんのお母さんにこっぴどく怒られてたっけ。
ふふ、今となっては笑い話というか…ただ懐かしいだけ、だね。
「し、仕方ねぇだろ」
「うん?」
あの頃は俺もガキだったんだよ
(笑い話だけど、やっぱり怖かったな〜)
(う、…だから悪かったって…!)
(んふふ!もう怒ってないから大丈夫だよ)
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