勉強になるおつき合い


とんでもない初対面をしてしまったはるの従兄弟―――優紀さんとは、何故か後日謝罪した際に連絡先を交換した。
元々、はる自身が俺のことを彼に話していて興味を持っていたと聞いたのは、それからしばらく経ってからのことだったと思う。それからは大学終わりにフラッと優紀さんの経営するカフェに寄り道したり、課題に集中したい時に奥の席を借りたり、新メニューを考案したいからと試食をお願いされたり、そんな関係が今でも続いている。

 side:臣

「あ、美味い」
「そりゃー良かった」
「優紀さんって色んな店知ってますよね」
「ああ…カフェやってっからかな。色々と食ってみたくなるんだよな」

この人は元より食に興味があったらしく、学生時代から色んな飲食店でバイトをして腕を磨いていたそうな。その興味はいまだに衰えることはなく、休みの日にはこうして気になったレストランなどに足を運んでいるらしい。
そして今日はその食べ歩きに、俺も同行中だ。それ自体はいいんだ、俺もレパートリーを増やしたいと思っていたし、参考にもできるからな。けど、毎度奢られてしまうと…こう、申し訳なくなってくるというか何というか。
何かお礼を、と思ってはいるし、それを本人に言ったこともあるんだが、試食につき合わせている礼だとカラカラと笑われて終わり。何度も言いますけど、それは得してるの俺だけですからね?優紀さんにメリットなんてひとつもないと思いますけど。

「伏見くん、眉間にシワ寄ってるぞ」
「え、あ、…すみません…」
「大丈夫だが…何か気になることでもあったか?」
「あー…えっと」

どう説明したものか…悩んだものの上手い言葉が見つからず、そのまま説明することにした。

「律儀だなぁ、君は。そうだなー…そこまで悩ませてたんなら、お言葉に甘えさせてもらうかな…いいか?」
「はい」
「君の作るキッシュかスイーツが食ってみたい」
「え、俺の…ですか?」

何でもはるや綴から話を聞いていてずっと気になっていたらしい。俺に興味を持った理由もそうだ、と。だからずっと食ってみたいと思ってくれていたんだそうだ。
でもなかなか機会がない―――というか、言いそびれて今に至るってことみたいだな。確かにもう何度もこうして食い歩きに同行してはいるが、初めて聞いた気がする。

「作るのは全然いいですけど…せっかくならどっちも作りましょうか?」
「いいのか?手間かかるだろ」
「作るの好きなので大丈夫です」
「じゃあお願いするかな」
「好きな味とか、ケーキとか、リクエストあります?」

おまかせで、と言うならよく作るものを作るけど、リクエストがあるなら聞いておきたい。
嫌いなものはない、と聞いたことはあるけど、好みの甘さの度合いとかあるからな。そういうリクエストや情報があるなら、聞いておいて損はないはずだ。どうせなら好みで、美味しいと思ってもらえるものを。

「あー…何だっけ、遥から何度も聞いてて気になった味があるんだが…」
「…もしかして、ベーコンとほうれん草のキッシュですか?」
「それだ!」

ああ、やっぱり。はるが話題にあげるのならそれか、鶏肉ときのこだろうから。
初めてはるにキッシュを作ったのがベーコンとほうれん草のやつで、いたく気に入ってたんだよな。それから食いたいものを聞くと、なかなかの頻度でリクエストされているからよく覚えてる。
今は他の味も作るようになったから大分分散されてはいるけど、それでもリクエストされる回数はいまだに多いと思う。
うん、これなら作り慣れてるから問題はなさそうだな。あとはスイーツだけど…どのくらいの甘さが好みなんだろうか。一緒に食事をしてスイーツを食べてる姿も見てはいるけれど、よく食べてるのは割と甘さ控えめのものだっただろうか。
でも生クリームやチョコがダメだというわけでもなさそうだったし、…ううん、難しいな。

「優紀さんって甘いのどれくらいまでいける人ですか?」
「甘いのか?よっぽど激甘でなけりゃ大丈夫だぞ」
「そうですか、それなら大体のものはいけるかな…」
「ああ、問題ない。―――楽しみにしてるよ、伏見くん」
「期待に沿えるように頑張ります」


(はる、ちょっと頼みたいことがあるんだが…)
(臣くんが頼み事なんて珍しいね。なぁに?)
(明日、優紀さんの所に行くって言ってたよな?冷蔵庫に入ってる紙袋、渡してもらえないか?)
(ん、わかった。優紀くんに渡せばいいんだね)
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