初めましては大人しく
「アンタも海賊でしょ?」
「………え。」
バレてない方が都合がいい、と考えていたのに。バレていないのならそのまま隠し通してしまおう、と思っていたのに、オレンジ色の髪の人に開口一番にそう言われてしまって言葉を失った。あまりの衝撃にポーカーフェイスも忘れ、素で驚いてしまう始末。戸惑いの声しか上げられませんでしたよ、っと。
私のバカ、これじゃあ肯定しているのと同じじゃないか。ヤバイなーこれ、戦わなきゃいけないやつかな。今、武器持ってないのに9人も相手しなくちゃいけないのか。体術オンリーでもいけるけど、ちょっと骨が折れるな。てか面倒だな。…溜息を吐きかけてはた、と気がついた。え、9人?
ちょっと待て。麦わらのルフィ、海賊狩りのゾロ、泥棒猫のナミ、狙撃の王様そげキング、黒足のサンジ、わたあめ大好きチョッパー、悪魔の子ニコ・ロビン、サイボーグフランキー…私が知っているのはこの8人。知らないのは―――…9人目にそっと目を向ける。目玉がないのに、視線が絡んだと何故かそう感じた。
「ガ、ガイコツ…?」
「ヨホホホ!初めましてお嬢さん。早速ですが…パンツ見せてもらってもよろしいですか?」
…はい?パンツ?何でパンツなんだろう、と思いながらいいよ、と頷いた所でゲィンッ!!とすっごい音がして、頭が揺れた。うっわ、なにこれ…?!
「見せようとすんじゃないわよバカ!!」
「おお…何か初めてのパターンだぞ?こいつ」
「おや、残念!」
「ふふっブルックのことは気にしないでね」
「はあ……」
何だろう、何て言うか…とんでもなく自由だ。この人達。ウチのクルーも自由だけど、それ以上だと思う。
世界政府の旗を撃ち抜き、ケンカを売ったイカれた海賊団だと専らの噂だったけれど…当人達を目の前にしてみると、何とまぁ毒気のないことか。麦わらのルフィの手配書を見た時からそんなもの感じたことがなかったけれど、それはどうやら他のクルーにも言えたことらしい。毒気もなければ、警戒心も薄いという。
…いや、海賊狩りとニコ・ロビンの2人は警戒してるな。私のこと。理由は泥棒猫の一言と見て間違いはないだろう。でもまぁ、1人や2人くらい警戒を怠らない人物がいた方が絶対にいい。全員が全員、警戒心を持たない海賊団なんてすぐに潰されてしまうから。
助けてもらったとはいえ、他船にずっといるわけにもいかないし小舟とかもらえたりしないだろうか。さすがに恩人から奪うってことはしたくないなぁ、とボケッと考えていたら、それで?と声をかけられた。相手は、ニコ・ロビン。いつの間にか私の隣に座り、頬杖をつきながらにっこり笑っていらっしゃる。逃がしはしない、と言われているようだ。
「ナミはああ言っていたけれど、本当に海賊なのかしら」
「返答次第じゃあ斬るぞ」
「おっかないなぁ…―――海賊だよ。でも別にこの船を襲う気はない」
だってここに辿り着いたの、絶対に偶然だし。
両手を挙げて降参のポーズをとりながらそう答えれば、僅かに警戒心…というか、殺気は和らいだ。うん、殺気はやめて。
「あっそうだ、おれまだお前の名前聞いてねぇぞ!」
「……リズ。海賊です」
「リズな!おれはモンキー・D・ルフィ!海賊王になる男だ、よろしく!」
「よろしくでいいのか…?」
私、海賊って言ったじゃん…何故に敵に対してよろしくするんだ、この人。
ええー…と困惑の表情を隠しもせず声を漏らせば、そげキングがははっと声を上げて笑う。ウチの船長はいつもこんな感じだ、と。それは別に君達の問題だからどうこう言うつもりは更々ないけど、船長がこの警戒心のなさじゃあ大変そうだなぁ。クルーが。
何だかほんわかした空気で自己紹介が進んでいく。警戒していた海賊狩りとニコ・ロビンもしっかり名乗ってくれて、ちょっと拍子抜けしたのは内緒。まぁ、自己紹介なんてなくても名前くらい知ってますけれども。ガイコツさんを除いて。
「では最後は私ですね。死んで骨だけブルックと申します。つい最近、ルフィさん達の仲間に入れて頂きました」
「色々ツッコミ所が満載だけど、今、ブルックって…?」
「ええ、言いましたね。私の名前です」
「………鼻唄の、ブルック?」
「おや、私をご存知でしたか」
何でもガイコツさんは悪魔の実の能力者で、その実の名前は『ヨミヨミの実』というそうな。命を落としても、一度だけ蘇ることのできるということらしいんだけど…何でガイコツなんだろう。見分けがつくようにガイコツになるのだろうか。でもそうなると面影ゼロ…いや、ガイコツさんはアフロだけ面影として残っていらっしゃるが。どれだけ強かったんだ、毛根。
それにしても動くガイコツに会うことになるとは思わなかった。さすがグランドライン、といった所なんだろうか。不思議な人がたくさんいるなぁ。でもほんと、何故にガイコツ。
「死体に辿り着くまでに1年かかって、白骨化してたらしいぜ」
「…ああ、迷子」
「ヨホホホ!手厳しい!」
「毛根強かったんです?」
「強かったんです」
「やっぱり」
「どんな会話だよ!お前も気にするのそこなのかっ!!」
海賊狩りは意外とツッコミ気質らしい。どんどん知らなくていいことばかり、知識として増えていっている気がする。せっかくこうして出会ったのだし、何か有益な情報を得たいものなんだけどね。
別にスパイしにきてるわけでも何でもないし、キャプテンから探れって言われてるわけでもないんだけどさ。何となく、クセで聞き耳たてたりしちゃうわけですよ。バレたら海賊狩りに斬られそうだし、気をつけよ。
「…あ、助けてもらったみたいでありがとう」
そういえばまだお礼を言っていなかった、と頭を下げる。こういうのはきちんとしておかないと。そして本題に入らせて頂こうか。
「それでひとつお願いがあるんだけど…」
「お願い?なんだ?」
「この船に使ってない小舟とかない?あったらもらい受けたいんだけど」
「小舟?そんなのどうするのよ」
「仲間の所に帰る」
きっとキャプテン達も心配しているだろうから。というか、私の荷物どこにいったの…流されたのか、それともやっぱりこの人達に没収されてしまっているのか。没収されているだけだったら、まだ希望はあるけれど。
さすがにグランドラインの海を武器なしで渡るのは、無謀としか言いようがないと思うから。
「…リズ、アンタ持ってないわよね?ログポース」
「うん、航海士は私じゃないから」
「じゃあどこかの島のエターナルポースは?」
「持ってない」
だって戦闘中だったし。そもそも、いくつか所持しているエターナルポースはキャプテンが管理しているから、私達が触れる機会はあまりなかったりする。素直にふるり、と首を横に振れば、泥棒猫はあからさまな溜息を吐いてこめかみに手を当てた。
あ、これ呆れられてる気がする。そんな雰囲気です。しーんと静まり返ったキッチンに、泥棒猫のどでかい声が響き渡りました。
「バッカじゃないの?!ログポースもエターナルポースも持ってない、それにグランドラインの海を小舟で航海するなんて死にに行くようなもんでしょ!」
「…ご、ごめんなさい…?」
「ところで嬢ちゃんは何で漂流してたんだ?」
「え、あ、戦闘中に嵐になって…波に攫われた、んだと思う」
サイボーグさんの質問に記憶を辿りながら答える。
そう、大きな波が船を襲って私はそのまま飲み込まれた。記憶があるのはそこまでで、その次の記憶はこの船の医務室。その間の記憶は当然ながらないわけだけど、この中の誰かが拾ってくれたんだろうきっと。服を着替えさせてくれたのは、恐らく泥棒猫。その時に腕と背中に入っている刺青を見て、私が海賊だって当たりをつけたってことだと思うんだよね。
一応、筋は通ってると思う。真実を確認するつもりはないけど。この様子だと本当に善意のみで助けてくれたみたいだし。それはもう疑いようがなかった。
「なんだ、じゃあお前迷子なのか」
「迷子、とは違うと思うけど…まぁ、はぐれてはいるね。仲間と」
「そっか。じゃあ仲間と会えるまでおれ達の船にいればいいさ!」
「おい、ルフィ…」
「まぁ、言うと思ったけど」
何だかすごい方向に話が進んでいっている気がするのは、私の気のせいじゃないですよね。どうしよう、どうするのが正解ですか。助けてキャプテン…!
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