一人歩きは禁止


島だー!と見張り番をしていたクルーが元気よく声を上げた。
船番と買い出し班をじゃんけんで決め、それ以外のクルーは好きに町を歩いていい、ということになったのは、今から1時間ほど前のことです。運良くじゃんけんで勝ち船番も買い出しも免れた私は、意気揚々と島に下り立った。
久しぶりの陸地だー!とテンションが上がってしまったらしく、気がつけば周りには誰もいない状況。確かに船を下りた時は、キャプテンを筆頭に見知ったクルーがたくさんいたのだけれども。


「……ま、いっか」


別に迷子になったわけじゃないし、船の場所もバッチリ覚えてるし、…そりゃキャプテンと一緒に散策できないのは淋しいけど…1人でも何ら問題はないさ!それに散策しているうちに誰かと会えるかもしんないし。
あ、キャプテンだったらきっと、というか十中八九、本屋さんにいるだろう。どうしても淋しくて仕方なくなったら本屋を目指して、それでキャプテンに突撃しよう。
うんうん、と1人頷いて散策へ向かったのが―――今から数十分前のことだったと思う。…それがどうしてこうなった。行く先を塞ぐように立っている2人の男を見て、私は思わず半目になった。


「だからさぁ、おれ達と遊ぼうって!」
「1人じゃん、構わないっしょ?」
「いや、だから連れがいるんですってば…ちょっとはぐれただけで」


何度そう言ったことか。それでも諦めが悪いらしい男達は、いーじゃんいーじゃんと笑うだけ。というか、何故につなぎを着たちっこい女に声をかけた。私の最大の疑問はそれなんですけれども。もうちょっとオシャレしてる人に声かけなよ、せめて。吐きかけた溜息を必死に飲み込み、何を言っても無駄だなーと諦め、無視をすることにしよう。真面目に相手をするだけ時間の無駄ってやつ。
散策できる時間は限られてる、この島に滞在するのはせいぜい4〜5時間だろう。置いてかれることはないと思うけど、せっかく上陸したのに何も見ることができない・買い物もできない状態で再び出港するのだけは勘弁してもらいたいのです。必要なものは買い出し班に頼んであるけど、個人的なものとか生活用品はね…さすがに男共に頼めるものじゃないから。
だからこれ以上、変な奴らに構っている時間はないのである。急いでるんで、と横を通り過ぎようとしたら、無視すんなよ〜と腕を掴まれた。さすがにイラッとしてぶん殴ってやろうと思ったら、耳をつんざくような悲鳴が聞こえて眉間にシワを寄せる。


「ったく…何をしてんだ、リズ」
「あ、キャプテン!」
「姿が見えねぇと思えば、こんな所で油を売ってんじゃねぇよ」
「私が悪いんじゃないんだけど…」
「お、お前らこっちを無視するんじゃねぇよ!」


んん?と視線を戻すと、そこには体をバラバラにされた男達がいた。それは間違いなく、私の邪魔をした奴ら。ああ成程、さっきの悲鳴はコレが原因か。そういえばさっき、サークルが見えた気がしたなぁ…キャプテンが能力を使ったのね。


「行くぞ」
「アイアイ、キャプテン!でもあいつらあのままでいいの?」
「戻してやる義理はねぇだろ」


本来はあるんだろうけど、そんなことはキャプテンの知ったこっちゃないらしいです。別に私も何も思わないし、同情する気も起きないから構わないんだけど。とりあえず聞いてみただけで。
あれ?でもキャプテンに戻す意思がないってことは、あの人達は一生あのまんまってことか。それはそれは…ちょっとだけかわ、………いや、ざまぁみろ。私の貴重な時間を無駄にさせた罰だ。


「キャプテンはどこ行くの?本屋」
「ああ」
「私も行っていい?」
「勝手にしろ」


アイアイ、勝手にしまーす!
へへっと笑みを零しながら隣に立つと、怪訝な顔をしたキャプテンがこっちを見下ろしていた。あれ、何だか不機嫌?でも怪訝な顔だから不機嫌というより、疑問?がある感じなのだろうか。だけど、キャプテンがそんな顔をする理由がこれっぽっちもわかんないから、私はただ首を傾げるしかない。
視線が交差したまま歩くこと数歩、キャプテンがフイッと視線を逸らした。そしてボソッと「何を笑ってやがる」と呟いたのです。…ああ、その呟きでようやく理解できた。私が笑ってたから、だったのか。でも笑うでしょ、だって大好きなキャプテンと一緒に散策だよ?笑わないわけがない!
グッと拳を握って宣言すれば、キャプテンは一瞬だけ呆けた顔になってすぐに帽子のつばを下げてしまった。でもキャプテンよりうんとちっこい私は、彼の口角が僅かに上がっていたのを見逃さない。にしし、どうやら私の答えはキャプテンを満足させたみたいだね。


「…リズ」
「はーい?」
「お前はしばらく1人で船を下りるの禁止だ」
「えっなんで?!」
「今回みてぇにいなくなられると面倒なんだよ」
「ええ〜…」


まぁ、でも…キャプテンの手を煩わせるのもアレだし、かと言って他のクルー達の手を煩わせるのも嫌だなぁ。面倒な子って認定されちゃうのも癪だし、それが原因で船を下りなくちゃいけないってなったら、と想像するだけでぞわぁっと寒気がする。ここは素直に聞いておくのが一番いいのかも。


「む〜…じゃあキャプテン一緒に行ってくれる?」
「何でおれなんだ。ベポ達がいるだろ」
「そうだけど、キャプテンと出かけたいもん。さっきも言ったじゃん」
「はぁ……暇な時ならな」


それはキャプテンなりのOKの返事。果たしてこの人に暇な時があるのかは不明だけど、それでも約束を反故にしたりする人ではないので私はにんまりと笑った。今日も一緒だけど、キャプテンは大体1人でどこかへ行ってしまうことが多いから、回数としてはあんまり多くないんだよね。ささっと分担した後は、フラッと下りていってしまうか自室か医務室に籠っちゃうから。
それはハートの海賊団結成当時からみたいだし、私が乗ることになってからも変わらずだったようなので…他のクルー達、特にペンくん達は然程気にしてないみたい。船の中に何日も籠ってばかりの時は、さすがにベポくんが連れ出してくるけれども。日光に当たって!って連れ出してきた時は、さすがに吹き出した。笑い過ぎたシャッちゃんがバラされてたけど。シャッちゃんはそろそろ学ぶべきだと思うなぁ。うん。


「リズ、歩きながら考え事すんじゃねぇ。何度言えばわかるんだ、お前は」
「あっごめんなさい」
「ボケッとしてると今度は置いてくぞ」
「それはやだ!」
「ならついてこい」


アイアイ!と元気に返事をしてキャプテンの腕に抱きつけば、大きな溜息を吐かれたけど振り解かれることはなかった。にししっやっぱりキャプテンは優しいよなぁ。



(あー!キャプテン!リズー!!)
(リズの奴、どこにいたんです?船長)
(男に絡まれてた)
(おっまえ、いなくなったと思ったら…)
(私が悪いんじゃないってば、シャッちゃん)
(てか、何で船長の腕にひっついてんの)
(え?そんな気分だから。あとキャプテン大好きだから!)
(ああ、そう…いいんすか?)
(言っても聞かねぇだろ、こいつは)

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