嵐を呼ぶ問題児


女ヶ島を出港してしばらく経った頃。いつも通り早朝に受け取った新聞の1ページを飾っていたのは、ここ最近ずーっと世間を騒がしている気がする少年―――麦わらだった。
おいおい、何してるんだコイツ…!危うく大きな声を出しかけて、寸での所で飲み込んだけれども。さすがにまだ誰も起きてきてない時間だからね、もう少しすれば朝食担当のクルーが起きてくると思うけどさ。
うん、それはいいとして…ええっと、私達は麦わらが生きていることは当然知っていたけれど、世間的には生死不明の消息不明の状態だったのよね。意識を取り戻した後、彼は女ヶ島で療養していると思っていたのに何故かいまだ復興途中の『海軍本部』に現れたそうな。それも冥王さんと海峡さんと一緒に。


「お、リズおはよ」
「ペンくん、おはよー」
「新聞?何か面白ェ記事あったか?」
「んー…これとか?」


ふわ、と欠伸をしながら甲板に現れたペンくんに、さっきまで読んでいた記事のページを見せれば、そこに載っていた写真を見た途端に半分しか開いていなかった彼の目がカッと見開かれた。どうやら驚きで目が覚めたようです。
まぁね、それだけ衝撃的ではあるよねぇこれは。


「どういう意味があるのかわからないけど、マリンフォードで16点鐘…だって」
「へぇ…?」


オックス・ベルって確か、何か活躍した軍艦?に取り付けられていた神聖な鐘だったよな。記事にハッキリ16点鐘って書いてあるくらいだから、鐘を16回鳴らすってことにも何か意味があるってことなんだろうけど…まず、この鐘を鳴らす意味っていうのが何だったか覚えてないんだよね。
前に本で読んだような気がするんだけど、海軍のことだったし、そこまで興味を持てなかったんだと思う。興味がないことはすぐに忘れるし、覚える時間すらもったいないって思うタイプなもんで。


「なに首傾げてんだ、お前」
「鐘を16回鳴らす意味って何なんだろうな、って思って」
「あー…海兵の習わしにさ、あるんだよ『16点鐘』ってのが」
「習わし?」


そう、と1つ頷いたペンくんは、再び新聞へと視線を戻す。そして16点鐘の意味をゆっくりと説明し始めた。

年の終わりと始まり―――去る年に感謝して8回、新しい年を祈り8回、締めて16回の鐘を鳴らす。それが海兵の習わしである16点鐘らしいです。

…ん?年の終わりと始まりに鳴らすって言ったよね?それだと今の時期に鳴らすのは、どういう意味があるの?


「さすがにおれも麦わらの意図を汲み取ることはできねェよ。でも、」
「でも?」
「この行動に意味がないって可能性もある」


え、なに言ってんのペンくん。
全く意味がわからなくて、余計にクエスチョンマークが増えたよ。だって行動に意味がない可能性があるって…どう解釈すればいいの。いや、仮に意味がなかったとしてだよ?じゃあ何しに海軍本部まで行ったんだよ、危険を冒してまで。ってなるじゃんか。
別に麦わらの身を案じてるわけではないけど、一般論として。眉間にシワを寄せて苦言を呈すれば、彼は苦笑を浮かべて麦わらの写真をトントンと指で叩いた。この写真に何かある、ってことなのかな?


「…あれ?右腕のこれ…刺青?」
「おれも最初はそう思ったけど、さすがに大怪我を負っている麦わらに刺青は彫らねぇと思うぞ」
「じゃあ手描きか。あ、もしかしてこれを写真に撮ってもらう為に起こしたとか?」
「そういう可能性もあるってこと。麦わらの奴、仲間と一緒じゃなかったし」


右腕に書かれている文字が何を意味しているのか、それは私達にはわからない。ひとつ言えるのは、どこまでいっても麦わらという少年は『問題児』だということだと思う。


「ま、おれ達が考えても仕方ねぇさ」
「それはそうだけどさ、こうも大きな記事にされると気になるじゃん」
「ははっ確かにな。ほい、新聞サンキュ」
「うん」


新聞を受け取り、私達は艦内へと足を進める。さっきまではしんと静まり返っていたけれど、所々から話し声やガタガタと物音が聞こえ始めている。そろそろ起床時間なのかも。思っていたよりも話し込んじゃってたのかな。ってことは、そろそろ朝ご飯だってことだよね!今日の朝ご飯は何だろうな〜。
ペンくんと連れ立って食堂へ行くと、今日の食事当番はクーさんとパフィンくんとセイさんらしい。パフィンくんはハートに入る前は、酒場で働いてたんだって。だから彼が食事当番の時は、皆ひっそりテンション上がるんだよね。彼、料理上手だから。


「お、ペンギンとリズじゃん。相変わらず早いな、お前ら」
「おれはそこまでじゃねぇよ。本当に早いのはコイツ」
「もうね、慣れだよね。起きちゃうの。おはよーセイさん、クーさん、パフィンくん!」


しゅばっと片手を挙げながら朝の挨拶をすると、料理の手を止めて3人共返してくれるんだから律儀だよね。挨拶は大事だし、返してもらえると嬉しいから全然いいんだけど!


「ごめん、まだ朝食できてないんだ。飲み物淹れるからそれ飲んで待っててよ」
「まだ時間じゃねぇんだから謝らなくていーよ、パフィン」
「はい、コーヒーとココアな。あと10分くらいでできるから」


セイさんからマグカップを受け取り、定位置に腰を下ろした。もう少ししたらベポくんやシャッちゃん、それとキャプテンも起きてくるだろうか。
今日の新聞を見せたら、あの人はどんな反応を示すのかなぁ。ちょっとだけ、楽しみかも。

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