貴方の為にできること
船長命令(とは言い難いけど)を受け、私は一時的に離脱した。離脱せずに情報を集め回ることももちろんできなくはないけれど、やっぱり難しいのです。クルー全員を巻き込んじゃうことになるしね。それだったら期限を設けて、一時的に離脱するのが手っ取り早いって結論に辿り着いたわけ。
ということで、ポーラータング号を離れて早1週間経つわけですが…ホームシックです、完全に。定期的に電伝虫で連絡はしてるものの、淋しさが減るどころかむしろ増えていってるんだよね。声だけで我慢しなきゃいけないっていうことで、完全に悪循環になっている。
でも帰りたい、と我が儘を言うわけにもいかず…ここ数日はモヤモヤとした気持ちを抱え、情報収集に勤しんでいる。
「とは言っても、噂がざっくりしすぎてるからなぁ…」
情報源はウチのキャプテン。でもその情報…というか、噂をどこで・誰から聞いたのかが不明だから、どうにもこうにもやりにくい。一体、あの人はどういう経路で手に入れたんだこの情報。それによってターゲットをどの層にするかが変わってくるんだけど…どう絞るべきかな。
正直、私よりもキャプテンの方が情報収集能力は上だと思うんだよねぇ。昔から任せてくれるし、ハートの中で情報収集能力はピカイチだって褒めてもらったこともあるし、少なからず私自身も自信は持っているけれども。それでもやっぱり、キャプテンに敵わないって思ってる。そんな人が私を信用して、頼ってくれている現実があるのだからしっかりこなしますけどね!
「あー…真偽はわからねェが妙な噂なら聞いたことあるぞ」
「妙な噂、ですか?」
「おう。何でもログポース3本の指針、どれもが指さない島に何かが棲みついてるってな」
酒場を訪れ、偶然にも隣に座り仲良くなったのは商人のおじさんだった。そこそこ大きな商船に乗っていて、色んな島を巡っているらしい。そのおじさんが最近、妙な噂を商人仲間から聞いたんですって。
それが『指針が指さない島に棲みつく何か』だそうだ。真偽は不明、というか確かめようがないのだろう。何てたって指針が指さないのでは、行きようがないからね。指さないってことは、磁場がない島ってことかなぁ。なかなかに面白い話だけれど、その島が本当に存在するかわからないし、キャプテンが知りたい情報なのかどうかもわからない。
一歩進んだような、そのまま足踏みをしているかのような…変な感じだ。ううん、と唸りながらグラスを傾ける。
「まぁ、この海には不可思議なもんが色々とあるからな。そんな噂が流れてもおかしくはねぇさ」
「グランドラインですもんねぇ…」
「それにここは『新世界』と呼ばれる海でもある。グランドライン前半より、過酷さも増す」
「成程…海で生きていくのは大変だなぁ」
「嬢ちゃんひとりで旅してんだろ?気ィつけな」
じゃあな、と立ち上がったおじさんにひらりと手を振り、視線をカウンターに戻した。
うーーーーーん…収穫があったような、ないような…でも待てよ?四皇と七武海が秘密裏に取引をしているのならば、それは確実に表立っては行われないはずだ。それが世界政府や海軍に知られてしまったら、面倒事になるのは目に見えてるから。だとすれば、滅多に人が訪れないような場所で行われている可能性がかなり高いと思う。そしてその取引のブツを隠しておく場所だって必要だものね…人間兵器にせよ、武器にせよ。
そう考えるともしかしたらこの情報、かなり有益なものだったんじゃないか?単純に考えると、この情報を突き詰めていくのが一番なんだが…これ、尻尾掴めるのかね?真偽が不明で、指針が指さない島の情報なんて。だけど今は、これ以上に近しい情報がないんだし縋るしかないんじゃなかろうか。縋っても何も出てこない可能性だってあるけど、引っかかる部分もあるし決して無駄にはならないだろう。うん。
んー…一般人からの情報は、これが限界かな。そろそろターゲットを変えないと、核心には近づけない気がしてきましたぞーっと。狙うとすればドンキホーテ・ドフラミンゴの傘下の海賊…でも下っ端では知らないことも多いと思うんだよね。幹部に接触したい所だけれど、それはどうにも無謀だしリスクが高すぎるよね。とりあえず、ドフラミンゴの傘下が縄張りとしている島はいくつか知ることができたからそこを当たってみるかなぁ。何かしら情報が落ちているかもしれないし、耳にすることができるかもしれないもん。そうと決まれば善は急げってやつだ!乗せてもらえる船を探さなくちゃ。
港へ赴き、近々出港しそうな船へ片っ端から近くの島まで乗せてもらえないか交渉開始―――したのだが、何と運のいいことに一発目で承諾してもらっちゃいました。
何でもその船は商船でもあるが、島と島を繋ぐ連絡船でもあるらしく有料ではあるものの割かし遠くの島まで乗ることもできるそうな。有料って部分でちょーっと悩んだけど、遠くまで乗せてもらえる船が他に存在するかはわからないし、仮に見つからなかったとしたらまたしばらくこの島に滞在しなければいけない。お金はちょっとした仕事でちまちま稼いでるし、船代を支払ったら無一文になるって心配もない。…乗っちゃうか、うん。
「料金は一律だが、行き先は確認してるんだ。お嬢ちゃん何処まで乗るんだい?」
「終点までお願いしたいんですけど…」
「おう、問題ねェぞ。終点の島だと此処になるから、そうだな…3日程かかっちまうが大丈夫か?」
「私は全然大丈夫です」
乗る人数にもよるらしいが、そう多くなければ個室で寝泊まりできるようになっているらしく、完全に船旅みたいになってる。でも寝る場所や食事までついていて、2500ベリーって破格じゃない…?大丈夫なのだろうか、色々と。
ああでも、料金は一律だって言ってたから一番近い島へ行くのもこの値段だからそこそこ儲かるのかも。ざっと見た感じ、それなりの人数が乗ってるっぽいし。
甲板に設置してあるベンチに腰を下ろし、前に町でもらった地図を広げた。いくつかの赤丸は、聞き込みなどで知ることができたドフラミンゴの傘下が縄張りとしている島。そのひとつが―――私が乗船したこの船が終点として目指す島だった。何とまぁラッキーなことか。運が良かったな、そして断らなくて正解だったと心から思うのです。
地図を小さく折りたたみ、再びリュックの中にしまいこむ。ふっと空を見上げれば、雲ひとつない綺麗な青空。ひとりは自由気ままであるけれど、やっぱりどこか不自由で淋しい。早く仕事を終わらせて、ハートの皆と合流したいなぁ…早く会いたい。皆にも、キャプテンにも。
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