何をしてたんだ、お前は


 side:ロー

じっと海を見つめていたリズが「あ。」と呟いた。その声に視線を戻すと、つなぎのポケットを漁っていやがるんだが…なにしてんだ?

「何か失くしたのか」
「いや、さっき着替えた時に絶対入れたはず……あっ発見!」

騒がしい奴だな。だが、この騒がしさも声も久しぶりに聞く。戻ってきたのだと実感させてくれるそれを、咎める気はなかった。今日くらいはそのままでもいいだろう、と考えていると、目の前にズイッと何かを差し出され思考が止まる。
差出人はさすがにわかるが…なんだ、こりゃあ。袋?

「キャプテンにお土産。どーぞ」
「…土産?」
「うん。シャボンディでね、買い物に行った時に見つけたんだ」

そういやあっちの船にも女のクルーが2人いたな。そいつらと行ったんだろう。………想像以上に麦わら屋達に馴染んでねぇか?このバカ。ひとまず差し出された袋を受け取ったものの、呑気に土産だとのたまったこいつをどうしてくれよう。今日くらいは、と思っていたが、それは数秒であっけなく覆される未来が見えた。
あからさまに溜息を吐いてみるものの、いまだこっちを見上げたままのリズの瞳はキラキラと輝いている―――ように、おれには見えた。褒められるのを待ってるガキや犬か、お前は。尻尾があったら確実にブンブン振ってやがるな。

「…ブレスレット?」

ガサリ、と開けた袋の中から出てきたのは、シルバーのシンプルなブレスレットだった。シルバーチェーンに、シルバーの細いプレート…プレートの真ん中には小さな石が埋め込まれている。ほう…リズにしてはなかなかにセンスがいいものを選んだものだな。
誕生日に渡された歴代のぶっ飛んだプレゼントを思い返すと、自然と眉間にシワが寄る。いまだに何故、あれを渡そうと思ったこのバカの心境がわからねぇ。ウケ狙いでも何でもねぇ、真面目に考えて選んでるっつーんだから尚更頭を抱えるだろう。

「可愛い雑貨屋さんで見つけたの。結構いいでしょ?」
「お前が選んだにしてはな。……あ?雑貨屋?」
「そー。可愛い雑貨が並んでる店内の一角に、男性用のアクセサリーが並べてあってさ…その中にあった」

その店主曰く、男への贈り物用に置いているらしい。まぁ、確かに一定数は売れるだろうが。

「だが、何で急に買ってきたんだ」
「んー?いや、本当はお土産じゃなくってピアスのお礼にって思って」
「ピアス…?」
「うん、これ」

髪を耳にかけ露わになったのは、グランドラインに入る前に買ったピアス。それを見て合点がいった、そういや支払いをしたのはおれだったか。ピアスを選んでほしい、と頼んできたリズと一緒に買いに行ったんだ。
こいつは自分で払うつもりだったようだが、何となく買ってやってもいいかと思ったのを覚えてる。マヌケ面でおれが支払いを済ませている光景を眺めていたのは、今思い出しても笑えてくるな。文句を言いながらも礼だけはしっかり言うんだから、律儀なもんだ。
しかし、その時の礼ねぇ…返してほしくて買ったわけでもねぇんだがな。おれは。チャリ、と微かな金属音を耳にしながらそんなことを思った。

「キャプテンはいらない、って言うと思ったけど、私が嫌なんだもん」
「気にするこたぁねェだろ」
「そうなんだろうけどー…似合うなって思ったし、ちょうどいいやって。いらない?」

そう言ったリズの顔は、どこか不安気だった。

「仕方ねぇからもらってやるよ」
「にししっ良かった!…ね、貸して。つけてあげる」
「は?いや、いい……っおい、リズ」

断りの言葉なんて聞いちゃいない。こっちの都合なんてもんは全部無視を決め込んで、おれの手からブレスレットを抜き取ったリズは、嬉しそうにそれを右手にはめている。

「うん、やっぱり似合う」

文句を言おうかと思ったが、あまりにも嬉しそうに笑うもんだから…全部、飲み込んでしまった。大概甘ェな、おれも。

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