強行突破
覚悟を決めた僕達は、再び図書館の中へと戻った。
あくまで本を探しに来た一般人、と装って。バレないように、怪しまれないように。
「何か面白そうな本ないかなー」
「そ…そうですね」
「嘘くせぇ」
「あははー」
…まぁ、確かに今のファイくんの笑顔は嘘くさいよねぇ。いつもの笑みとはまた違う感じのだし。
本当に本を探して此処にいるわけじゃないから、演技といえば演技なんだけどさ。
あ、ファイくんが黒鋼くんの頬をみょーんって伸ばしてる。
きっと笑顔にしようとしてるんだろうなぁ。彼のこと。相変わらず楽しそうだなぁ、黒鋼くんで遊ぶファイくんって。
「でも、まだ図書館が空いてる時間なのに良いのかな…」
「夜の方がもっと警備が厳しくなるでしょう。開館中ならあちこち歩いてても怪しまれません」
「まずい所に入っちゃっても「迷ったんです」とか言えるしねー」
―――シャーン…
「…呼んでる…」
「あっ緋月ちゃん?!」
「小狼、緋月に付いてって。その先に羽根があるよ」
「うん」
何かが、呼んでる…綺麗な鈴の音が、頭の奥で響いてる。
姫さんの羽根の波動が強く感じる。間違いなく、この先に彼女の記憶のカケラが眠ってる。
「此処だ。…この壁の先に、姫さんの羽根がある」
「うん、この辺りが一番強い。サクラの羽根の波動」
「何もねぇぞ」
「壁よ、緋月ちゃんにモコちゃん」
「多分だけど、コレ―――…」
「ちょっといいー?」
壁を触って、次に本棚を触ったファイくん。
何かを感じ取った彼は「あー」と声を上げる。…その答えはきっと、僕と同じだと思う。
彼にも魔力はあるしね。それも、僕より強大な力だ。決してそれを使おうとはしていないようだけれど。
この壁の先には、まだ道がある。
壁のように見えているのは、魔法で覆っているから。…『記憶の本』を、何人にも奪われないようにする為に。
「黒っち、この本棚こっちに動かしてー」
「ああ?何で俺が」
「『お願いーおとーさん』」(緋月の声)
「『しょうがないなぁ、かーさんの頼みなら』」(黒鋼の声)
「白まんじゅう…!」
―――ポンッ
「…うん。その怒りを本棚にぶつけてみよっか、黒鋼くん」
「くっそーーー!」
―――ズ…ッ
―――ズズズッ
さっすが黒鋼くんだ。重いであろう本棚が動き、目の前に道が現れた。
やっぱり―――魔法壁だったんだな。此処。
「この本棚とこの本棚で魔法壁を作ってたんだよー」
「だから位置を動かすと、魔法がズレて壁の向こうが現れるってこと」
「すごいです、ファイさん。緋月ちゃんも!」
「んー、ちょっとでも魔法の勉強したことあるならわかるよー。ねー?緋月ちゃん」
「……そう、だね」
「……」
確かに魔法を知っている人なら、多少は感づくとは思うけど…でも今回の場合は―――いや…今は考えるの、やめておこう。仕方のないことだ。
これはあとでも考えることが出来るし、とりあえず姫さんの羽根を探し出さなきゃ。
この魔法壁も防御魔法ってやつになるんだろうし、感知されたら厄介。図書館の階段の所にいた、番犬がやって来てしまう。
スッと意識を集中させれば、奥の方から波動を感じることが出来る。
「緋月さん、モコナ」
「ん、わかってるよ」
「サクラの羽根、こっちにあるよ」
―――コツーン
―――コツーン
石造りになっていて、僕達の足音だけが響く空間。
だけど―――そう簡単に奥へと進ませてくれるわけは、ないわよね?何てったって、国宝があるんだもの。
僕のその予想は大当たりで、ズラッと並んでいた石像が突然動き出した。
なぁるほど…これも守衛機能ってやつの一部、だね。侵入者を排除する為に。
「…これはまた、面倒な敵さんだねぇ」
「相手は石だろ。緋月、お前は下がってろ」
「リョーカイ」
「姫も下がっていて下さい」
「は、はい」
小狼くんの蹴りが、黒鋼くんの拳が…襲い来る石像を次々と壊していく。僕も観てるだけじゃなくて応戦したいんだけど、さっすがに素手で石は割れないしなぁ。
何か武器がないと、無理な気がする。…でも剣でも応戦は出来ないか。刃こぼれしちゃいそう。
ある程度、壊しきったかと思っていたら…まだまだ終わりじゃなかったみたい。
「石像の数は無限大ですか?此処」
「わー、ピンチっぽーい」
「ピンチなんて、可愛いものじゃないと思うよー」
今度動き出したのは、翼が生えた巨大な石像。さっきのより大きいし、簡単に壊せそうな代物ではない。
国宝書を守る守衛機能…思っていた以上に、破るのが難しいかも。
―――バッ
動き出した石像がまた、襲い掛かってきた。
壊しても、壊しても…次々に動き出す石像は、決して僕達を逃がしはしないだろう。
…キリがないってことよね?壊し続けても。