02
―――ザシュッ…!
水が、重い。体が思うように動いてくれなくて、反撃が出来ない。
やっとの思いで反撃しても、地上での蹴りより威力は段違いだった。敵うはずが―――――なかったんだ。
―――ゴボッ
(小狼くんっ!…っ神威さん、もうやめて!!!)
「…殺す。コイツの血を全部飲めば、目を覚ますかもしれない。昴流は」
(血…昴流…星史郎さんが探している、吸血鬼の双児……)
昴流……それが、神威さんが守ろうとしている大切な人の名前。
「やっぱりあの男を知っていたのか。お前、技があいつと同じだ。『東京』にあいつの気配はしない。けど、あいつを知っている奴が来た。もうすぐ来るかもしれない。あいつは必ず殺す。…その前に、お前だ」
(やだ……やめて、神威さん…っ!)
僕の声は届くことなく、神威さんの鋭い爪が小狼くんの喉を裂いた。傷口から止め処なく流れ出る血は、綺麗だった水を赤く染め上げる。
深手を負った小狼くんは水の中で浮かんだまま、ピクリとも動かなくて。
でも、まだ死んだと決まったわけじゃない。急いで手当てをすれば、まだ助かる可能性はあるはずだから。
此処で項垂れている場合じゃない。今の僕に出来ることをしなくちゃ…!
小狼くんに近づこうと水を掻いた時、背中をゾクリと…言いようのない何かが走った。
(嘘、でしょ…?この感覚は、もしかして―――)
次に視界に映ったのは、今までの比じゃないスピードで神威さんに蹴りかかっている小狼くんの姿だった。
こっちを見る彼の瞳は、レコルト国で見た時と同じで…何の感情も映していない、冷たい氷のような瞳。
(羽根は渡さない。全て取り戻す、必ず)
「…お前、違うな」
(ダメ、ダメだよ…失わないで、小狼くん!キミが今、それを失ってしまったら―――)
お願いだよ、小狼くん。
誰も、傷つけないで…殺さないで―――――!!!