繋がった未来


どれくらい、眠っていたんだろう。

終わった瞬間の記憶は微かにあるんだけど、それ以降は思い出せなくて。

深く、深く…沈んでいたような気もする。

まどろむ意識に"何か"が引っ掛かった。



「誰かが…次元移動しようとしてる……」
「緋月?」


重い瞼を開いた先に映し出されたのは、黒いワンピースを着た可愛い女の子。


「次元移動能力を備えた、この国唯一の機械人形です。『彼女』が貴方を他の世界へ連れて行ってくれます」


アレが―――姫様がどうしても欲しかったもの。彼らが知ったら、怒ってしまうようなもの。

―――たった一人で、次元移動をする術。

ああ…確かに彼らは怒るでしょう。許さないでしょう。そしてきっと…貴方を引き止める。
もう二度と、大切な者を失ってしまわない為に。


―――ガッ!

「姫を放すなよ!」
「…小狼くん」


姫様の手が機械人形の手に触れた時、もう1つ…次元の道が開いた。
何がどうなっているのかはわからないけど、でも―――


「三つの世界が繋がる…」
「!どういう、ことだ…?」
「私にもよくわかりません。でも…此処インフィニティと、何処か別の世界が繋がろうとしてます」


抱えてくれていた黒鋼さんの腕から離れ、問い掛けに答える。
途端、感じる羽根の気配。上空を見上げれば、瓜二つの黒の女の子と白の女の子の胸元から…姫様の羽根が姿を現した。

その横でフラリ、とファイさんが動く気配。
…でもどこか変だ。彼の瞳は虚ろで、何も映してないように見えるの。


「待てっ!」

―――バチィッ

「っきゃあ!」


何…今の。これもファイさんの魔法…?自分に触れるもの、全てを拒絶するかのような印象。
姫様の手を掴んでいたシャオも、彼の魔法によって弾かれ、床に倒れこんでいる。

…虚ろだけどでも、何も映してないわけじゃない。今の彼の瞳には、姫様しか映っていないんだ。


「ファイさん…?」


彼の足元に転がってきたシャオの剣。
姫様の内に吸い込まれた、2枚の羽根。
同時に感じる、姫様の魔力。



けれどいつか、
おまえ達がずっとそれぞれの場所に留め置かれた理由

その強大な魔力を凌ぐ者が目の前に現れたら、おまえは



―――そして、悲劇は起こった。



おまえはその者を 殺 す



黒鋼さんに手伝ってもらいながら、盤上へと上って…すぐに飛び込んできたのは、見たくもない現実だった。

シャオの剣で、姫様を貫く…ファイさん。

ファイさんの魔法で巻き起こった風によって、姫様の血が…辺りに飛び散っていく。肌に触れる生温かいものは、きっとソレだ。


「う、そ……!」


我に返ったのか、剣を握っているファイくんの手がカタカタと震え始める。
いけない!止めないと、姫様もファイさんも…壊れてしまう!


「剣を抜くな!」
「ファイさんっ」
「さくら!!!」


私達が声を荒げた瞬間。ファイさんの魔力が暴走し、盤上を破壊していく。
床が抉れ、風に阻まれ、2人の元へは近寄れそうにない。
シャオと黒鋼さんが怪我をしないように、風の魔法で防ぐけれど…暴走した魔力ほど、強いモノはないと思う。でもっ…このまま何もせずにいるわけにはいかない。
早く彼の暴走を止めて、姫様の治療をしないと間に合わなくなってしまう…っ!


―――ふわり…

「え――――?」


姫様の、気配…?ふわり、と感じたソレにファイさんの暴走が止まる。
そこにいたのは紛れもない、姫様本人だった。



間に合った。
大丈夫、わたしの命は消えてない。
まだここにある。
忘れないで
これからも、未来は変えられる


耳に届く、姫様の優しい声音。
でも…ひどく悲しくて、辛くて、泣きそうに…なる。



…ごめんなさい。ファイさんをお願い。また 会えるまで
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