03


―――日本


「…モコナ達、日本国で少し休めてるみたいだ」
「セレスの次の移動先を日本国にする対価は、それぞれからもらったわ。インフィニティで5人から」


インフィニティで対価として渡した、チェスの賞金。そしてファイの魔力の使用。
それは行く為だけの対価ではなく、次の移動先までを含めて…だった。
しかしそれだけでは足りなかった。足りない分は別の人物からもらっていたのである。
侑子と同じように彼らの身を案じ、無事を願っていた―――


「知世姫からも」
「そのお姫様はわかってたんだな、ああなるって」
「ええ。でも自分が視た夢の通りにならないでほしいと願っていた。心からね。だからこそ、重い対価を払ってセレスの次に日本国へ来させた」
「夢で視てわかってても、何も出来ないのは辛いな」


わかっていても、知っていても…何も出来ずに、伝えることも出来ずにいるのは何よりも辛いこと。その対象が大切な者なら、尚のことだ。
けれど、伝えてしまえば―――また道筋が変わってしまう。

か細い糸で成り立っている未来(サキ)は、些細なことで変わってしまうのだ。良い方向にも、悪い方向にも。
それでも、何もせずに悪夢の具現を待つことも出来ない。


「飛王とクロウ。それぞれが先を読んで、少しずつ己が望む未来を引き寄せる為に先手を打ってきた。干渉された道筋は、干渉された値だけ行く末を変える。打った手が全て自分の思った通りに進むとは限らない」


サクラ姫が魂と躯をわけたこと
セレスでの脱出
そして、緋月に心が芽生えたこと

飛王はファイが二つ目の呪いを発動させた後、2人だけをそこから脱出させる力を残せるように、彼に暗示をかけていた。
終わりに近付いている旅で、姫の供は小狼・黒鋼・ファイのうち誰か1人で良かったのだから。


「緋月は自分の魔法で出れると踏んでいたんでしょうけど…あの子には"心"が芽生えていた。それこそが最大の誤算。激高した彼女は、アシュラ王の手で大怪我を負ってしまった。
あの子の魔力の源は、紅。大量に血を流すということは、魔力が使えなくなるということ」


彼らそれぞれが飛王の手に抗い、その意志で未来を選び、予定調和は崩れている。
夢見で先を知り、打った手と策略は整合性が取れなくなってきていた。

けれど、それでも―――――


「飛王の視たままに進んでいる事柄もある」
「…勝てるか?」
「わからない」


未来の夢。
夢見が視た、先の世界。
それは訪れる確率が、最も高いもの。


「けれど、誰かが視たまだ訪れていない未来の夢より、人の願いの方がずっと強い」


人の願いは、"何か"を変える力があるのだから。
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