願いごと
―――ポゥ…
『…どうしたのかしら?緋月』
「何だか…こうやってお話するの、久しぶりのような気がしますね」
『…そうかもしれないわね』
シャオ達は知世姫に連れられて、姫さんの元へ向かった。
僕も姫さんの無事を確認したいし、今どういう状況なのか…この目で確認したかったけれど、どうしても侑子さんにお願いしたいことがあって。
だから申し訳ないけど、用事があるって部屋に1人でいる。
この用事が済めば行こう、とは思っているけれど…
―――お前が好きだ
あの日から、黒鋼くんの顔がちゃんと見れなくなっていて。
好きになってくれた嬉しさ、応えられない気まずさ、嘘をついてしまった罪悪感…色んな気持ちがぐるぐる回っていて傍にいることが出来ないんだ。
『貴方…色々なことがあったのね』
「あ……は、い」
『緋月、貴方が決めたことなら何も言わないけれど…でもね?時には欲張ってもいいの、求めても良いのよ』
「僕は―――…求めちゃいけないんです。これだけは、絶対に」
好きな人と幸せになりたい、なんて…求めてはダメ。
―――ピクッ…
「星史郎さんに似た気配…封真さん?」
『あぁ…私がお願いしたの。貴方達の所へ届け物をしてほしい、とね』
「そういえば東京でそんなことを聞いた気もします。…何を届けるように頼んだんですか?」
『…腕よ。機械仕掛けの、ね』
機械仕掛けの、腕―――もしかして、失ってしまった黒鋼くんの左腕の代わりに?
侑子さんはその腕を、封真さんがピッフル国で手に入れたものだと教えてくれた。
きっと…知世姫がピッフル国の知世ちゃんにお願いしたんだろうな。今はもう、彼女から力は感じないけど夢見だと聞いていたから。
「…元々、それを願ったのはファイくんですね」
『本当に聡くなったわね、緋月。それが貴方にとって、良いことなのかどうかは…私にはわからないけど』
「良くも悪くもないと思いますよ?…僕にとっては。あの人にとってはとても良いことなんでしょうけれど」
僕がこの世に生まれたのは、あの人の願いを叶える為。
全ての力が戻ったのは、都合が良いことなんだと思うんだ。
最も、この記憶と力を封じたのは…あの人自身なんだろうけれど。何か思惑があったのかどうかは僕にはわからない。
「世間話はここまでにして…侑子さん。願いを、叶えて頂けますか?」
『―――最初の願いとは、別の願いかしら?』
「ええ」
『それ相応の対価を支払えば、叶えましょう』
足りるかどうかはわからない。けれど、今の僕にとって一番大切で、失くしたくないモノの1つ。
それを対価の1つとして差し出す覚悟は、もうとっくに出来ていたんだよ。
黒鋼くんからもらったブレスレット。インフィニティで一度、僕のことを護ってくれた。
手放したくないけど、これを対価に願いを叶えてくれるのならば…惜しくない。彼には申し訳ないけれどね。
『ひとまず、願いを聞かせて頂戴』
「はい。僕の願いは―――――…」