02


―――星史郎さんの魔力。

―――結界が張られた感覚。

―――姫さんの羽根の波動。


侑子さんとの通信を切った後…少しずつ拾い上げていく感覚に、悪寒が走る。
何か良くないことが起きるような、そんな気がしたんだ。

―――そして、異空間が開いた。


「日本国と別の世界が繋がった…?!」


一体、何が起こっているんだろう。皆は…姫さんは無事なんだろうか。
無意識に僕は走り出していた。無事かどうかを確かめたくて、失いたくないって感情が僕を突き動かす。矛盾だらけの想いが体を駆け巡る。

―――タンッ…

大きな桜の木。そこに開いた別次元へと繋がる道。
そこから伸びる黒いものと、意志を持ったかのように動く木の枝がシャオを飲みこんでいった。サクラ姫と一緒に戻って来る、と言葉を残して。


「あ、緋月ちゃん…!」
「一体、何が起きたの?シャオは何処に…」
「彼は夢の中へ行かれました」
「!…そっか…姫さんの羽根が」
「あぁ。あの羽根は仮想空間である桜都国を現実化させたもの」
「そして、この神木が夢の入り口となったのでしょう」
「夢の中にいる姫の魂を連れ戻すつもりか」


インフィニティで分かれた姫さんの躯と魂。躯はセレスに、魂は夢の世界へと渡ったと聞いていた。
無事に姫さんの躯を取り戻せた今、確かに次は魂を探しにいくつもりではいたけれど…まさかこんな展開になるだなんて予想もしていなかったわね。

…シャオならきっと連れ戻してきてくれる、と信じてはいるけれど。
心配なのはそこじゃあない。写身である小狼くんが夢の世界へ来るってことだ。
あの小狼くんはシャオが基になっている。もうすでに心は失われてしまっているけれど、それでもシャオ自身であることに違いはない。
あの子は―――自分の手で終わらせるつもりなのだろうか?小狼くんの生を。


―――ゴゴゴゴゴ…
―――ザワザワ…
―――ドクン ドクン ドクン

「(姫さんの躯に異常はないけど…何だか禍々しい感じ。嫌な予感しかしないな…)」
「…追いかけねぇのか」
「オレにはもう魔力はない。それにもしあったとしても……待つよ、辛くても」


東京でも同じような会話があったな。
あの時のファイくんは待つことが出来ない、と言って黒鋼くんと険悪になって。
…でも今はあの時と全く違う。ファイくんの心が前に進んで、信じることが出来るようになったから。
だからどんなに辛くても、シャオを信じて待とうと思えるようになったんだよね。


「小狼、大丈夫かな」
「私にはもう夢は渡れません。出来ることは信じるだけです。必ず、帰って来て下さると」
「モコナも信じるよ」


…待ってるから。信じてるから。
だからシャオ。お願いだから、死なないで。無事に此処へ―――姫さんと一緒に、戻ってきて。
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