悲しみのチェックメイト
突如、私達の目の前に現れたカイル。
目的はきっと、姫さんの羽根と―――魂が失われた、躯。
魂がなくてもあの人にとっては何の問題もないんだろう。
だって、必要なのは「次元を刻んだ躯」だから。魂はなくとも、あの人の願いは叶えることが出来るんだ。
「(命など…関係ない、と思っているんでしょうね。飛王様)」
あの人にとって一番大事なのは、自らの願いをどんな手段を使おうとも叶えることだ。その為ならば、何も厭わない。
写身の小狼くんを使って、散らばった残りの羽根を集めさせる。…どれだけの人を傷つけようとも。
…心があるようで、心がない人。それが僕の主である、飛王様なんだと思う。
けれど、どんな手段を使おうとも叶えたいと思う願い。それは誰もが願うことだから。
「死んだ人を…生き返らせること」
それは理を崩す願いだから。どんなに願っても叶えることが出来ないの。
でも…あの人はそれをやろうとしている。だからこそ、この次元の理が崩れつつあるんだから。
姫さんの躯には、たくさんの次元が―――記憶が刻まれている。
心の記憶ももうほとんどが、彼女の中に戻っていたはず。…ということは、この旅も終わりが近づいているということだ。
そうでなければ…あの男がわざわざ此処に来るはずがないものね。飛王様の命なのだろう。
―――ゴォッ
「サクラちゃん!」
「これ何?!動けないよぅ!」
ファイくんとモコの声が聞こえて、ようやく我に返った。
カイルが姫さんの躯を抱えていて、皆は黒いモノに体を絡め取られていた。全員の動きが封じられた中で…僕だけが、動ける状態で。
フッとカイルの視線がこっちに向いた。相変わらず、その瞳は憎たらしいくらいに冷ややかで…腹が立つ。
その瞳がニヤリと笑って。
「あの方のご命令だ。茶番も、遊びもここまでにして戻りましょうか…緋月」
心臓が、跳ねた。情けないけれど。
呼ばれるはずがない、と思っていた自分の名前が…冷ややかな声で紡がれる。
"あの方のご命令"。そう言われてしまえば―――今の僕には、逆らう術がない。
だって僕はあの人の人形だから。…僕だから。
僕の命の全ては、あの人が握っているから…どうすることも出来ないのが現状だ。
―――あぁ、そうか。チ ェ ッ ク メ イ ト か 。