02
side:緋月
「う…」
ズキズキと痛む頭。額からポタリと、血が滴る感覚。
高麗国で負った額の傷がようやく治った所だったのに…また容赦なくやってくれたもんだよねぇ。
此処、何処だろう…。姫さんは?
人の気配がしないってことは、同じ場所にはいないってことだろうけど。てか、腕が痛いのは何で?
体を少し動かせば、ジャラリと金属音が辺りに響いた。視線だけやれば手首と足首に頑丈そうな鎖がつけられていて。
腕が痛かったのは、上から吊られてるからだったのね…しかも両腕。
牢屋か何かかしら…でも鎖だけ妙に新しい。壁とかはこんなに朽ちているのに。…まるで、こういう時の為に用意されたって感じね。
「あー…鎖(コレ)、どうしよっかなぁ」
軽く引っ張ってみても、ジャラジャラという音がするだけで外れる気配はない。
下手に引っ張り続ければ…手首の方が先にイカれるだろうな。
―――カツン…
「っ!…カイル、さん」
「おや、お目覚めでしたか。ご気分はいかがですか?」
「最っ悪ですよー?この状態で、どう見たら良さそうに見えるんでしょうねぇ?」
皮肉っぽく笑い、そう告げてやれば一瞬にして仮面が剥がれた。
―――バキィッ!
「生かしておいてやれば、調子に乗りやがって…」
「どうせ…生かしておく気なんて、更々ないくせに」
「くくっよくわかってるじゃないか。…あの方の傍にいるのは、私だけで十分なんだよ」
「…そう。やっぱりアンタは―――」
―――ドカッ!!!
「ぐっ!ゲホッ…」
「お前には此処で孤独に死んでもらう。羽根もあの場所も、私のものだ」
―――ガスッ
―――バキィッ
ああ…うざったいな、この人。
でも腕も足も拘束されてる今、反撃も防御も出来ない…それがもどかしくて仕方ない。
この状態でも、魔法は使えるけどー…それは後に取っておいた方がいいものね。
力は無駄にしたくないし。まだ何が起きるか、わからないのだから。
散々殴って、蹴って、罵って…満足したのかな。アイツは高らかに笑って、此処を出て行った。
…扉は、ちゃんとあるのか。ということは、此処から出ることは出来るんだよね。簡単に。
「鎖(コレ)さえ、何とか出来れば…どうにでもなるね」
でも捕まって1つだけ良いことがあった。アイツが口を滑らした、あのキーワードだ。
"羽根"
確かにそう言ったのよねー。
この国に、姫さんの羽根があるのは確実。それも多分、北の城に。
子供達があそこに行ったのもきっと、それの為だろう。何かしらの事情で、子供の手が必要になった。…とかね。
ま、何にせよ。羽根は小狼くん達に任せるとするかねー。
あの人達のことだ。情報はある程度、集め終わってるだろうし。真犯人に辿り着くのも時間の問題だと思う。
僕はそれより―――此処から脱出することの方が先決だから。
―――ガチャンッ
「ん…っ!」
―――ガチャッガチャンッ!!!
「ハ…ッ!ダメ、か…壁がかなり朽ちてるから抜けるかと思ったのになぁ」
壁は風化していっても、金属はそうはいかないよね…考えが浅はかだったかも。
―――ポタッ…
…血…?あぁ、思いっきり引っ張ってたから手首がやられたのか…どうりで痛いと思ったわ。
頭の出血もまだ止まってないし、早くコレ外して止血しないと。貧血で動けなくなるっつーの。
「…体中痛いし、鎖は取れないし、血は垂れ流しだし…ツイテナイね、僕も」
クスリと漏れた笑みは、自嘲的な笑みだった―――――。