秘術の国


モコの口に吸い込まれてすぐ、景色が変わった。
見えるのはたくさんの人。さっきの世界にも人はたくさんいたっぽいけど、なーんだか不穏な感じがするなぁ。…っていうかさ?


「これ…無事に着地できんのかなー?」
「うーん、ちゃんとした足場があればの話じゃないかなー?あとはー…運?」
「あっはっはっは…はぁ…」


呟いた独り言に返された、ファイくんのへにゃんとした感じの一言。この人、あんまり危機感持ってないみたい。
思わず漏れた笑いは、自分でもわかる程に乾いていました。(こうなったらもう、笑うしかないんだもの)


――― ド サ ッ !!!


「ああー?次は何処だ?」
「わー、何だか見られてるみたいー」
「てへ!モコナ、注目のまとー!」
「また妙な所に落としやがって!」
「…呑気に会話してる場合じゃないみたいだよ」
「あ?」
「ん?」
「何だ、こいつら!どこから出て来やがった!!」

―――ドガッ!!!

「お」
「あ」
「わ」
「ほーら、ね?」


突然現れた僕達に驚くのも、警戒するのも当然だと思う。だけど、やり方ってもんがあるでしょう?
姫さんの腕を思いきり引っ張った、どでかい男は小狼くんの見事な飛び蹴りでノックアウト☆
それでも彼は警戒を解かない。護るように腕を広げ、姫さんを庇っている。


「姫さん、立てる?」
「うん、平気。ありがとう、緋月ちゃん」
「いーえー」
「お前!誰を足蹴にしたと思ってるんだ?!」
「あー…何だか面倒なことになりそうだな…」


どうやらあちらさんはヤル気満々、って感じのようだ。
到着早々に面倒だし、騒ぎにはしたくないんだけどー…ま、突然現れちゃってるからそれは今更だね。
かと言って、この状態のままにしておくのも癪だ。正直、ムカつくから。僕も小狼に加勢するとしますかねー。

隣に立っている姫さんを庇うように前に出たと同時に、女の子の威勢のいい声が聞こえた。
視線を上げてみると、屋根の上に1人の女の子が勇ましくも腕を組んで立っている。綺麗な黒髪をてっぺんで1つに結わいて、意志の強そうな瞳をしてるな。


「誰かれ構わずちょっかい出すな!このバカ息子!!」
「春香!!誰がバカ息子だ!!」
「お前以外にバカがいるか?」
「ブッ……く、くくくっ面白いねぇ、あの子」
「あ、あの緋月さん…あまり笑うと―――」
「無礼な…っ!!!この方は高麗(コリョ)国の蓮姫(リョンフイ)を治める、領主(リャンバン)様のご子息だぞ!」
「ほら、睨まれちゃいました…」
「ふふっ弱い犬はよく吠える、ってね?」


ニヤリと笑えば、ぐっと顔をしかめるどでかい男。
そして勇ましい女の子に捨て台詞を残し、大勢の手下のような奴らを連れて引き上げていった。
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