02
―――バルンッ
―――フイィィィイィン
「んじゃ、姫さん。行ってみようか」
「うん!」
まだ整備は完全じゃないけど、試運転する分には何の問題もないでしょう。
エンジンを掛けて、ゆっくりとペダルを踏めば…フワリと機体が浮いた。
―――バッ
―――わぁっ
よし!飛んだー!
機械をいじるのは初めてだったから、色々と不安だったけど…何とか大丈夫みたいだねー僕のドラゴンフライは!
風の影響を受けやすいらしいから、確かに操縦は難しいけど。だけど―――
「これは思ってた以上に、楽しいかもー」
どうしてかはわからないけど、ワクワクしてきた!今までこういう乗り物に乗ったことなかったから、余計にそう感じるのかもね。
これならちゃんと整備をして、調整をしていけばレースでもいいトコ狙えるかもしれないなぁ。頑張ってみよう。
…そだ、姫さんは大丈夫かな?気になって後ろを振り向いてみれば…
―――ぷすん
―――へろっ
「きゃっ?!」
―――ぷすん
―――へろろろろ…
「きゃ〜〜〜〜〜」
「ちょっ!姫さん?!!」
「わーっ」
ぽてっと地面に落ちました。
急いで姫さんの元へ向かったけど、怪我とかはしてないみたい。ドラゴンフライも平気みたいだし。
とりあえずは、良かった…のかな?何か色々と良くない気もするんだけど!
「緋月ちゃんは上手かったけど、サクラちゃん大丈夫かなぁー」
「飛びっぷりも素敵ですし、コケっぷりもかわいいですわ!!」
彼女の心はバッチリ掴んだみたいだけど、これは心配だなぁ。
レースまでそんなに時間もないし、整備もしなきゃいけないから…あまり練習に時間を掛ける余裕がない。
…でもま、小狼くんが教えるだろうし。基礎的なことさえ理解できれば、飛べるようにもなると思う。
姫さんだもん。きっと大丈夫だよ。
「整備はしてたけど、飛ぶ練習はしてなかったもんねぇ。怪我、してない?」
「うん、怪我は大丈夫!」
「…レースに出ないって選択肢は、ないんだよね?」
「…うん。自分に出来ることは頑張りたいの」
「姫…」
「クスッそうこなくちゃね。じゃあ、練習しよう!飛べるように。…ね?小狼くん」
「はい。おれも手伝いますから、一緒に頑張りましょう」
「うんっ!ありがとう、小狼くん!緋月ちゃん!」
貴方が頑張ると言うなら、僕は出来る限り手伝うよ。それが貴方の意思ならば。
と、いうわけで。今日の夜から姫さんの特訓をすることになりましたー。
夜もすっかりと更けた頃。
僕と小狼くんと姫さんは、外でライトをつけながらドラゴンフライの操縦の仕方の練習をしています。
夕飯を食べてからずっとやってるから、かれこれ2時間くらい?さすがにぶっ続けだし、そろそろ休憩させてあげないと疲れちゃうね。
ひとまず小狼くんに任せて、飲み物でも持ってこようかな。
「ここでこうハンドルを切れば、失速せずに曲がりますから」
「はい!こうね!」
―――グイッ
―――そっ
「ゆっくりで大丈夫ですよ」
そっと自分の手に彼の手が重なって、顔が赤くなってる姫さん。
そのことに気がついて、同じように顔が赤くなってる小狼くん。
ふふっ微笑ましくて、可愛いなぁ2人とも。でも少しだけ…そんな風に想い合ってるキミ達が、羨ましい。
「おかえり、緋月ちゃん。微笑ましいねぇ」
「姫さん達でしょ?本当にねー。…あ、それお酒?少しちょーだい黒鋼くん」
「…ほらよ。あんまり残ってねぇぞ」
「大丈夫ー。まだ練習するし」
「(この2人はナチュラルにいちゃつくなぁ…無意識?)はい、黒たんおかわりー。そういえば、今日の黒たんも微笑ましかったー」
「ああ?」
ファイくんが言ってるのは昼間のことだ。
知世という女の子、黒鋼くんの国のお姫様にそっくりだったからね。名前も一緒みたいだし。
いつも以上に喋らないのに、やっぱり彼女のこと意識してたから。
僕も同じことを思ってたけど、ファイくんは更に面白がってたみたいだね。
「でも、結構会うもんだねぇ。姿は同じでも、同じじゃない人に」
「そうだね、桜都国でも会ったし。…そうそうないだろうと思ってたけど、そうでもないみたい」
「日本国の知世姫もあんな感じだったの?可愛い子だったねぇ、面白かったし」
「一国の姫なのに、あんな感じなのは…」
「んなわけねぇだろ、バカか」
「あ、やっぱりー?」
一瞬の沈黙。
コクリと、お酒を飲む音だけが響く空間。
「…お前らはまだ会ってねぇようだな。逃げ続けなきゃならねぇ理由と追いかけてる理由に」
「!!?」
「……」
「同じ顔でも、同じ奴とは限らねぇけどな」
「…わかるよ」
「ファイくん…?」
「ただ同じ顔をしているだけなのか、それともあの人なのか…オレにはわかる」
見たことのない、表情だった。彼の厳しい表情。
その人のことを恨んでいるのかはわからない。だけど、会いたくない…ううん、会うことがなければいいのにって、願っているようにも見えたんだ。
すぐにへにゃんと笑う、いつもの彼に戻ってしまったから真意はわからないけれど。
…ってか、睨み合うのはやめてくれないかなぁ?結構、黒いオーラが出てるんですけど。
―――ブロロロロロ…
「きゃー!!」
「きゃーv」
「姫さんと、モコの声?」
「…何してやがんだ?」
―――ガ ツ ン !!!
―――グラグラ…
「っとぉ…?!!」
なになに?!!家が揺れましたけど!!!壁に何かぶつかったような感じだったけど…まさか…だよね?
ドキドキしながらそーっと外を覗いてみれば。…案の定、でした。
家の壁にぶつかったのは姫さんのドラゴンフライで、壁にはめり込んだ跡まで。
「ごめんなさい〜〜〜〜!!」
「まーた派手にやったねぇ、姫さん…」
「サクラちゃん、豪快だなぁ」
「…んとに大丈夫なのかよ」
レースまであと数日。不安は増すばかりでございます…。