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パパー♪
パパー♪


『さあ!始まります!「ドラゴンフライレース」!!
今回は豪華賞品の為か、参加者も過去最高!しかし、この予選で20位以内に入らなければ本選には進めません!』

「(春香ちゃんに護刃ちゃん、それに高麗国のバカ親子まで…会ったことある人がたくさんいる…)」


中でも一番気になったのが、カイルと同じ顔の人がいたこと。…あれはただ似ているだけの別人、なのかしら?
他の皆は僕達を見て反応が全くないから、同じ顔をしているだけなんだってわかるけど。
カイルに似た人は―――少し違ったの。
僕の気のせいかもしれないけど、微かに笑ったんだ。こっちを見て。その笑みに、柄にもなく背筋に寒気が走った。
どうか…どうか、僕の思い違いであってほしい。何も起こらないで。
願いを込めるように、ハンドルをギュッと握った。


『お待たせしました!皆様!時間です!!』

―――ワアアァアアッ

『チェッカーフラッグを振るのは、我がピッフル国が誇る総合商社「ピッフル・プリンセス社」の若き社長、知世=ダイドウジ嬢!』

―――バッ!!

『「ドラゴンフライレース」のスタートだーーーーー!!!』


さーて、こっからは仲間のいないたった1人での戦いだ。気合い入れていかないといけないね。
心配なことはあるけど、わからないことを考えても仕方がない。何か起こってしまったら、その時に対処していけばいいもの。
今はただ、予選を通過することだけを考えなくちゃ。姫さんの羽根の為にも!


『さあ!豪華賞品を手に入れるのは、一体誰なのか?!ドラゴンフライ達、綺麗に飛び立ち……!!』

「きゃーーーー!」

『早速、一機失格かー?!』

「姫!」
「姫さん?!」
「あらら」
「のっけからかよ」


練習はしたけど、実践自体は初めてに近いから。
そしてこの会場の空気じゃ…練習の成果をきっちり出すのは、至難の技かもね。だけど…彼女を此処で失格にするわけにもいかないよ。何とかしてあげなくちゃ!
とにかく、機体を姫さんの方に寄せないと。


―――ガクンッ

「っ!」

―――スゥ

「姫さんっゆっくりペダルを踏んで!焦っちゃダメだよ!」
「そのままハンドルを上に!」
「は…はい!」


小狼くんと僕のアドバイスがちゃんと通ったらしい…姫さんの機体は何とか持ち直した。
良かった…このまま失格になっちゃうかと思ったよ。
ふう、と一息ついたら何かゴゥンゴゥンと音がして、影が出来た。
?何の音だろう。


「素晴らしいコンビネーションですわーーーー!」
「「「わ!!」」」
「でっか!何コレ!!!っていうか、危なくない?!大丈夫?乗り出して…」
「そうですよ!乗り出すと危ない…」
「大丈夫!この『ピッフルGO』には、様々な安全装置が装備されてますから!!」


い、いや…そういう問題じゃないと思うんですが…


「でもお2人共、可愛いうえにお優しいんですね」

―――グラッ

「あ」
「!!」


彼女の言葉に照れてしまったのか、操作を誤った姫さんの機体は急降下。でも地面には落ちず、自分で何とか持ち直してくれたみたいだけど…。
黒鋼くんとファイくんは、姫さんのことを気に掛けながらも先に行ってくれている。
これは勝負だし、誰かが優勝しないと…このレースに参加した意味がなくなってしまうからね。
本当なら僕も先に行って、ベストを尽くすべきなんだろうけどさ?
…気になって、心配で仕方ないんだ。姫さんのことが。きっと小狼くんも同じなんだと思う。


「姫さん…っ」
「小狼くん!緋月ちゃん!」
「はい?!」
「何ー?!」
「先に行って!」
「え?!」
「!」
「力いっぱい飛んで!わたしも精一杯頑張るから!」


そう言ってにっこりと微笑まれた。…そうよね、大丈夫。だって姫さんだもの。
どうしてそう言い切れるのか、根拠はないけれど。でも彼女は絶対に、大丈夫だ。

僕達に今出来ることは―――ゴールして、20位以内に入ることだから。

姫さんが言ってくれたように、力いっぱい…ありったけの力で頑張らなくちゃ。
ちゃんと、待ってるから。


「はい!!」
「リョーカイ!また後でねっ!」
「おれもゴールで待ってます!」
「うん!」
「主催者は公正でなければいけないのはわかっていますが、ああいう素敵な方達に勝って頂きたいですわね」


今いるのは最後尾だもんね…とりあえず、中盤グループを目指すとしましょうか!


「さあ…本番はこっからだよ?僕のドラゴンフライ」


―――グッ

アクセルを思いっきり踏めば、練習時にはあまり出したことがなかったスピード。
ちょーっと怖いけど、このくらい出していかないと予選通過は難しい。
それに…負けるのって悔しいじゃない?せっかくのレースだ。どうせだったら、上位を狙ってやるんだから!

―――ォオオォオ…

しばし飛ばせば、徐々に中盤グループの機体が見えてきた。…その時、何か気配のようなものを感じた。

何かが、来る。

一筋の風を頬に感じた時、前方を行く機体が何体か風に攫われて、大破した。なぁるほど…突風か。


「こんな所で…リタイア出来ないでしょう!」


更にアクセルを踏んで、ハンドルを切る。
機体は僅かに傾き、ターンをしながら風を避けることに成功した。すぐ後ろにいた小狼くんも、無事に避けられたみたいだね。
ま、こんな所でリタイアするようなヘマをしない人だけどさ。


「「ひゅー」さっすが小狼くん。いつもみたいに「まだまだ」とか言わないの?」
「ふん」
「緋月ちゃんもさすがだったねぇ。綺麗なターンだったしー。…あ、サクラちゃんは?」

「……来る」


―――フワ

姫さんの機体は見事なターンを決めて、風を避けていた。
風の軌道がわかっていたかのように、しっかりと。…でも良かった。巻き込まれたりしなくて。

スッと視線を姫さんに向ければ、親指を立てていた。小狼くんも同じように。
僕もそれに応えるように、ピースをして…また前を向く。今度こそ、上位グループに追いつく為に。


「素晴らしいですわー!!これは更に盛り上げねばー!!」

―――カッ
―――カッ

「な、何事…?」

『おお!知世社長にスポットが?!こ…これは!』


今回の賞品の、姫さんの羽根…?
んん?光が真っ直ぐ伸びて…どこかを指してる。此処からじゃよく見えないけど、実況の人の説明だと予選のゴールということらしい。
塔、なんだろうね。アレ。


「あれがゴール…あそこを目指せばいいわけね?」


場所がわかれば、あとは目指すのみだ。
―――さぁ、そろそろラストスパートといきましょうか。


―――ゴォッ!!!

『おぉっと?!今回、初エントリーの「ローズバタフライ号」!機体がひしめく集団の中へ、スピードを上げて突っ込んでいきます!!!そして……』

―――ギュンッ

『抜いたぁー!「ローズバタフライ号」、3機抜きました!!何という素晴らしい操縦ーーーっ初めてとは思えません!!!』

「紅い蝶、ね。なかなか良い名前をつけてくれたなぁ」


ちょっと無理矢理だったけど、スピードを上げたお陰で上位のグループに入ることが出来たみたい。
だってその証拠に、前の方に黒鋼くんとファイくんの機体が見えるもん。ゴールまではあと少し。
よっぽどのミスをしない限り、20位以内には入れるかな。


『さあ!あの電池は一体、誰の手にーーーー?!』
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