最後の罠


『さあ!残った9機、更に渓谷を進みます!』


ふうっようやくあの狭ーい岩壁を抜けることが出来たみたいね。
でもまた―――難関が待ってるみたいだけど。

先に見えたのは、噴き上がる水。どうやら今度通る所は間欠泉地帯のようだ。
いつ水が噴き上げて来るか予測不能。『ドラゴンフライ』は防水加工を施してあるらしいけど、この大量の水に直撃したら飛行不能だろうねぇ。他の人達も苦戦してるみたい。


『あー「レジェンド号」モロに水を被ってしまいました!リタイアだー!』

―――ドォンッ

「きゃー!お水、いつ出てくるかわかんないね」
「「わかる」」

―――ギュンッ

『おお!他の機体がスピードダウンしている中、「ローズバタフライ号」と「ウイング・エッグ号」スピードを上げました!!』


姫さんも感じ取れることが出来るんだ。水の流れが。
感覚でしかないけど、水の動きが…わかる。次はどこから噴き上げるのか、どのタイミングで噴き上げてくるのか。

…普通ならわからないことなのかもしれないけれど。だけど、今ほどその能力に感謝したことはないかもね。
だってそのおかげで、今リタイアすることなく間欠泉を避けることが出来てるんだから。ラッキーだと思わなきゃ。
彼女も次々と噴き上げてくる間欠泉を避けて、ぐんぐんと順位を上げてきてる。最下位だった姫さんは、ついに5位になった。


「さっすが姫さんだよねー」
「サクラすごいー!緋月の姿も見えてきたよー!」
「お水が流れてく感じが、何となくわかるから」

―――ドオンッ

『「蓮姫号」!ああ!「ガルーダ号」も間欠泉にーーー!!』


また2機、リタイアした。
これで残ったのは―――――

『黒たん号』
『イエロータイガー号』
『スノーホワイト号』
『フライングレディ号』
『ウイング・エッグ号』
『ローズバタフライ号』

この6機だ。
僕の前を飛んでいた笙悟さんも、この読めない間欠泉の噴き上げるタイミングに手こずってるみたい。スピードを上げたまま、飛んでいるのはどうやら姫さんと僕だけのようで。


「緋月ー!」
「緋月ちゃんっ」
「やほー、姫さん!モコ!すっごいじゃない?あんな綺麗に間欠泉を避けられるなんて」
「緋月ちゃんだって避けてたでしょう?…わたしと同じように」
「何となくわかるからね。水の動きがさ」


…っと。話をしているうちに、黒鋼くんに追いついたみたい。


『おお!「ウイング・エッグ号」!「ローズバタフライ号」と一緒に、2位まで順位を上げて来ましたーーー!!』


その頃の小狼とファイはと言うと―――…


「緋月ちゃんもサクラちゃんもかっこいー」
「すげーな!あの子達も一緒に旅してるのか?」
「うん」
「どんな関係なんだ?」
「え、えっと」
「小狼くんとサクラちゃんとモコナが兄弟でー、あの人がお父さんー。緋月ちゃんはお母さんなんだよー」
「え?!」
「あのウサギみたいなのも?!」
「そうーモコナが一番上ー」


そんな会話をしていたとか、していないとか。


黒鋼くんに追いついて、その先に機械みたいなのが2体浮かんでいるのが見えた。
感知器…かなぁ?第三チェック地点を抜けたっていうのを、確認する為の。
確か第二のチューブの時にもあったような気がする。んで、バッジが機体にベタッと張り付いたんだよ。

―――ベタッ

そ。こんな感じに、ね。
あの後、間欠泉でリタイアする人は出なくて。残っている5機、全部が無事にこの間欠泉地帯を抜けることが出来たみたい。
モコは横に並んだ黒鋼くんに、嬉しそうに手を振ってる。
でも彼はソレが気に入らないみたいで、うがーっと怒ってるけどねー。多分、まだレースの最中だから…かな?モコがやってるから、って理由もあるかもだけど。
とりあえず、まだ勝負している途中だから、そういうのは嫌なんでしょう。


「(バッジは3つゲットした。あとは、この先にあるゴールを目指すだけだ)」


もう少し。もう少しで…勝敗が決まる。
ここからは更に、気を抜くことが出来ないな。何としてでも優勝しないと。


「最後の…ラストスパートといきますか」


グッとアクセルを踏んで、スピードを上げた時。
何だろう…微かに、違和感のようなものを感じたんだ。本当に微かで、意識を集中させて、耳を澄まさないとわからないような…小さな音。

―――カチッ…カチッ…

んー?時計の、秒針の音みたいに聞こえるけど…一体、何処から聞こえて来るんだろう?
エンジンの音に混じって聞こえるってことは、僕の機体からってことになるよねぇ。でもついさっきまでそんな音、してなかった。
ドラゴンフライのパーツにも音がする物なんてなかったと思うし、そもそも取り付けた記憶もないもん。
計器類でも…ないよね。もうちょっと中…っていうか、内部からって気がするから。


「(急に聞こえ始めた変な音……一体、何なの?)」

『アト30秒』

「え?!」


突如響いた、不気味な声。だけど、生きている者の声じゃあない。機械っぽい、一定の抑揚のない声。
その声が…カウントダウンを始めたんだ。


カ ウ ン ト ダ ウ ン ?


急に聞こえ始めた、変な音。更にカウントダウンをする、不気味な声。
僕はそこでようやく―――1つの結論に至った。


『アト20秒デス』


ああ、もう!何処の誰だかわかんないけど、ナメた真似してくれたもんだ。
だけど、今はそんな事考えてる暇がないっ!とにかく高度を上げて、他の皆が巻き込まれないようにしなくちゃ。


―――ギュィンッ

「緋月…っ?!」

『おおっと!「ローズバタフライ号」が急に高度を上げました!ゴールも近いというのに、どうしたんでしょうか?!』


アト…5秒

…4…

…3…

…2…

…1…


「…チェックメイト、だな」


「―――――…ッ!!!」



―――ドオォォオンッ!!!
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