02


 side:サクラ


突然の、出来事だった。本当に突然すぎて…わたしには何が起きたのか、すぐには理解できなかった。
わたしの少し前を飛んでいた緋月ちゃんが、急に機体を急上昇させたの。
黒鋼さんもそのことに驚いてたみたいだった。だって、もうすぐゴールなのに…そんなことをする理由がわからなかったから。
そのすぐ後だった。緋月ちゃんのドラゴンフライが―――爆発したのは。


『一体、何が起こったのでしょうか?!「ローズバタフライ号」が突然、爆発しましたーーー!!!』

「何がどうなってやがる…!」
「緋月ちゃん…っ!!!」
「緋月の姿、見えないよ?!」


もくもくと煙を上げて、そのまま落下してくる緋月ちゃんのドラゴンフライ。だけど、乗っていたはずの彼女の姿が何処にも見当たらない。
叩きつけられた様子もなかった…ってことは、まだドラゴンフライに乗ってるの?!
死んでなんか…いないよね?!生きてるよね?緋月ちゃん―――!

―――チカッ

祈るように落下してくる機体を見つめていた時、水の中で何かが光ったように見えた。
微かな光だったけど、確かに見えたの。

あれは…なぁに?

疑問に思ってから、すぐ…お水が噴き上げてきた。
噴き上げてきたのは私のドラゴンフライと、爆発した緋月ちゃんのドラゴンフライのちょうど真下から。
さっきまでは、お水が流れていく感じがわかったけど…今回のは気がつけなかった。
何の前触れもなく、ゴォッと噴き上がって来たお水。避ける間もなく、わたし達に迫ってくる。


「ちっ!」

―――ガッ
―――ゴッ!!!

『もう間欠泉地帯は抜けたはずですが、いきなり噴き上げてきました!突然爆発し、更に水が直撃した「ローズバタフライ号」と同じく直撃した「黒たん号」大丈夫でしょうか?!』

「緋月ちゃん!!黒鋼さん!!」
「「?!」」


バラバラと落ちてくる、2人の機体の破片。それなのに、2人の姿が見当たらなくて…更に不安が募っていく。
操縦をすることが出来なくて、その場に止まったままお水が噴き上げて来た場所を見つめていた。
もしかしたら、緋月ちゃんと黒鋼さんが上がってくるんじゃないかって…思ったから。
不安からだろうか?胸が締め付けられそうに痛くて…後ろから飛んできた人達に追い抜かされても、飛ぼうっていう気になれないの。せめて姿を見ることができれば、まだ安心も出来るかもしれないけど…。

…すると、ザバッと水面から出てくる人影が見えた。


『いましたーーー!!その腕の中には「ローズバタフライ号」の操縦者もいます!』

「緋月ちゃん!黒鋼さん!」
「行け!」
「でも…!」
「コイツも生きてる!やるって決めたんだろう?!行け!!」


鋭い光の瞳と、鋭い言葉。―――でも、それが黒鋼さんの優しさ。励まし。
そうだ。このレースだって、自分でやるって決めたんじゃない。なのに立ち止まってしまっては…ダメ。
リタイアしてしまった皆の分まで、最後まで精一杯飛ばなくちゃ。それが今のわたしに、出来ることなんだから。


「はい!!」

『「ウイング・エッグ号」飛びます!それに続く「フライングレディ号」!予選第1位の「黒たん号」と10位の「ローズバタフライ号」、残念ながらゴール間近でリタイアです!至急、救護隊を第三チェック地点へお願いします!!』


「お前の親父さんは怪我ないみたいだけど…」
「うん。緋月さんが…」

―――カタンッ

「ファイさん?」
「黒様も此処に来るでしょー。だから、ちょっと行って来るよー緋月ちゃんのことも心配だし」
「何で?待ってりゃいいのに」
「ちゃんとお医者さんに診てもらわないでしょ、黒りんはー。緋月ちゃんだけ治療してもらって」
「え?!」
「怪我してないだろ?」
「意地っ張りなんだよーお父さんは。ほら、小狼くんはあっち見て。サクラちゃん応援してあげて。オレと緋月ちゃんと黒たんの分まで」


(…緋月ちゃん―――生きてる、よね?!)
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