明かされた真実
『さぁ!遂に決まりました!「ドラゴンフライレース」優勝者は!誰よりも可憐に!そして、誰よりも早く空を駆けた「ウイング・エッグ号」だー!!』
―――ワアアァアアアッ
「さっすが、盛り上がってるなぁ」
救護室で治療をしてもらって、少しの間寝かせてもらって。
再び目を覚ました時は、もうすぐで表彰式が始まるって時間だった。
黒鋼くんも治療が終わってたみたいだから、2人を引っ張っていっそいで此処に来たわけです。
うん。何とか間に合ったみたい。
「えっと、小狼くんは…」
「あそこにいるぞ」
「本当だー。小狼くーん」
「あ、ファイさん。…緋月さんっ黒鋼さんっ!」
僕達の姿を捉えると、すぐさま心配そうな表情になって走り寄ってきた。
「2人共、大丈夫ですか?!!」
「俺は問題ねぇ」
「僕も大丈夫だよー」
「…その包帯だらけの状態で言われても、説得力ないです」
「………あ。」
そうなのです。今の僕は、腕と足とー…あと頭。包帯をね、グルグルと巻いてる状態なの。
頭は機体にぶつかったり、水面に叩きつけられた時に。
腕と足は、爆発の時に負った火傷。あと見えないけど、背中も火傷してるらしく…包帯が巻かれてたり。元気は元気なんだけど、結構重傷みたいだねー。
僕自身は他人事みたいになってるけど、黒鋼くん達はずっと心配しっぱなし。
…特にファイくんが。嬉しい、んだけどね?それも。
「でもほんとに大丈夫だから。それより…勝ったね、姫さん」
「……はい」
『この充電電池は、この町全ての電力をまかなえると言われています!』
『充電電池とは文字通り、充電するためのものなのですが…そもそもの始まりは、電気を貯められる魚にヒントを得て作られたものだということは、皆様ご存知ですよね。その魚は雷魚といい、稚魚は3センチほどですが、成長すると2メートルにもなるというのは有名な話で―――』
「……連れてかれた」
まぁ、変な実況さんは放っておいて。
羽根が入ったトロフィーを受け取って、嬉しそうに笑う姫さん。モコの目がめきょってなってるから、これは本当に本物の彼女の羽根だ。
本当に嬉しそうに笑うから…僕も嬉しくなってくる。
姫さんが予選に通った時も、同じように思ったんだっけ。僕の方が嬉しそうだって黒鋼くんに言われた記憶がある。
だって、嬉しかったんだもの。姫さんが予選落ちしなくて。
知世ちゃんと何やら言葉を交わしていた姫さんが、僕達のことを見つけたみたい。
モコと一緒に小狼くんへ手を振っていて。小狼くんもそれを受けて、手を振り返してる。…彼も嬉しそうだ、姫さんが優勝して。
「っ緋月ちゃんっ!!!」
「あ、姫さん急に走ると転ぶ……」
―――ガッ
「きゃ……!」
「姫?!!」
ああ、もう。だから言わんこっちゃない!
ロープを渡してあるポールに手を掛けて、ロープを飛び越えた。間一髪で転びそうになってた姫さんを、抱き留めることが出来たみたい。
あのまま転んでたら、怪我は当然のこと。更にはトロフィーが割れて、羽根が投げ出されてしまうから。
そうなってしまったら、コレを狙ってる人が出てきてしまう。奪われてしまう。
せっかく優勝して手に入れたのに、そんなことになったらす全て無駄になってしまうもの。
「もー…気をつけなきゃダメだよ?」
「うんっありがとう、緋月ちゃん」
少し走ったし、姫さんを抱き留めたから…また傷が痛むけど。でもこのくらいならまだ、大丈夫だ。
彼女を立たせて、僕はまた観客席に戻った。
あそこに立っていていいのは、優勝者の姫さんと主催者の知世ちゃんだけだからね。部外者の僕は、そこに留まらない方がいいの。
「大丈夫ー?緋月ちゃん。まだ安静にしてなきゃいけないのに休んでないし、黒たんも怪我酷いのにちゃんと固定しないんだからー」
「平気だよー」
「ふん」
「黒たんの場合はあんまり大げさにしちゃうと、サクラちゃん責任感じちゃうもんねぇ」
「面倒だっただけだ」
キミはそういう風に言うけれど、これ以上彼女に心配させたくないんだよねぇ。
本当に素直じゃないんだから。…ま、黒鋼くんらしいんだけど。
「でもさー、変わったなぁと思わない?
小狼くん。旅の最初は全然笑わなくて、苦しそうで。
サクラちゃんは記憶が揃ってなかったせいもあるけど、不安そうで。
黒るんは怒ってばっか……なのは、今も一緒かー。
緋月ちゃんは、心から笑ってなくて。
でも旅の間に辛いこともあるけど、楽しいこともあって。ああやって、あの子達が自分で頑張って笑ってるのを見るとさ」
「…変わったなぁって思う?」
「うん」
「じゃあ…」
「そんな風に思えるお前も、変わったんだろ」
「うん、僕もそう思うよ」
「え……」
僕と同じように、他人との間に壁を作っていたファイくん。
だけど、キミも皆に近づこうとしてる。大切に…思うようになっているでしょう?…それも、今の僕と同じように。
そう思っても、信じても―――いいよね?ファイくん。
人々の割れんばかりの歓声の中、姫さんは手に入れたトロフィーを高く掲げた。