04
時刻は昼過ぎ。朝は酔いつぶれていた者も、さすがに意識がハッキリしてきたのか起き上がれる者が増えていた。
「知世嬢とサクラさん、あと緋月さんはどうなさったんでしょうか?」
「できたーーー!!」
「かーんせーいっ!」
「出来たの!モコちゃん!魔女さんとお話出来る?!」
「僕も話をしたいんだ。通信、お願いできる?」
「うん!」
僕と姫さんはそれぞれ、今までお礼を作るべく部屋に篭っていたのです。お菓子も作ってたからキッチンにもいたんだけど。僕は。
かなり時間は掛かっちゃったけど、結構納得の出来る物ができたと思うんだ。
侑子さん…喜んでくれるだろうか?結局、モコに好きな物を聞くのを忘れちゃったから。ちょっとだけ心配。
『あら、モコナ』
「おでかけなの?」
『これからちょっとね。どうかした?』
「サクラと緋月がね、ご用があるんだって」
「お礼出来ました!」
「僕も出来ましたよ。…姫さんのような、立派なものではないですけど」
姫さんが作ったのは、黒のシンプルな…でも侑子さんにバッチリ似合いそうなワンピース。
知世ちゃんに手伝ってもらって作ったんだって。この短時間で、こんな素敵なものを作り上げちゃうなんて…すごいよなぁ。
『緋月も何か作ったのね。袋の中身は何かしら?』
「クッキーとチョコレートで作ったケーキです。確かブラウニーっていうもの、だったかな?あと…蝶のブレスレットを」
「そのブレスレット、緋月ちゃんが?!」
「うん。ちょっと歪になっちゃったけどね…」
侑子さんの手元に渡す為に、モコが姫さんが作った服と僕の袋を吸い込んで。
次の瞬間には、侑子さんの手に渡っていた。
『…ありがとう、確かに頂いたわ。サクラ姫と緋月のお礼だけ』
あー…これ、やっぱりそれぞれ個人に課されたものだったんだねぇ。
誰かがお礼をすれば、服を返してもらえるのかなぁって…ちょっと思ってたんだけど、侑子さんだもの。それはないか。
―――と、思っていたんだけど。
今回は姫さんと僕が作ったものを気に入ってもらえたみたいで、3人の服の預かり代も差し引いてくれたみたい。
必要な時は侑子さんに言えば、渡してくれるそうな。
「今回差し引いたのは、服の預かり代のみ?」
『えぇ♪フォンダンショコラの礼、残り3人忘れないように』
不敵な笑みを残して消えた侑子さん。…うん、さっすが侑子さん!って感じだよなぁ。
あ、そうだ!僕にはもう1人お礼をしたい子がいたんでした。
「知世ちゃん!」
「どうかしたんですの?緋月ちゃん」
「これ…もらってくれる?」
「私に、ですか?」
差し出したのは、侑子さんに渡した物と同じ袋。
疑問符を浮かべつつも、受け取ってくれてシュルリとリボンを解いていく知世ちゃん。
気に入って…くれるかなぁ?さっきと同じように若干、緊張しながら反応を待っています。
「まあ…素敵なネックレス!頂いていいんですの?お菓子まで…」
「うん、もらってほしいな。洋服を作ってもらったのと、仲良くなってくれたお礼だから」
「ありがとうございます。大切に…大切にしますわ、ずっと」
お菓子は侑子さんに渡した物と同じ、ブラウニーとクッキー。
でも知世ちゃんのイメージは蝶ではなかったし、ブレスレットよりネックレスかなーって。
モチーフは羽と星。
どうしてそれにしたのかと言われると、ちょっと困っちゃうんだけど…フッとそんなイメージが湧いたから。星はチェーンみたいに、少し長めにしてみたんだ。綺麗かなって思ってさ。
早速つけてくれた彼女を見て、喜んでもらえたんだってホッとした。
「…似合いますでしょうか?」
「とっても可愛い!」
「似合ってる。それにして正解だったかな」
これでもう、この国に思い残すことはないや。知世ちゃんにお礼を渡すことが出来たし。姫さんの羽根も手に入れたことだし、そろそろ移動の頃合だなって思ってたんだけど…もう少しだけ、この国にいるって聞いて驚いた。
思わず大きな声で叫んでしまうほどに。
「緋月ちゃんの怪我、元気そうに見えるけどひどいって聞いた。時々、辛そうな顔してたってことも。
だから、モコちゃんに頼んだの。少しだけ、移動するの待ってって。
せめて、もう少し辛さが和らぐまで。…緋月ちゃんが辛い顔するの、辛い思いするの、私は嫌だもの」
侑子さんと知世ちゃんにお礼を渡した後、彼女がそう言った。
誰よりも皆の無事を祈って、心配して…大切に思ってくれている姫さんが。モコもそれを理解しているから、それを了承したみたい。
嬉しかった、とても。
だけどその反面、それだけ心配かけてしまっていたことを申し訳なく思ってしまう。きっと…辛い思いをさせてしまっただろうから。
前の僕だったら、確実に大丈夫だって言ってたと思うんだ。移動しようって。けど、今回の件で辛さを隠してしまうのは逆効果だって、気づくことが出来たから。
だからかな。驚きはしたけど、素直に頷こうって思った。
そしたら…安心したように、とても綺麗な笑顔で笑ってくれたんだよね。
―――それから、一週間が過ぎた。その間、僕はなるべく無理をしないように…安静に過ごすようにしていた。
たまーに気分転換で出かけたりはしていたけど。
そのおかげか、怪我の具合は大分良くて。ずーっと感じていた鈍い痛みも、今ではほとんどない。
火傷はそう簡単には治らないけど、再度医者に診てもらえば「快方に向かっている」とのことでした。
「じゃあ、そろそろ出発かなー」
「緋月ちゃんが大丈夫なら」
「もうバッチリ!心配をかけましたー」
「サクラちゃん!緋月ちゃん!皆さん!」
「「知世ちゃん!」」
「まだ旅立っていなかったようで安心しました…そろそろ、なんですのね?」
「ちょうど今、行こうかと話していた所だったんです」
「良かったですわ!お見送りを、絶対にしたかったんです」
知世ちゃんが来て、すぐにモコが次元移動の準備に入った。
魔法陣が現れ、背中に羽が生える。
名残惜しいけど…僕達の旅は、まだまだ終わらないから。叶えたいと強く思う願いの為に、進まなきゃいけないんだ。
だけど…この国で得たものや出会った人達のことは、きっと―――忘れない。
「知世ちゃん、また会えるよね」
「ええ。この国には次元を渡る設備はありませんが、我が社が必ず作ってみせますわ。だからきっと、またお会い出来ます」
「楽しかったよー」
「ありがとうございました」
「色々とありがとね、知世ちゃん。出会えて良かったって思う。本当に心から」
「私も緋月ちゃんに出会えて良かったですわ。プレゼントもとても嬉しかったです」
姫さんとファイくんと小狼くんと僕は、そのままモコに吸い込まれた。
残るは黒鋼くん1人だけ。
きっと彼も、彼女と言葉を交わすのだろう。…気にはなるけど、最初ほど嫌な気持ちにはならなくなったんだ。
そう思うのはきっと―――――
「…夢で、知世姫に会ったら伝えてくれ。必ず帰る、とな」
「はい」
―――シュルンッ
知世ちゃんのことが、大好きになったからだね。
「…こんな手紙が、書けるようになったのね」
ありがとう。進みます。大切な人達の為に―――
「心が生まれた。…私が望んだように、あの子が望んだように。
それすらも―――貴方は摘み取ってしまうの?」
ねぇ…?飛王