悪魔、来たれり
side:サクラ
緋月ちゃんが倒れて、もう4日が経った。
あの日から皆で交代して看病しているんだけど、高熱は下がる気配がない。
どんなに冷やしても効果がなくて…その度に、緋月ちゃんを苦しめているのはただの風邪ではないことを思い知らされて、怖くなるの。
このまま熱が下がらなくて、緋月ちゃんが死んじゃうんじゃないかって。
ファイさんが聞いた、今この国で蔓延しつつある流行病。
皆の考えだと、恐らくそれに冒されているんだろうってことだけど…治療法がないんだ。誰一人、この病が治った人はいないということ。
どんなに調べても、どれだけ手を尽くしても…わたしの羽根と同じで、何も情報を得ることが出来ない。
ただ、時間だけが刻々と過ぎていくだけで。
「緋月、ちゃん…っ」
辛そうに浅い呼吸を繰り返す緋月ちゃんの手を、ギュッと握る。
顔は高熱があるからか真っ赤なのに、彼女の手は恐ろしく冷たい…まるで氷みたいに。
生きているはずなのに、体温もあるはずなのに、手の平も指先も全く温かさが残っていないの。
わたしの体温を分けるように、もっと強く握ってみても、どんなに長い時間握っていても…変わらない。最初と同じで、冷たいままだ。
―――コンコン…
「あ、はい…っ!」
「おれです。入っても構いませんか?」
「小狼くん?!うん、どうぞ!」
―――ガチャッ
「温かい飲み物を持ってきました。…緋月さんは、相変わらずですか?」
「…うん…熱も下がらないし、手は氷みたいに冷たいままなの。目も、覚ます気配がない」
「おれ達も治療法を探しているんですが、何も手掛かりがなくて…昔の文献にも載っていませんでした」
文献に載っていたのは、その流行病に冒されたものを待つのは『死』のみだと。
「じゃあ、この流行病は昔からあったってこと?!」
「どうやらそのようですよ。史実にあった、悪魔が関係している可能性も…高いようですね」
「確か、この国に巣食う悪魔…?」
彼が言うには、悪魔に魅入られた者も体中に蔓のような模様が浮き出るそうだ。
…そういえば緋月ちゃんと黒鋼さんも、そんなことを言っていた気がする。殺戮人形には蔓の模様がある、とか何とか。
それが本当のことならば、早くしないと緋月ちゃんも殺戮人形になってしまうということなの?!
「可能性がないわけではないと思います。それだけは…どんなことをしてでも、食い止めないと…っ!」
「うん。早く…治療方法を見つけなきゃ、緋月ちゃんがもっと苦しむことになっちゃうもの」
とても優しい緋月ちゃん。お姉さんのような人。
美人で、だけど笑顔は少女のように可愛いなって思ったの。髪もとても綺麗な黒髪で、あの魔女さんに似ているなって思ったこともあった。
料理も出来て、戦うことも出来て、そして強くて…我慢強い人。どんなことがあっても、弱音を吐いたり、涙を見せたりしないの。
大好きで、大好きで…わたしに出来ることなんて1つもないかもしれないけど、この笑顔を失いたくないって思ったんだよ。もっと色んな話をしたいの、一緒に笑い合いたいの。…そんなことが許される、楽しいだけの旅ではないのはわかっているけど。
だけど、わたしはもっと緋月ちゃんと一緒にいたいよ。
「……っ」
「緋月さん?」
「目が覚めた、のかな?」
「……いや、様子がおかしい…」
「…っく、ぅあ………っ!」
「緋月ちゃん?!どうしたの…っ苦しいの?!!」
緋月ちゃんが、突然シーツをギュッと握って…苦しみ出した。