森の塔
体が、重い…まだ熱も下がってないみたいね…
最初は胸元にあるだけだった蔓の模様も、今ではほぼ上半身を埋め尽くしている。
全身に広がるまで、あと3日くらいかしらね?
―――ガタンッ…
「ったぁ…!」
「緋月ちゃんっ?!」
「目が覚めたのね!」
「大丈夫ですか?!緋月さんっ」
重い体を引きずるようにリビングへ向かえば、躓いて転んでしまった。
あー…これは本当にマズイなぁ。上手く動かなくなってきてる。
単純に熱で体力を奪われているってわけじゃあ、ないわよね…これは。
「無理して起きてきてんじゃねぇよ…何してんだ、お前は」
「あはは…でも見つけたんだもん、姫さんの羽根。多少は無理しなきゃいけないでしょー…」
そう告げれば、小狼くんの表情が心配そうなものから、驚いた表情へと変わる。
この国に着いてもうどれくらい経ったのかわからない…なのに、羽根の情報は全く得られなくて。そこに僕が羽根を見つけた、と言えば…驚くのも当然だろう。
何の情報がない今、どんなに些細な情報でも知りたいわけだからね。
…ま、僕の得た情報は嘘でも、噂でもない…本当のことだけど。
「姫の羽根が…?」
「うん…確かにこの国にある。波動はどす黒くなってて、微かにしか感じないけど…でも、わかる」
「でもでもっモコナ、何にも感じないよ?!」
「今回ばかりは、モコにも感じることが出来ないと思う…だって、闇に堕ちる寸前だから」
史実にあった球体に覆われた、真っ黒な姫さんの羽根。
綺麗な色をしていた羽根があんな色になるってことは、何か良くないモノを集めているってことだと思う。
それを集めれば集めるほど、姫さんの羽根は輝きを失っていく。
元の輝きを失ったら、波動も変化するってこと。モコナが感じ取っていたのは、元々の羽根の波動だからね。
僕だってあの夢がなければ、羽根が完全に闇に堕ちてしまえば…感じ取れないと思う。今がギリギリってとこかなぁ…。
「羽根があるのはきっと、森の奥深くにあるっていう塔だと思う…」
「確かに森には誰も近寄らない塔があるという話ですが、見つからなかったんです」
「オレ達も探してみたんだけど、それらしき建物はなかったんだよ」
「大丈夫…羽根の波動を追っていけば、きっと見つかる……お願い、僕を連れて行って」
「緋月ちゃんっ何言って…!!!」
「そんな体で無理するのは、危険すぎる」
「それはわかってるけど……今、波動を感知できるのは僕だけなんだよ。今回だけは、無理…させて?」
皆が心配してくれてるのもよくわかってるし、体の状態がひどいのも自分が一番わかってる。
だけど―――モコが感じ取れていない以上、頑張りたいんだ。
姫さんの羽根を、取り戻したい。これ以上、汚させたくないんだよ。彼女の大切な記憶のカケラを。
そう、思ったから…多少の無理は通させてほしいの。僕だって役に立ちたいから。
それにね?姫さんの羽根を取り戻したら、僕の方も解決するような気がするんだよ。何となくでしか、ないんだけどさ。
「……わかった」
「黒鋼さんっ?!」
「コイツは一度言い出したら、俺達が何言ったって聞きやしねぇだろ。それに、羽根の場所がわかるのも今は緋月だけだ」
「確かに、ね。黒りんの言うことはもっともかもー」
「ファイさんまで…っ」
「彼女がいないと羽根が探せないのは事実だからね、モコナはわからないって言ってるし。ただし!今回は大人しくオレ達に護られること」
「連れては行く。だが、それ以上の無茶は許さねぇぞ」
僕がするのは羽根がある場所への案内だけ、ということらしい。羽根を取り戻すのは、皆に任せろってことね…。
ちょっと不服ではあるけれど、こんな状態で戦闘になっても足手まといになるだけだものね。
2人の言葉に、僕は素直に頷くことにした。