VS双子の悪魔
「お兄ちゃん達が賭けるのは、緋月お姉ちゃんの命だよ―――」
にっこりと、邪念のない無邪気な笑顔でそう言った双子の悪魔。笑顔だけ見れば、どこにでもいる子供と変わらない…むしろ、可愛らしいなと思うだろう。
でも、言っていることは残酷極まりなくて。子供の言動だとは思えないくらいだ。
その証拠に、此処にいる全員が目を見開いてるもの。
「緋月ちゃんの、命…?」
「羽根を取り返したければ、緋月ちゃんの命を賭けろって?」
「クスクス…そうだよ。大丈夫、お兄ちゃん達が勝てばいいんだもん」
「クスクス…お兄ちゃん達が勝てば、羽根も緋月お姉ちゃんも手に入る。でも負けちゃったら…」
「「お姉ちゃんは僕達のモノだよ?」」
「そんな……っ!」
「ふざけたこと言いやがって…」
「…そのゲーム、受けなかったらどうなるの?」
「「羽根も緋月お姉ちゃんも、そしてお兄ちゃん達も…皆 壊シテアゲル」」
「「「「「「!!!」」」」」」
ニタリ、と笑った悪魔。
その笑顔を見た瞬間、背中を冷たいものが滑り落ちた気がした。ゾクリと言いようのない寒気が走る。
本能が警鐘を鳴らしているかのように、心臓が早鐘を打って。体の、五感の全てが…この2人は危険だと訴える。
「ふ…ふふふ…っ」
「…緋月ちゃん?」
「上等、じゃん……そのゲーム、受けて立ってやる…」
「緋月さんっ!!!」
「自分が何言ってるのか、わかってる…?!賭けられるのは君自身の命なんだよ!」
「わかって、るよ…?ちゃんと…わかってる」
「何か考えがあるのか」
黒鋼くんの厳しい目が僕を見つめる。いつもは直視出来ない、彼の真っ直ぐすぎる瞳。
でも―――今日は…いや、今だけは逸らすわけにはいかないんだ。それが僕の覚悟、だから。
命を捨てようとか、そんなことを考えてるわけじゃない。ただ、自信があるだけ。
僕を殺していいのは、殺せるのは…"キミ"だけ。この双子の悪魔には僕の命を、奪わせない。
―――それに…
「負けるわけ、ないでしょ…?キミ達が」
「緋月、ちゃん…」
「重たいもの、背負わせちゃうかもだけどさ…護って、くれるんでしょ…?」
「…はい。必ず、護ります。緋月さんも、姫も」
「そんな風に頼りにされてたら、オレ達が怯むわけにもいかないねぇ?」
「ふん。…相手が何者だろうが、負けるわけねぇ」
「クスクス…じゃあ、決定だね」
「クスクス…決定だね」
「「ルールは簡単。…僕達の存在を消して、羽根を見つけられたらお兄ちゃん達の勝ち」」
双子の手の上にあった、羽根が入った球体は…一瞬で消えた。
波動を辿ろうにも、感覚が鈍っていてもう追うことが出来ない。…見つけられない。
体が動かない以上、そのくらいしか役に立てないのに…それすらもままならないなんて…!本当に、自分の愚かさに腹が立つ。
これじゃあ、ただの足手まといにしかならないじゃないか。
「早速、ゲームを始めようか」
「でもただ追いかけっこするだけじゃ、つまらないよね」
「「クスクス…だから、とっておきを見せてあげる」」
「お兄ちゃん達にとっても」
「お姉ちゃん達にとっても」
「「最高で、最上の悪夢を…見せてあげる」」
何のことか考える前に、体中を激痛が襲った。
今までの比でないくらいの痛みに、意識が遠くなる。
「緋月ちゃんっ!!!」
「ふ……っく…ぅあ―――!」
「ってめぇら…!」
「クスクス…その模様が全身に広がるまで、あと20分」
「それまでに僕達を倒せれば、侵食は止まる」
「それまでの模様も消える。…つまり」
「「緋月お姉ちゃんの命が、助かるってことだよ」」
さぁ、理不尽なゲームのスタートだ。