いつだって


「え?姐さん休み?」
「はい…ちょっと体調を崩しまして」

久しぶりに7人揃って事務所に顔を出したら、そこにいたのは万理さんとウチのマネージャー、あと事務員数名だけ。いるはずの姐さんの姿はなかった。
一瞬、現場に出てるのかと思ったけど姐さんはMEZZO"のマネージャーだしな…不思議に思ってマネージャーに聞いてみたら、まさかの病欠。アイツが体調崩すなんて珍しい。

「えっ縁さん風邪?大丈夫なの?」
「病院に行く、と言っていたので大丈夫です。すぐ治りますよ」
「そっか…でも1人だと心細いよね。ねぇ、お見舞いって、」
「ダメですよ、七瀬さん」
「まだ最後まで言ってない!」

1人で寝ていることの寂しさを誰よりも知っているリクは、姐さんのお見舞いに行きたくて仕方ないらしい。言い切る前にイチにピシャリと言われちまってるけどな。
でも俺もリクを行かせるのは反対だな…デビューしたての頃に比べれば体も丈夫になったけど、それでも用心するに越したことはない。…だけど見舞い…見舞いかぁ。
キーケースにつけてあるとある家の鍵の存在を思い出し、6人の話し声をBGMにしながら今日一日のスケジュールを思い出してみる。7人で歌番組の収録に行って、その後は映画の顔合わせだったっけか…遅くても夕方には終わるはずだし、行けなくはない。

「大和さんも、ダメですよ」

いつの間にか隣に来ていたらしいマネージャーが、ぼそりと呟いた。彼女の言葉は俺以外の奴には聞こえていないらしく、いまだワイワイと話している最中。

「ダメって、なーにが?」
「あの子の家の合鍵を大和さんが持っていることは知っています」

ギクリ、と肩が揺れた。あ、これバッチリバレちゃってるやつですわー。

「大和さんが心配する気持ちはわかりますが、マネージャーとしてそれを許すわけにはいきません」

アイドルの体調管理も、マネージャーの仕事ですから。
そう言い切った彼女の顔を見下ろせば、確かに凛とした表情のマネージャーがそこにいた。

「…うん」
「妹としては言ってあげてほしい気持ちもなくはないですが…」

マネージャーの言葉がピタリと止まる。どーしたんだ?と顔を覗き込めば、眉間にふっかーいシワを寄せて考え込んでいた。あーあー、そんなに眉間にシワ寄せたらダメだって。てか、なにをそんなに考え込んでるんだこの子は。

「やっぱり、まだ全部をお任せしてしまうのは悔しいので!看病は私が受け持ちます」

バッと上げた顔に浮かんでいたのは、勇ましい表情だった。あれだ、敵地に赴くような感じの。…俺、マネージャーに認めてもらえたつもりでいたけど…まさかの勘違いってやつ?
言いたいことを言い終えた彼女は、いやにすっきりした顔で6人の輪の中へ戻っていく。内心戸惑っている俺を1人、そこに残して。

- 5 -
prevbacknext
TOP