灰色と嫌悪


他の団員に挨拶をした後、あたし達はジョーカーさんにテント…所謂、裏を案内してもらうことになりました。
まず案内されたのは、あたし達が寝泊りするテント。裏方とか新人とか…"二軍"メンバーが住む所なんですって。基本、2〜3人が相部屋になるみたい。中を見させてもらったけど、造りは至ってシンプル。家具は、簡易の二段ベッドがあるくらいかしら。まぁ、移動サーカス団だしね。…コレ。主は生活していけるかなぁ。


「ほんで、あっちが食堂と食料庫。新人のうちはまかないも大事な仕事だから、おきばりやす」
「…あの一番奥のテントは?」
「うん?…あぁ、あれは救護室」


救護室をを抜けた先、最奥に並ぶテントは…メインキャストのプライベートテント。


「プライベート?」
「偉くなると個室がもらえるってこと。あ、それからアレは蛇使いのテントどすから、近づかん方が身の為どすえ。毒蛇がぎょうさん放し飼いされとるから、噛まれたら一発であの世行きどす。まーたスネークも蛇も人見知りどしてなー新人さんは特に気ィつけんと」


プライベートテントに、番犬ならぬ番蛇…ね。確かに普通の人なら通ることは出来ないでしょうけど…セバスなら、その蛇達をどうにかすることぐらい出来そうだわ。


「…そういえば、スマイルはその右目どないしはったん?」
「えっあ…これは事故で…」
「そらぁ、ちっこいのに災難やったなぁ」


主を見つめる、慈しみの瞳。そこに嘘は見当たらないけど…一体、何を考えているのかしら?
だけど、ジョーカーさんの右手は明らかに義手。さっき初めて近くでメインキャストの人達を見たけど、片足が義足に見えた人もいた。もしかしたら…このサーカス団にいる人は、"訳アリ"の人が多いのかもしれない。


「皆さんは私達のように巡行中に入団された方なんですか?」
「んー?ほとんどがそーやけど、一軍メンバーは皆地元が一緒やねん。幼馴染みってやつやな」
「幼馴染みですか」
「ああ。でもスネークだけはまだ新顔なんよ」
「え、そうなんですか?」
「あいつの蛇の扱いは一級品やったし、丁度蛇使いもいおへんどしたさかい。最短でメンバーにならはったってワケ」
「へえ…すごいんですね。そのスネーク…さん?」
「せや。お嬢はん達もきばりやー?」


ジョーカーさんによれば、一軍メンバーになると御膳も優先になるとのこと。弱肉強食の奪い合いに参加しなくてもいいし、個人テントももらうことが出来る。だから、皆切磋琢磨して一軍を目指しているそうな。
…でもそうか。一軍メンバーになれば、テント内を探るのは可能になるということか。


「さ、ここが訓練場どす」
「…わ、すごい」


最後に案内されたのは、新人が練習を重ねる訓練場。此処でたくさん練習をして、本公演デビューを目指すそうよ。でも本当にすごいなぁ。ジャグリングに、玉乗りに、空中ブランコに、ポール登り…あ、猛獣の檻や綱渡りもある。
キョロキョロと見回していると、嫌〜な気配を感じた。てか、姿も見つけちゃったんだけど…。


「ねぇ、セバ……じゃなかった、ブラック」
「ええ。気付いていますよ」


あ、やっぱり?まぁ、気がつかない方がおかしいよね。この気配は。


「まずは何でも基礎からどす。きっちり準備運動してから…」
「ジョーカー!そろそろ出番だよ!」
「はいな」


ジョーカーさんを呼びに来たのは、猛獣使いのビーストさん。それは別に何とも思わないんだけど…テントを出て行く時に、セバスを睨んでいたような気がするんだけど。
そういえば、紹介された時もビーストさんはセバスのこと歓迎してないように見えたよね。…コイツ、昨日何かしたな?あの人に。


「どうかしましたか?レディ」
「べっつにー。ある…じゃない、スマイル。準備運動の相手してください」
「ああ、いいぞ」
「先に背中押してあげます。座って下さいな」


何か面白くない。ものすごーーーく面白くないっ!
内心、ムキーッとなりながら主の背中を押す体制に入る。


「一軍メンバーのプライベートエリアの入り口が、毒蛇のテントとはな」
「番蛇、ってわけですねぇ。…てか、体かったいなぁスマイル」
「う、うるさい!とにかくプライベートエリアに入りたければ、一軍に上がるしかない…か。お前達なら毒蛇くらい何てことないだろう。子ども達がいるかどうか―――」
「「いませんよ」」
「え?」
「昨日の夜も、先程の案内でもこのサーカスからは、一切子どもの気配を感じませんでした」
「だからと言って、子どもの失踪と無関係という証拠もないけどねー」
「そうだ。隅々まで調べ上げるまでは引き上げられないぞ」
「そうですね。私達が気配を感知出来ない状態である可能性もありますし」


…縁起でもない発言だなぁ。あの方は、子ども達が無事に戻ることをお望みなんだけど。
そんなことを思いながら主を背中に乗せ、そのまま前のめりに。これで背中を伸ばすことが出来るからね。一旦、主を地面に下ろして…今度はあたしを主が持ち上げる番なんだけど…


「………っ!」
「…スマイル。無理しないで良いよー交代しましょう」


これじゃあたしのストレッチにならないし。


「あ、そうだ。ブラック、さっきの気配…」
「ああ。…そういえば、子どもの気配がないかわりに―――」
「オラー!!お前ら、チンタラストレッチしてんじゃねーぞ!」


目の前にダガーさんが現れた。あれ?今、一軍メンバーは公演中じゃなかったかしら。それを疑問に思ったのはあたしだけではなかったらしく、他の人が彼に尋ねていた。どうやら今日はトップバッターで、もう終わったんだって。それであたし達の練習を見に来てくれたみたいね。…面倒見良いのかしら?この人。
ま、ひとまずストレッチは終了かな。背中に乗ったままだった主を下ろして、外していた帽子を被せてあげる。…うん。やっぱり、すっごく可愛い!!!


「お前らはまず、演目決めねーとな。希望は?」
「僕は綱渡りのように、体を使う演目以外がいいんですが…切実に」
「なははー。お前、ひ弱そうだもんねー」


まぁ、否定はしないけど…一番の理由としては、テストの時のことだろうなぁ。セバスの手助け、相当痛かったみたいだから。


「んじゃスマイルにはオレがみっちりナイフ投げを教えてやるとして、ブラックとローズは?」
「あたしは綱渡りか、空中ブランコが良いです。高い所、楽しかったし」
「特に希望はありませんが」
「ブラックも運動神経いいもんなー。見ててやるから出来そーなモンやってみろよ」
「はい。レディ、少し手伝ってくれますか?」
「ん。リョーカイ」


セバスに頼まれ、(やったことないけど)空中ブランコのお手伝い。初めてやったけど、コレも結構楽しいな。やっぱり!で、そのままジャグリング・ポール登り・火の輪くぐり・ハイワイヤー・トランポリン……最後に剣飲もうとしてたけど、ダガーさんに止められました。うん。ここまでやられたら、そりゃあ止めますよね。
当然の如く、他の方達に囲まれるセバス。…まぁ、すごかったものね。


「おい!調子に乗りすぎだ!もう少し新人らしく…」
「まいったねコリャ。またもや大型新人の登場かよ、負けてらんねーな」
「ほら、もう目を付けられ…ん?」
「今…また、って言いました?」
「入って来たばっかでスゲー奴が一人いんだよ。ホラあそこ」


ダガーさんが指差した先。綱渡りの練習をしている、スーツをかっちり着込んでいる男性。
ああ、やっぱりさっき感じた気配は間違いではなかったのね。


「なんか元公務員だかで、妙に真面目な奴でさぁ。おーい、ちょっと降りて来いよ!スーツ!」
「(スーツ?!…絶対、見た目だけで決められたなコレ)」
「あ、あいつは…」
「嫌な気配がすると思えば、やはり貴方達ですか。まったく」


―――シャキーーーーンッ

死神の鎌がセバスと主の間に突き刺さり、あたしとセバスは主を庇うように前に立つ。主に危害を加えることはないでしょうけど…でも警戒しておくに越したことはないでしょう?
だってこの死神は、悪魔(あたし達)を目の敵にしているからね。まぁ、あたしだって死神は嫌いだし、関わりたくないから別にどうでも良いんだけど。


「もう二度と会うことはないと思っていましたが…まったく。今度は一体、何を喰い漁りに来たんです?悪魔風情共が!」


…コイツ、堂々と悪魔とか言いやがったな?一瞬にして、周りの空気がビシッと固まったのわかってるのかしら。ダガーさんも、他の人達もどういうこと?ってざわつき始めちゃってるし…一体、どう責任取るつもりなんでしょうねぇ?


「ただでさえ死神不足のこの御時世に、悪魔にこうも現れられては今日も定時に上がれないじゃないですか」
「死…神…お前…っ」
「い、いやこれはっ」


主もマズイ、と思ったのか…弁解しようとした時―――


「いーかげんにしろ、このデコ助!!お前、真顔で言うからギャグってわっかんねーよ!!」


そう言って、死神のおでこをペチンと叩いたダガーさん。…でも冗談なんかじゃないんですよねーこれが。確かに一般の人からしてみれば、悪魔とか死神なんて空想上のモノになるんだろうし、冗談に聞こえるんだろうけどね。
この死神、此処では"筋金入りのオカルトオタク"になってるみたい。ザマーミロ、だね。ちょっとスッキリ。


「紹介すんよ。今日入った新人でこっちのちっこいのがスマイル、でかいのがブラックで、キレイコちゃんがレディローズ。まぁ、ホープ同士仲良くやれよ!」
「害獣と仲良くなぞ、まっぴらごめんです」
「…言われなくても、こっちから願い下げ」
「心の声がだだ漏れですよ、レディ」
「そんなことより、何故こんな所に死神が…?」
「死神自ら潜入するとは珍しいんじゃないですかね」
「けれど、これで一つハッキリしましたね」


―――このサーカスには何かある!―――


「あいつを探ってみる価値はありそうだな。セバスチャン、クロード」
「こーら、何してんだスマイル!ブラックとローズに負けねーよーに練習練習!!」
「はっはい…」


ナイフ投げの極意を教えてやるぜー、なんて言われて…主はダガーさんに連れて行かれました。
大丈夫かなー…少し心配だなぁ。何だか気になるし、そっと様子見に行っちゃおうかしら。


「御意。…さあレディ、行きますよ」
「…それ、あたしも行かなきゃダメですか」
「坊ちゃんからの命令ですよ。貴女の大好きな、ね」


ぐぐぐ…っ!それを言われちゃうと、何も言い返せないのが悔しい!そしてものすっごく!腹立つ笑みを浮かべているのも、ムカついて仕方ないんですけど…っ!!!
でも確かにセバスの言う通り、あたしの大好きな主からの命。あたしは彼の駒で、剣で、盾だ。彼の役に立つことこそ、あたしの存在意義で…喜びなのも確か。だから主の為なら、何でもしてあげたいんだけれども!…正直、死神には関わりたくないのが本音なんです。……やるけどね!我慢してっ!


「頑張ったら、あとでご褒美にキスして差し上げましょう」
「………いらないやい」
「おや、残念」


だってそれ、絶対に貴方がしたいだけでしょうが。


「すみません。少々教えて頂きたいことがあるのですが」
「ねぇ?…せ・ん・ぱ・い?」
「私は貴方達に話すことは何もない」
「そう仰らず。…少し外へ」


おー…2人してどす黒いオーラ出してますねー。セバスが掴んだ死神の腕、何かミキミキ音いってるけど。…そのまま折ってしまえ。
そんなことを考えていたら、セバス達がテントの外に出て行くのが見えた。あ、ヤバイ。このままじゃ置いていかれる!死神と言葉を交わすのは、もんのすごーーーーーく嫌だけど!情報が何もない今は、アイツから何か聞き出すしかない。…どんな手を使おうとも、ね。


「―――まったく。ロンドン地区はただでさえ人員不足だというのに、回収課に1名欠員が出たせいで管理課の私が現場に駆り出されることになるとは。とんだ災難です」
「…で?そーんな忙しいアンタが、何でこんな場所に?」
「謹慎処分中のクズ派遣員の尻拭いですよ。特別手当もつかないのに、アレと同期というだけでドサ回りをさせられるとは思いませんでした」


謹慎処分中の死神…?あぁ、切り裂きジャックの時にマダムの傍にいた…あの赤髪の死神のことか。ずいぶんと規定違反のこと、してたみたいだからね。規律にうるさそうな死神協会なら、そのくらいの処分にしそう。
いっそのこと、もう二度と謹慎が解けなきゃいいのに。会いたくないもの。あんな変態死神。


「死神がわざわざ潜入調査に来ているということは、何か特別な事情でも?」
「魂に関する情報を悪魔と穢れた裏切り者に教えるわけがないでしょう。肉食獣の前に、兎を放り出す行為に等しい」
「あいにくながら、私は安物の魂には興味がありませんので」
「…あたしは魂など、興味ないから」
「餓えた悪魔共がよく言うものだ。本当は腹が減ってしょうがないくせに」


こればっかりは、死神の言う通りだと思う。セバスはあたしと違って、正真正銘の悪魔だ。魂が唯一の食料。だけど、出逢ってから一度もセバスは…食事をしていないはずだから。今の彼は、正に餓えた獣。本来ならば、もうとっくに限界を超えているんじゃないかしら?
…でもセバスが言うには、手当たり次第喰い散らかすような真似は飽きたんですって。それに今は首輪付き、だしねぇ。契約したってことは主以外の魂には、(一応)興味がないってこと。主の魂が高級品だということ。


「いいでしょう。一番の害悪が"仕事の前"に現れたんです。釘を刺しておくとしましょう。死神の仕事は配布された魂の回収リストに基づき、死亡予定者を審査すること。死神の鎌で一人一人の記憶…走馬灯をチェックし、死に値するかどうかを判断します。そんな我々の努力も知らず、つまみ喰いをする鴉が悪魔(貴方方)です。はっきり言いましょう。近日中にこの近辺で、大量の魂を審査します。今回は特別なケースですので、邪魔だけはご遠慮願います」


大量の魂を審査、ね。


「それはそれは…お一人では大変そうね?」
「大量の魂…」
「「悪魔(わたしたち)がお手伝いして差し上げましょうか?」」


妖艶に微笑み、瞳が紅く、妖しく光る。それにご立腹した死神の死神の鎌が、あたしの頬とセバスのシルクハットを掠っていく。
んー…けしかけたのはコッチだけど、傷を負わされるのは腹立つなぁ。それに―――セバスにまで、手を出したことも。


「サービス残業は許せない。邪魔するなら狩りますよ」
「その言葉…そっくりそのまま、アンタに返してあげるわ」

―――カチャ…ッ

「アリス」
「!……しまえばいいんでしょ」
「良い子ですね。…私達も好き好んで死神に関わりたいわけではありませんから。安物の魂には興味がありませんしね」


セバスにああ言われたらしまうしかないけど…この死神、今すぐ此処で切り刻んでやりたい。
あたしの機嫌は、今までで最上に最悪だ。ムスッとした顔で鎌をしまえば、セバスが優しく頭を撫でてくれる。……これだけで別にいいか、と思ってしまう辺りあたしは単純だ。頭撫でられるの好きだからだとは思うんだけどな。


「おい!」
「あ…どうしたんですか?スマイル」
「あの煩いナイフ投げが呼んでる」
「そんな高級品には思えませんが…まったく悪魔というのは…」
「セバスのみならず、主までバカにするの?本気で刻むわよ、アンタ」
「落ち着け、クロード。それよりお前。此処でその呼び方はよせ。サーカスの連中に不審がられたらどうしてくれる。さっきは冗談で済んだからいいようなものの…人間の中に溶け込めないとは、あの下品な死神以下だな」


そう言って嘲笑った主。確かにあの赤髪の変態死神は、上手く人の中に溶け込んでたな。それは評価すべきとこ、なのかもね。嫌だけど。大ッ嫌いだけど。主…ナイス発言っ!!!


「全くです。私共も貴方の仕事をお邪魔しませんので、こちらの仕事も邪魔しないで頂きましょうか」
「ありがたい。こちらとしては、貴方方など視界に入れたくもないので」
「それはこっちのセリフよ」
「お前はもう黙ってろ。丁度いい。では、今後一切お互いに干渉しないということで決まりだな」


よし。これで死神と関わらないで済む。いくら主の命であれど、これ以上話をしたり、関わり合いなど持ちたくないものね。
こっそりホッとしていたら、死神の口から出た一言に思わず吹き出した。


「では、スマイル」
「ぶっ!」
「…?何がおかしいのですか。まぁ、そんなことより…飼い犬共の手綱をしっかり握っているよう頼みます」
「満足に潜入も出来ないメガネに言われたくないな」
「メガネではありません。スーツです」


…そこ、強調するとこなのか?


「ふん。行くぞセバスチャン、クロード」
「は」
「はいはーい」


主、セバスと共に訓練場に戻るとそのまま練習をすることに。セバスは専門の種目が決まらず…とりあえず、バランスの特訓でもしていると言っていた。
あたしは結局、綱渡りに決まったらしい。死神と一緒なのは気に食わないけど、「決まりな!」と笑顔で言われてしまったら何も言えないじゃない?


「(…ま、他の一軍メンバーの下についた方が情報を得やすいか)」
「レディ」
「ブラック?どうしたの」
「…頬の傷、大丈夫ですか?」
「ああ…そんなこと?問題ないよ、すぐ塞がるし」


だって悪魔で死神だから。怪我の治りはそれなりに早いのよ。セバスと一緒でね。


「それなら良いのですが…まさか私のモノに傷を付けられるとは」
「別に貴方のせいじゃないでしょう?」


セバスの手が、あたしの頬に触れる直前…ジョーカーさんに呼ばれてしまった。ある意味、良いタイミングね。あたしにとっては悪いタイミングだけれど。それはセバスも同じだったらしく、珍しく感情を露にしていた。

―――続きはまた後で

耳元で囁けば、少しだけ…セバスの顔が赤くなったような気がした。


「さー、それではお待ちかね〜新人の部屋割り発表どすえ〜」
「はい…」
「…大丈夫?スマイル」


主にとってあの訓練はきつかったらしく、ぐったりしちゃってます。これは本当に調査が終わるまで、もたないかもしれないなぁ。
…毎日やっていれば、体は慣れていくと思うけどさ?そんなに丈夫ではない彼は、途中で疲れ果ててしまいそうだ。あまり悠長にはしてられないかなーコレは。


「厳正なるアミダクジの結果、スマイルは8番テント。ブラックは9番テント、ローズは12番テント」
「…あら」
「!!?セバ……ブラックとローズと僕は同室じゃないんですか?!」
「うん?そーやけど?」


全員同じ部屋、というのは性別を考えると無理だろうと踏んでいたけれど…まさかセバスと主さえも別になってしまうのは予想外ね。ただでさえ、死神がいて動き辛くなっているのに…見知らぬ人と同室だと更に仕事がし辛くなってしまう。…どうにかして動く方法を考えないと。
テントが発表され、次にルームメイトが発表された。主のルームメイトはソバカスのある、可愛らしい感じの少年。あたしのルームメイトは金髪のロングストレートの、美人さん。んで、セバスのルームメイトはー……


「スーツな!」
「んなッ?!!」
「ぶっ!…く、くくくく…っ!!!」
「ブラックとスマイルとローズは元から仲良しだし、新しい友達増やすチャンスじゃん♪」
「じゃーウチらは退散しよか」
「ちょ、あのっ」
「じゃーおやすみなー」


そのまま立ち去ってしまった、ジョーカーさんとダガーさん。
あまりの衝撃にあたし達はしばらくボー然。唯一、主のルームメイトの子とあたしのルームメイトの子がニコニコしている。…セバスと死神は、想像の通りです。どす黒いオーラ全開で、至近距離で睨み合ってますね。


「最悪です」
「同じ言葉をお返ししますよ」

「これからよろしくな、スマイル!」
「……はぁ…」

「よろしくお願いしますわ、ローズさん!」
「こちらこそよろしくお願いします」


うーーーーん…やっぱり、先行き不安かも。
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