太陽と月


三蔵様と悟空の関係は、まるで太陽と月のようだと思ったことがある。それを2人に伝えたら、三蔵様は思いっきり眉間にシワを寄せて不機嫌全開になって、悟空は大きな瞳を更に大きくさせてきょとんとした表情を浮かべていましたっけ。
…でも私、そんなにおかしなことを言った覚えはないのだけれど。


「でもどうしてそんなことを言ったんです?」
「初めて会った時から、ずっと思ってたんですよ。太陽と月みたい、って」


三蔵様の美しい金糸の髪。それから悟空の金の瞳。同じような色だ、と言われるかもしれませんけど、でもやっぱり違うんですよ、三蔵様の髪と悟空の瞳の色って。まぁ、そう思った理由はそれだけではないんですけれど。


「ほら、悟空の存在って太陽のようでしょう?辺りを明るく照らしてくれるような」
「ええ、そうですね」
「三蔵様って悟空の存在があるから、ご自身を保っていられてるような…そんな気が、したから」


あの御方に告げたらそんなわけがあるか、ってハリセンで叩かれてしまうと思うので言いませんけど、でもね?初めて会った時からそう、感じていたんです。きっと無意識なんでしょうけど、お互いに唯一無二の存在なんじゃないのかって。月は太陽の光があるから輝いてる、だから三蔵様が月で悟空が太陽なんですよ。
にっこり笑ってそう八戒くんに告げれば、貴方は時々面白いことを考えますねって笑われちゃった。あら?これはもしかしなくても、私、バカにされちゃってます?


「ふふっいえ、決してバカにはしていないんですけど…僕と悟浄だったら、絶対に考えつかないことだなぁって思っただけ」
「そう、ですか?」
「ええ。だって普段の2人を見ていれば、そんなロマンチックなこと思いつきませんよ」


香鈴は普段の2人を見ているのに、そういう風に言えたから…だから面白いこと考えるなぁって。
確かに八戒くんの言う通りだとは思います。普段の2人からはきっと想像もしないようなことだっていうのは、私も自覚はあるんですけど…あれですね、最初の印象ってきっと根強く残るんだと思います。最初にそう思って、そして付き合っていくうちにそんな関係性に見えるな、って思うようになったので。


「うーん、でもそう思っているのは私だけなんですねぇ」
「まあ、…女性特有の思考なのかもしれませんよ?それに僕達が香鈴のようにロマンチックなこと言っていたらサムいでしょう?」
「ええ?そうですかねぇ…私は男女関係ないと思うけどなぁ」


そう言いつつも、八戒くんや悟浄くんがさっき私が言ったようなことを言っていたら―――と考えてみたら、ちょっと鳥肌がたっちゃいました。うん、あの…サムいというか何というか…あれです、似合わないってやつなんだと思います。うん。
ロマンチックなことを言っている4人を想像してしまったものだから、くつくつと笑いが込み上げてしまった。急に黙ったかと思えば、これまた急に笑い始めた私を見てきっと八戒くんは訝しんでいるんだろうなぁ。
でも仕方ない、自分の想像が思いも寄らず面白すぎたんですもの。そのままお腹を抱えて笑っていると、ガチャリとドアが開く音がして3人―――悟浄くん、三蔵様、悟空の声が部屋の中に響き渡った。


「おかえりなさい、3人共」
「おー。此処の風呂、めっちゃ広くて気持ち良かったぜ。お前らも入って―――って、なーに笑い転げてんの?ウチのお姫様は」
「多分、想像しちゃったんだと思いますよ?」
「想像って何を?」
「僕達がロマンチックな言葉を吐いてる所を」


香鈴が言っていた、三蔵と悟空が太陽と月のようだーとか(ハート)
八戒くんの発したその言葉を合図に、部屋の空気―――というか、3人がビシッと固まったような気がした。笑いが徐々に治まってきたので顔を上げてみれば、案の定、固まったままの3人がその場に突っ立っていました。その表情がまた面白くて笑いを誘うんですけど、どうしたらいいのこれ…!


「くだらない上に気色悪い想像をするんじゃねぇよ、バカ女!!!」
「だ、だって…イケるかなーと思ったんですもん。それで想像してみたら、思っていた以上に似合わなくてっ…あはははっ!」
「香鈴がここまで爆笑してるの初めて見たかも」
「つーか、香ちゃんの想像力半端ねー」


はー…笑った、笑った。こんなに笑ったの久しぶりかもしれません。退屈しない旅ではありますけど、ここまで笑い転げた経験はなかったですからねぇ。
目尻に溜まった涙を拭いてフッと移した視線の先には、窓から差し込む街灯の光を背から受けている三蔵様の姿があった。

光に照らされた金糸の髪はキラキラと煌めいていて、静かに光を放つ彼は―――やっぱり月のようだ、とそう思ったんです。
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