俺目線
八戒と香鈴。あの2人は気がつくといつも一緒にいるような気が、する。悟浄と3人でいるとこもよく見るけど、でもやっぱり2人でいることの方が多いんだ。
side:悟空
ようやく辿り着いた町。野宿が長かったせいか、俺含む全員が割と不機嫌MAXな状況で2日程ゆっくりすることになったんだ。いつもなら1泊して翌日出発−、が常な俺達だけど、さすがの三蔵もそれは無理だって思ったんだろうなー。いつものように宿を取っていた八戒に三蔵が2泊で取れ、って言ってたもん。でもそっちのが俺も嬉しいし、のんびりできんのって有難いよな〜。
野宿続きだったから、ってことで今回は個室だって!でも結局俺達は誰かの部屋に集まって何かしてることが多いから、あんまり関係ないんだけどね。今だって三蔵の部屋に全員集合中だ。
「うあー!ベッド激久々!!」
「寝っ転がるなら自分の部屋に行け、バカ猿!」
―――スパァンッ!
「いってぇ!いいじゃんか、少しくらいー!!」
「ほら悟空、お茶淹れたからこっちにいらっしゃい。三蔵様もどうぞ?」
「ああ」
「あ、これ美味い」
「さっき女将さんがくれたんです。この町の名物だそうですよ」
八戒がお茶菓子に、と出してくれたのは温泉饅頭。そーいや、受付にいた宿屋のおばちゃんがこの町は温泉が有名なんだーとか、饅頭が美味しいんだーとか言ってたっけ。そんなことを思い出しながら饅頭を頬張る、あ、ほんとだこれうっめぇ!!
腹も減ってたから無我夢中で食ってたら、半分以上は俺の腹の中に消えたらしい。悟浄は文句言ってたけど、香鈴と八戒は仕方ないなぁって顔で笑ってた(三蔵は新聞読んでた)。
「あ、そうだ。八戒くん、買い出しは明日にしますか?」
「そうですねぇ…三蔵、明後日の出発は何時にします?」
「10時にはこの町を出る。買い出しは明日のうちに済ませておけ」
「わかりました。香鈴、明日の昼くらいに行きましょうか」
八戒の言葉に笑って頷く香鈴。その笑顔はすっげぇ綺麗で、すっげぇ可愛いなって思った。香鈴の笑顔なんていつも見てるはずなのに、どうしてかこの時はそう思ったんだ。何でだろう、って頭ン中に浮かんだ疑問に首を傾げているうちに、談笑している2人の間に悟浄が加わった。それでも変わらず笑みを浮かべてるんだけど、
…あ、悟浄に向ける笑顔と八戒に向ける笑顔―――ちょっとだけ、違う。
そうだ、悟浄に向けてる笑顔は俺がよく知ってる笑顔で、八戒に向けてた笑顔は俺が知らない…今までに一度も、見たことがない笑顔だったんだ。そっか、だからあんな風に思ったんだな俺。
八戒もいつもの笑顔より何倍も優しい感じに見える、あの笑顔も見たことない気がすんな〜。
「(なんか、いいな)」
トクベツって感じで、いいな。八戒と香鈴の関係って。
「おい悟空、温泉行くけどお前も行くか?」
「温泉?!行くっ!」
ボケッと考え事してたら、ひょっこり覗き込んできた悟浄に温泉に誘われた。温泉なんて滅多に入ったことねぇし、何より野宿の間は水浴びがいいとこだったからすっげー嬉しい!!カバンの中から着替えを引っ張り出して、いつの間にか部屋を出ていた4人の背中を追いかけた。
一番前を歩くのは三蔵。その後ろを八戒と香鈴が何か話しながら歩いてて、最後尾を歩くのは悟浄と俺。
これもいつものことだ。…あ、そっか!だから八戒達がいっつも一緒にいるような気がしてたんだ!!いつだって町を歩く時は、俺の前をこの2人が歩いてるから。
「…なぁ、悟浄ー」
「あ?何よ、小猿ちゃん」
「猿言うな!!…あの、さ…八戒と香鈴って、そういう仲?」
我ながら言葉が足りなさすぎるとは思った。でも恋とか愛とか、そういうのがよくわかんねぇ俺にとっては頑張った方だと思う。ただこれだけのはずなのに、顔は有り得ないくらいにあっちぃし、心臓はバクバクいってる。
俺の言葉を聞いた悟浄は煙草を咥えながら、んー、と声を出しただけ。そうだ、とも、違う、とも口にはしない。どっちかっつーと、悟浄もよくわかってねぇような感じ?いつだってナンパしてるし、2人の一番近くにいるのはコイツだと思ってたから、知ってるものだと思ってたけど…そうじゃねぇんだな。ちょっと意外かも。
「雰囲気だけはいっちょまえに甘いんだけどなぁ…アイツら」
「え?」
「お互いに好いてるのは確かだと思うぜ?…けど、アイツら似た者同士だかんなぁ」
くつくつと笑ってる悟浄の顔には呆れが見えたけど、でもどこか楽しそうに、そして愛おしそうに2人の背中を見つめてる。
「悟浄ってさ、八戒と香鈴のこと大好きだよな」
「香ちゃんのことはそりゃーもちろん大好きだけどな、…なぁんで八戒まで」
「ちげぇの?」
「………ヒ・ミ・ツ」
「うわ、うっぜー」
「―――…ま、でも2人揃って幸せだって笑ってくれりゃあいいとは思ってんぜ?」
珍しく穏やかな口調でそう言ったかと思えば、次の瞬間には「ほら、早くしねーと置いてかれんぞ!」って背中を思いっきり叩かれた。
めちゃくちゃいってぇけど、でも…悟浄が呟いた言葉には俺も賛成!八戒も香鈴も大好きだから、だから2人がずーっと一緒にいて、ずーっと笑ってくれたらきっと俺も一緒に幸せだ!って笑えるから。
「八戒っ香鈴っ!」
―――ガバッ!
「わっ?!」
「び、びっくりした…!どうしたの、悟空」
「へへっなーんでもない!抱きつきたくなっただけだ!!」
「ふふっ可愛いなぁ、悟空は」
「コケないように気を付けてくださいよ?」
「うん!」