わたしはわたし


「ドッペルゲンガーって知ってます?」
「サイレンとかがファンファンってなる…」
「…それはドップラー効果だ」
「アレだろ?自分にクリソツな奴が
この世に3人いるってゆー」
「あ、ソックリなその人に会うと
死んじゃうってやつですよね?」
「へー、どっちが?」
「そりゃお前………
あれ、香ちゃん、どっちが死ぬんだ?」
「ええっと、」
「…ふん、下らねぇ」






―――ガシャァンッ!

部屋の中では動き辛くて窓を突き破って外に出てきたものの、やり辛いことには変わりない。場所が狭いとか、物理的な問題じゃなくって…戦闘パターンとか力とか、ほぼ互角なんじゃないかってくらいに強くてすっごくやり辛いんです!負けるなんて死んでも嫌ですけど、でもすっごくやり辛いー!!ああもう、どうするのが一番早いんだろうか…!
ギリギリと鍔迫り合いをしていると、隣の部屋にいたらしい三蔵様もさっきの私と同じように窓を突き破って外に出てきました。今の所は怪我とかなさそうですけれど、苦戦しているのは間違いじゃなさそう。三蔵様でもやっぱり、苦戦するんだ。

3人は無事だろうか。やられているとは思わないけど、今回の相手は少し特殊だからそう簡単に倒せているとも思えない。心配だけど、…でも私は今、此処から動けるような状態じゃあない。どうか無事でありますように、と胸中で祈っていると、遠くから三蔵様と私の名前を呼ぶ悟空の声が聞こえてきた。
その声に偽物が反応を示した隙にグッと更に力を込めて押しやり―――刀を、弾き飛ばした。


「オイ、これは一体どういう…」
「ぅわお。」
「うわ、ホントだ!三蔵と香鈴も2人いる!!」


いやいやいや…!何でゾロゾロと引き連れて戻ってきちゃったんですか?!ただでさえこっちも面倒な状況になっているのに、これ以上厄介の種を持ってこなくたっていいでしょうが!どうして倒してこなかったのか、と疑問に思ったけども、悟浄くんの楽しそうな表情を見てなんとなーく事情を、というか理由を理解した。

…この人達全員、三蔵様の偽物をブッ飛ばしてみてぇとか思って、敵をそのままに来たってことなんですね。

そりゃあ放っておかれたら、あっちも追いかけてくるってもんですよね…。
うーん、まぁ三蔵様に対して何か思う所があるのは否定しませんが、この状況を作り出しちゃったことには感心できない。…だけど、


「(服が少し違うけど、…でもやっぱり、八戒くんは八戒くんだよね)」


違うとわかっていてもドキドキしちゃうのは、惚れた弱みってやつなんでしょうか。敵相手に、ましてや式神にドキドキしてどうすんだって話ですが。


「香鈴っ避けてください!!」

―――ヒュッ、

「―――ぅわあ?!」


ボケーッとしてしまったのが災いしたのか、偽物悟浄くんの錫杖が飛んできたことに全く気がつきませんでした!八戒くんが叫んでくれなければ、私は今頃バラッバラに切り刻まれていた所です。
それにしても、やっぱりこの敵は厄介だ。三蔵様の銃とか、悟空の馬鹿力とか、悟浄くんの錫杖とか、八戒くんの気功砲とか、卑怯で反則なものがたーくさんあるんですもの。攻撃を躱しながらボソッと言うと―――


―――ザシュッ!
―――ガゥンッガゥンッ

「そう言う香ちゃんの銃と刀の両方使いも、激反則だっつーの!!」
「あー…やっぱり?」
「もしかしたら僕らを仲違いさせる作戦かもしれませんね」
「そこまで考えてねーだろ多分」
「というか、そんな作戦が私達に通用するとも思えません」


ま、そこは首謀者に聞いてみるのが一番よろしいかもしれませんね。三蔵様が出て来い、と声を荒げれば、建物の影から1人の妖怪が顔を出した。そしてこの偽物三蔵一行はこの妖怪の式神、だそうです。そんな所だろうな、と思っていましたけど。
ここ数ヶ月、私達を追い続けて全てのデータを収集し、昨日、ついに完成した最高傑作らしいです。力・技・スピード・攻撃パターンのどれもが本物―――私達と互角。少なくとも相討ちは免れまい、と声高らかに宣言してらっしゃいますが…そう、そういうことでしたら、問題ありませんね。

―――バキャァ!
―――ドッ
―――ザシュ!!
―――ガゥンッ
―――ドンッ!

それぞれの攻撃が、それぞれの偽物を打ち消した。


「そんなバカな…?!負けるわけがない…!これまでの戦闘パターンを完璧にコピーしたはず―――」
「それがどうした」
「はー、スッキリした!…貴方、今までのデータを完璧にって言ってましたけど、それって」
「所詮は、昨日の俺だろ?」


さっきまでは確かに苦戦していたんですけど、からくりを聞いたらそれならどうにかできるだろう、と思ったんです。妖怪は屁理屈だーって言ってますけど、ようは気持ちの問題だと思うんですよ。何でも、ね。





「あー面白かったぁ」
「そうかあ?」
「ただ面倒で、悪趣味だっただけじゃない」
「ま、ネタとしてはありきたりでしたよね」


あの妖怪をボッコボコにした後はジープに乗って、次の町へ向けて走行中。悟空は面白かった、と笑ってるけど、面白くも何ともなかったですよ…本当に面倒な敵だったなぁ。
でもそっか、ずーっと何か視線を感じるなぁって思ってたんだけど、さっきの妖怪がその視線の正体だったんだ。だけど、三蔵様は歯切れの悪い返事を返してきました。視線の正体が間違ってる、とでも言いたげだけど…間違っては、いないわよね?あの妖怪だって私達のことをつけていたわけですから。

それとも―――他に私達を見ている人物がいるかもしれない、ってこと?
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