6月18日
珍しい名前が液晶に現われたので、つい通知をタップした。
『何時に終わる?』
短いメッセージは、間違いなくシュウからのものだ。
オレから連絡することこそあるが、日ごろシュウが連絡を寄こすことなど滅多にない。どういうことだと訝しんでいると、既読のまま返信がないことに焦れたのか、さらに追加でコメントが届いた。
『外?』
意図が読めない。
つい首を傾けたまま、とりあえず何かしら返信しなければ、と文字を打つ。
『会社にいる。あと30分くらいで出る』
時刻は21時頃。早いとは言えないが、特別遅いというほどでもない。
シュウの既読はすぐについた。
『10分』
「……????」
『正面にいる』
「……!?!?」
いるのか? 何で知ってるんだ?
ひゅっと喉が鳴るくらい驚いて、危うく携帯端末を取り落とすところだった。慌てて、書きかけていたメールを1通仕上げる。あと2通ほど返信しようと思っていたのだが、それは帰ってからでもいい。
ノートパソコンを閉じて立ち上がる。
「お疲れ様です!」
「おつかれさまでーす」
まだ残っている同僚が軽く手を挙げた。駆け足にならないギリギリの速さで、デスクの間をすり抜けた。
「……り、リアルにいやがる……」
「あれ」
シュウは正面玄関の植え込み近くに立っていた。
信じがたくて思わず駆け寄る。とうとう横顔の輪郭も獣耳の形もすっかりわかる距離まで近づくと、それは紛れもなくシュウだった。こんな容姿の男が、そうそう二人も三人もいるわけがない。
顔を上げると、当たり前のように緑色の目をしている。
「早いな」
「あー……持ち帰ってきた」
「ふーん?」
唇の端を持ち上げてちょっと笑う。からかうような、いけ好かない笑い方だが、きっと〈シュウ☆ゾー〉はしない顔だな、とも思った。
「そんなに会いたかった?」
「……言ってろ」
どう答えるのが正解なのか、わからない。肯定する気にはなれないが、否定するのも嘘になる気がする。もやもやとした気持ちのまま肩をぶつけると、シュウは珍しく、子どもっぽい笑い声を立てた。