6月19日
夜明け前に目が覚めた。
「あっつ……」
直前まで見ていた夢が視界に残って、ゆるゆると追い出されていく。見慣れた暗い天井は、まだ夜が深いことを意味していた。
暑い、と思って目が覚めたのに、頬を撫でていく風は湿気を含んでひんやりと涼しい。追いつかない思考を手繰り寄せる前に、懐からううんと不明瞭な声が聞こえた。
「は?」
ぎく、と心臓が脈打つ。咄嗟に後ろに下がると、勢い余って畳の上にはみ出した。布団の上に取り残された塊が、タオルケットの下でもぞもぞと動く。
「……?」
にゅ、と白い手が出てきて、薄い敷布団を覚束なく叩いた。何かを探すような素振りだったが、やがて諦めたように投げ出して、のそりと反対側へ寝返りを打つ。
「……っくしゅ」
小さいくしゃみだった。そこでようやく、夜明け前の涼しさに思い至る。
寝る前にはぬるいくらいだった扇風機の風が、いまのシュウには肌寒いのかもしれない。
「ッち、驚かせやがって」
要するに、暖をとる手段にされたわけだ。当然、抱き着かれたこっちは暑い。だいたい、シュウの体温が低いだけで、オレはまだ寝苦しいくらいだった。首の後ろに、薄く汗が溜まっているのを感じる。
「クソ……」
網戸にした窓からは、湿った風が流れ込んできていた。多分、雨が降ったのだろう。それでいっそう気温が下がったのかもしれない。日が昇れば、蒸し暑い一日になって、きっと寝不足は堪える。
わかっているのに、上がりきった体温がどうしても下がらない。
「――はあ」
諦めて立ち上がった。ついでに扇風機の向きを変えて、シュウから風を遠ざける。
どうせ眠れないなら、せめてシャワーでも浴びてさっぱりしたかった。紺色を帯びはじめた空の端で、まだ月は明るい。