6月21日


 起きたら、シュウの頭が腹辺りにあった。
 朝方の涼しさと、日が出てからの蒸し暑さで、中途半端なことになったのだろう。腹にかかる呼吸が気にならないわけではないが、いい加減、3日も続くと慣れてくる。

「シュウ」
「んー……」
「……ったく」

 亜麻色の頭をぐしゃぐしゃとかき回す。見れば、タオルケットは客用の布団に置き去りになって、オレが腹にかけていたはずのバスタオルがシュウの足元に絡まっていた。意外と寝相が悪い。

「起きろ。熱中症になられちゃ困る」

 獣耳を引っ張ると、むずがるように脛を蹴られた。諦めて先に寝床を抜け出す。

「……いい天気だ」

 薄いカーテンを引き開けた。午前の光がいっぱいに差して、シュウがまた小さく唸る。

「ははっ」

 かわいい。

「…………」
「……ロム、まぶしい」
「あ、ああ……いや、起きろ! ほら、トースト焼いてやるから」
「パンケーキ」
「粉ねえよ」
「ある。買ってきた」
「あ?」

 指差した先には、薄力粉だの片栗粉だのを入れているストッカーがある。半信半疑で近づいて引き出してみると、確かにおもちゃみたいなパッケージのホットケーキミックスが入っていた。

「……あー」

 暑いな、と思う。
 でも、脳みそはもう冷蔵庫の中身を辿り始めていた。牛乳はある。卵もある。バターも、あったような気がする。蜂蜜やメープルシロップはない。いや、貰い物のジャムがあったか?

「わかったよ。食ったら買い物行くぞ」
「どこに?」
「あ、コーヒー淹れてくれ」
「……いいけど。どこに?」

 ようやくシュウが身体を起こした。くああ、と大きくあくびをして、獣耳を数度震わせる。

「シーツ買い換えるんだよ。そういや、夏物にしてなかった」
「ああ……ついでに、布団も買ったら?」
「煎餅布団で悪かったな」
「いや、狭いから」
「……コーヒー淹れろ」

 聞き流して、冷蔵庫の扉を開けた。
 二段目の真ん中に、見知らぬ蜂蜜のボトルが居座っていた。