6月22日
夕方から少し涼しくなって、日が沈む頃にはちょうどいい夜風が吹きこんできた。ずっとこのくらいの気温ならいいのだが、夏至を迎えたとはいえまだ夏の盛りには遠く、今年も酷暑だろうとぼんやり諦めている。
今日は歯車がかみ合うようにいろいろなことが上手くいって、夕飯がずいぶん早く済んだ。いつもよりのんびりとシャワーを浴びて、涼しい風に吹かれていると、何があるわけでもないのに、妙に浮ついた気分になる。
「これ何?」
シャワールームから出てきたシュウが、ちゃぶ台の右手側に腰を下ろして尋ねた。旧型のテレビ画面には石畳の街角が映っている。
「ロードショー。まだ始まって5分くらいだぜ」
「ふうん」
流し見していたので、生憎タイトルは見逃した。走っている車の形を見るに、だいぶ昔の映画だろう。
「チャンネル替えてもいいけど」
「いや」
意外なことに、シュウは真面目に映画を見るつもりらしかった。濡れた髪を拭く手もそこそこに、じっと画面を注視している。
「……麦茶飲むか?」
「うん」
立ち上がって二人分の麦茶を注ぎ、ついでに空になった冷水筒を洗って、新しい麦茶を仕込んだ。
大した時間でもなかったが、戻ってみると映画も大して進んでいないようだった。時代がかった衣装の男女が何やら込み入った会話をしている。女のほうは気の強そうな美女で、男のほうは渋みのある中年に見えた。
「恋愛映画か? これ」
「さあ」
「すげー帽子だな」
「流行ってたんだろう」
時々茶々を入れながら、状況を把握できないまま画面を眺める。やがて場面が変わり、愛嬌のある男が出てきたところで、シュウが「あ」と声を上げた。
「探偵モノか」
その言葉を肯定するように、もう一人現れた男が、オレでさえ知っている名探偵の名前を呼んだ。それでようやく、画面の中で繰り広げられるシーンの意味が明確になった。
「へえ。お前、読んだことあるか?」
「まあ、何冊か……お前はなさそうだな」
「うるせえ。オレは怪盗派なんだよ。金持ちから盗んで、弱きを助ける……」
「犯罪者だな」
「ロマンのわかんねーやつだな!」
映画はほどほどの長さで、思ったより面白かった。わかりにくいシーンに差し掛かると、シュウが解説してくれたせいもある。探偵が言い当てた犯人の動機と、その後の犯人の豹変ぶりについては、いまひとつ腑に落ちないままに終わったが。
「結局、なんで隠さなきゃいけなかったんだ? 言っちまえばよかっただろ。挙句に恋敵まで殺して……」
「お前なら、言う?」
「……言えなくても、殺しはしねえな。墓まで持ってくほうがマシだ」
「まあ、お前はそうか」
「何だよ」
「いいや。……でも、彼女は墓になんか持っていきたくなかったんだろう」
シュウは、どこか棘を含むような調子で、ふんと小さく鼻で笑った。
「許せなかったから、殺した。それだけだよ。彼女は、いわば完璧な自分のまま、墓に入りたかったんだ」