6月27日


「なあ、それやっていいか」
「……?」

 シュウは手を止めて、答える代わりに首を傾げた。
 右手で握っているのは、尻尾用のラバーブラシだ。オレが使っているものだから、毛足の長いシュウにとってはそれほど使いやすい代物でもないだろう。いつもどこかおざなりにブラッシングしているように見えて、ずっと気にかかっていた。

「ブラシだよ。ほら、貸せ」
「……はい」
「で、あっち向け。尻尾をこっちに……」
「!」

 毛先に手を置いた瞬間、ぶわわ、と尻尾の毛が膨らんだ。
 そりゃもう、見事に。逆立ったというほうがいいかもしれない。

「えっ」
「…………俺にやるの」

 お前が使うのかと思った、とぽつりと続けた。なるほど、それで妙な顔をしていたのか。

「いや、お前がやってるときに取りあげねえよ。終わってから使うわ」
「そう……」

 膨らんだ尾から空気がゆるゆると抜けて、床に広がる。きれいなミルクティー色の長い毛と、柔らかい白い毛が重なって、手触りはふんわりと柔らかい。
 毛先のほうから、少しずつブラシを入れる。

「……楽しい?」
「そーだな、割と」
「ふうん」
「痛かったら言えよ」
「うん」

 さらさら、ふわふわ。場所によっても感触は変わる。梳かす前にひと撫でして、梳かし終わってからもう一度撫でると、整った毛流れが手に心地よかった。ときどき溜まった抜け毛をまとめながら、ゆっくりと同じ作業を繰り返していく。

「ねむ……」
「寝てもいいぜ」
「んー……」

 シュウは、くたりとちゃぶ台に頬を預けた。珍しく丸まった背中に、つい低く笑う。言葉通り、いまにも寝落ちしそうに見える。

「ロムのは」
「うん?」
「毛が柔らかいだろ、短くて」
「まあ、お前よりはな」
「気持ちいいよね、触ってると」
「ンな触らせたことあったか?」
「……いま触らせてよ」

 誤魔化された気がした。しかし、目くじらを立てるほどのことでもないように思って、尾の先でするりとシュウの脚を撫でてやった。

「ふふ」

 白い指が尾の先を捕まえる。少しだけくすぐったい。