6月28日


「出かけねーか」
「いいよ」

 あまりにあっさりと了承されて拍子抜けした。説得するために用意していた言葉が行き先を失って、つい手持ち無沙汰に頭を掻く。

「あー、ええと……泊まりなんだけど」
「うん」
「片道、二時間くらい」
「うん」
「これから出かけて、帰ってくるのは明日の夕方」
「うん、いいよ」

 とうとう、シュウは堪えきれないように笑い出した。

「なに怖気付いてるんだ」
「うるせえ。もうちょい渋られると思ったんだよ」
「あれ、説得する気だったの」
「そりゃ……」
「なんだ。じゃあ一回断ればよかった」
「やめろ! ……OKなんだろ。よかったぜ、お前に口で勝てる気はしない」
「ふふ」

 機嫌よく緑の目を細める。尻尾も、どこか楽しげに揺れていた。どうやら本当にOKらしいと知って、ほっと肩の力が抜ける。

「じゃ、早速出ようぜ」
「荷物は?」
「1泊だからな、大して要らねえよ。着替えと財布ぐらいか」
「わかった」
「……つーかお前、カバン」
「ない」
「…………一緒に入れてやる」
「うん」

 肩に、こつりとシュウの頭が乗った。
 ぱしりと背中を叩かれる。豊かな尾の毛先がオレの尾にかかって、少しくすぐったい。

「……行き先」
「うん」
「海と山で迷ったんだけどな、……今の時期だと、山のが取りやすくて」
「へえ」
「温泉がある。あと、夜は星が綺麗らしい」
「いいな」
「……いいか?」
「うん」
「……オレもそう思う」