6月8日


 こいつ、もしかしてリアルに一か月居座る気か?

 昼飯の素麺を啜りながらふと、ちゃぶ台の向かいに座るシュウの顔をまじまじ眺めてしまった。昼の日差しに金髪が眩しい。貸してやったTシャツはぶかぶかしている。シュウは具も何もない素麺を大人しく食べていて、似合わねえなあ、と思った。何もかも、ちぐはぐだった。

「なあ」
「ん?」
「休暇ってマジか?」
「うん」
「何でウチに来たんだ」
「思いついたから」
「他にあるだろ、ほら……あー、ワイハハとか」
「何かあったときは対応するから、MIDICITY内がいい」
「そりゃそうか」
「というか、いま聞く?」

 見ると、シュウはちょっと笑っていた。呆れたような、小馬鹿にしたような、久しぶりに見る表情だった。

「普通、最初に確認するだろ」
「お前に普通とか言われたくねえわ」
「で、追い出すの」
「人聞き悪ィな。居たきゃ勝手にしろよ」
「ふーん」
「あ。……ちょっと待て」

 ちょうどザルの上の素麺がなくなったので、箸を置いて立ち上がる。シュウはまだつるつると麺を啜りながら、やたらとでかい目をきょろりと上向かせた。
 探し物は、それほど時間もかからず見つかった。

「ほら、貸してやる」
「何?」
「カギだよ。オレが留守のとき、外に出られねえの不便だろ」
「うわ」
「失くすなよ。お前財布とか持ってんのか?」

 期待はしていなかったが、案の定、シュウは首を左右に振った。この三日で見かけたコイツの私物といえば、携帯端末くらいのものだ。

「お前なあ……」

 仕方がないので、ペットボトルのおまけか何かでもらったストラップをカギにつけ、たぶん同じような経緯で手に入れたのだろう巾着袋にしまった。
 そのまま、ぽんと放り投げる。

「おら、持ってろ」
「…………」

 安っぽい巾着袋は放物線を描いて、危なげなくシュウの手に収まった。ナイスピッチング。

「……あのさあ」
「文句言うなよ、ダセェとか」

 シュウの口は奇妙にへの字に曲がった。言うつもりだったんだろう。コイツはわりと服や持ち物にうるさい。実際、Tシャツにもハーフパンツにもひとしきり文句をつけた。じゃあウチの――〈シンガンクリムゾンズ〉のライブTシャツにするか、と聞いたら黙ったが。

「……はあ。もういいや」

 頭上の大きな耳がぱたりと後ろに倒れる。気に入らないのは確からしいが、他に選択肢もない。
 白い手にキャラクターものの巾着は似合わなかった。やっぱりちぐはぐな取り合わせに、また少し笑った。