7月5日
「お前は俺を好きなのに、思い出ばっかり欲しがるんだな」
「お前が思い出しか置いていかなかったからだろう」
「今はお前の目の前にいるのに」
「またいなくなるだろ、髪の色だって変えて」
「何色が好き? 黒? この色? まさか金髪?」
「……どれでも同じだ。お前は、オレの部屋なんか似合わないし、どこにいたって目立つ」
「お前こそ、あの部屋は狭いと思うけど……ねえ、ロム。思い出が欲しいのに、俺とは寝ないの」
「そういうのは要らねえ。……後悔するに決まってる」
「後悔と思い出がどれだけ違うっていうんだ」
「思い出は覚えてるもんだろ。……後悔は、忘れたくても忘れられやしない。御免だね」
「お前は……」
「オレは嫌だ」
「お前は、手を離すために握手をするの」
「握手で笑って終われりゃ上等だろ」
「……手」
「あ?」
「手、貸して
「……ん」
「こうやって、つないで」
「おう」
「で、俺が離さなかったらどうする?」
「…………………………………は?」
「お前は、俺がいなくなるって決めつけるけど」
「おい」
「俺がお前から離れられなかったとは思わないのか」
「……っ!?」
「…………ん。ふふ」
「……なん、で、した。いま」
「できそうだったから」
「ふざけんな……」
「だってお前が俺のこと見てるから」
「そりゃ」
「嬉しい」
「……!?!?」
「ずっと見てて」
「ち、ちかい」
「目を逸らすな」
「う」
「俺だけ見てろ。……じゃないと、俺はろくに眠れもしない」
「は……?」
「お前が」
「うぉ」
「俺の立つ場所を目指しているか、寄り道をしていないか、お前の視界に俺は映っているのか、お前の耳にこの声が届いているのか、ちゃんとお前は、俺を、見てるのか」
「……」
「MIDICITY中を俺で埋めたら、お前は俺を忘れないだろうと」
「……意味が」
「思ってたら、医者は休めと宣うし、勝手に仕事を一か月止められて」
「あー……」
「挙句に、お前は俺を簡単に部屋に入れる」
「いや、まあ」
「勝手に水に流した気でいるのかと思えば、まだ俺のことを好きで」
「ぐ」
「好きなくせに、ただ好きなだけで、踏み込んでもこない。触ろうとすると怯えて、でも逃げなくて」
「び、びびってねえよ」
「そういうところ……」
「っ、ぅわ」
「俺を突き放せないお前と、お前を手放せない俺と、何がどれほど違うっていうんだ」
「〜〜〜〜っ、口くっつけてしゃべるんじゃねえ!!」
「んむ」
「むぐ……っ」
「……あ。花火だ」
「っはあ……ぜえ……はぁ……は……っ」