04
「鉄ちゃん! 前言ってた漫画の続き持って来た!」
「ありがとうございます!! めちゃくちゃ楽しみにしてたんで、嬉しいっス!」
「あのね、今回も本当に最高なの! あーもうネタバレしそうだから早く読んで〜」
男だらけのむさ苦しい食堂の隅で、一際大きな声で楽しそうに話す二人の姿は、さながら親戚の集まりで久しぶりに出会った再従兄弟同士のような盛り上がり様だった。
二人でなまえの持って来た漫画を広げているのを傍目に、男達は癒されながらご飯をかきこむ。
土方の小姓として真選組に属している佐々木鉄之助は、先輩であるなまえによく懐いており、なまえもまた鉄之助を弟のように可愛がり、面白かった漫画は何でも貸すようにしている。
「また続きが気になる終わり方ですね〜!」
「ねー? そんでお兄ちゃんがかっこいいのよまた!」
「えー?なまえさん、こんな真面目で眼鏡な男がいいんですが? 俺は断然、弟派っすよ! 最後にはこっち選ぶんじゃないっすかね?」
「まだそんなのわかんない!」
ここは中学か高校かと聞きたくなるような、若々しいオーラに押されつつも、近くの席に座ったのは局長である近藤と最近ずっと側についている山崎だった。もっとも、彼らはいつもの席に座っただけで、若造コンビと接触しようとしたわけでは決してない。二人の話を聞き流しながら、他の隊員達と同じくして、「若いってイイね〜」なんて昼下がりのOLのような会話をしながらカレーを口に運んでいた。
そして、近藤のいるところには人が集まる。
食堂を訪れた沖田もまたその一人で、躊躇いもなく近藤の横に腰かけ、箸でまだ騒いでいる二人を指差し「何ですかィありゃあ」と笑った。言っておくが沖田は鉄之助はともかく、なまえよりも年下である。
「何でィ、もう機嫌直ったんですか、つまんねー」
アンタが関わんなかったらもっと早かったよ。山崎は言うかわりに、きつねうどんの揚げを口に運んだ。
「まぁまぁ、皆仲が良いのに越したことは無いからな」
「あれ? 近藤さん、知ってるんで?」
「うん、あらかた山崎から聞いた」
食堂は人の出入りが激しい。隊員それぞれに振り分けられた仕事量が違うのもあり、食事を取る時間も全員バラバラだ。ぞろぞろと何番隊かが出て行ったのと入れ代わりに入って来たのは、相変わらず仕事に忙殺されて若干グロッキーな顔をした土方だった。お盆にカレーとマヨネーズと灰皿を乗せて、何も考えずに近藤の向かいに座ってから、ようやく、自分達のすぐそばで騒いでいる2人組に気付いた。そして、目線をよこした瞬間に、ふとそちらを見やったなまえとピタリと目が合ってしまった。げ、と二人が思わず声を漏らして数秒、硬直した。
「鉄ちゃん、行こ」
「え? あ、ハイ」
よく分かっていない鉄之助を連れて、あっという間にその場を去ってしまった。そんなことはどこ吹く風でカレーにマヨネーズをしこたまぶっかけている土方に、同席した者たちの憐みの視線が降りかかる。流石の土方も、無視することはできなかった。
「……なんだよ」
「トシ、いい加減大人になったらどうだ。なまえはまだ19だぞ」
「しょっちゅう小娘追いかけて仕事トンズラするアンタには言われたくねぇよ近藤さん」
「近藤さんの言うとおりでさァ。たかだか大富豪でいつまで仲違いするつもりですかィ? 」
「オメーにはもっと言われたくねぇんだけど」
悪かった機嫌を更に悪くしながら、マヨネーズをすくって口に運ぶ土方をよそに、これは長期戦になりそうだな、と、示し合わせたように三人はこっそりと目配せした。