06


今日はありがとうございました。
楽しそうな笑顔でそう言い放つなまえに、緩みっぱなしの頬が更に緩んだ。
結局、今日しかない!とまで思っていた意を決した告白も、クレープ屋の後に寄ったゲームセンターの辺りで、しれっと次回に持ち越す事にした。その理由は一つだ。もし失敗して二度とこんな風に一緒に過ごせないくらいなら、いっそ友達でもいい。そう思ってしまうくらいに、クレーンゲームで落としてもらったぬいぐるみを胸に抱くなまえは愛くるしかった。真選組の屯所まで送ると申し出たが、万事屋とは方向が真逆だからという理由で丁重に断られた。尚も渋る銀時に、にこにこ笑いながらこっそりと持ち歩いている短刀を見せながら、私なら大丈夫ですよと頼もしく言い放った。

「ほんとにここで良いのかよ……」

むやみに広い屯所はもう、道の向こう側に小さく見えている。それなのに銀時は、心配そうになまえを引き止める。

「ここまで来てもらったら流石に大丈夫ですよ。誰も私なんて襲いませんから」
「そうも言い切れねーだろ」

今まさに目の前に居る俺は、お前の事襲いたくてたまんねぇんだけどとは勿論言えない。

「心配性なんですね、銀さんって」
「お前みたいにカワイイ奴は特別にな」
「えへへ、これもありがとうございました。大切にします」

袋の上から抱きしめられたフワフワのぬいぐるみが、羨ましくてしょうがない。自分の器用な所をすごく褒めてやりたいと、今日だけで十回以上思った。

「俺も、今日は色々参考になったわ。ありがとさん」
「お役に立てたなら嬉しいですね。お仕事頑張ってください」

今更言えない、そんな仕事が存在しない事なんて。しかし、それを差し引いても仕事は頑張ろう。心入れ替えよう。
そんなことよりも、銀時には言うべきことがあった。自分の気持ちを伝えないにしても、これで終わらせない為に。

「……その、」
「はい?」
「次は、ちゃんと誘うから、練習とかじゃなくてな」
「じゃあ私も、お店探しておきます」
「それともういっこ、いい?」
「なんでしょう?」
「敬語、やめてくんない。俺固ェの嫌いでよ」
「え、でも、年上ですし、良いんですか?」
「うん、大歓迎」

にいっと笑うと、少し戸惑っていたなまえの顔が、一気に緩んだ。

「じゃあ、うん。バイバイ、銀ちゃん」
「え、今なんて」
「あ、ごめんなさい。前に神楽ちゃんがそう呼んでるの聞いて、実はこっそり呼んでみたかったんですけど、嫌だったら」
「嫌な訳ねえだろ!……それと、ホラ敬語」
「……あ、えっと、ごめん?」
「よし」
「じゃあ、またね」
「またな、なまえ」

どさくさに紛れて、呼び捨てにしてみたが咎められなかったので胸を撫で下ろす。小さくなっていく背中を見守りながら、下げ忘れた手が小さく震えているのに気がついた。うわ、情けねえ。それからぎゅうと拳を握りしめて、浮かれた足取りで万事屋への帰路についた。それから当分の間、何故だか神楽の銀ちゃん呼びは厳しく取り締まられることになったのだが、それはまた別の話。




  
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