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 今日あったことを話そう。
まず、昼頃から風間さんとの訓練に向かおうと私室へ迎えに行ったら昼飯を食べることを優先されたので共に食堂に向かい、カツカレーをモグモグする風間さんと最近風間隊で出た話題のはなしを聞いたり俺の学校生活のことなど話した。

「最近、酒を覚えたんだが、まだ上手く配分が掴めなくてな」
「すごい……掴む気あるんですね」
「当然だろ」

その言葉を信じた俺は後々裏切られることになるが、そんなことはさておき、そのあと風間さんの素早い動きに目がついていくようになった自分に感動しつつボロボロにされる訓練を行った。けれど、風間さんはA級部隊の隊長であるためこれから会議に出席するとのことだったので、ブラックトリガー保持者ではあるが訓練生である俺には縁のないことに他人事の顔をして見送った。いつも風間さんとの訓練には風間隊の作戦室を使用させてもらっているため、否が応でも風間隊の他隊員と顔を会わせることになるが、菊地原くん……俺の中の通称プライド王子にはとことん嫌われてるので風間さんのいない作戦室は居心地がよくない。
比較的歌川くんは俺に「今日の動きは良かったですよ」とか話しかけてくれるが、その度に近くにいる菊地原くんが『そんなやつに話しかけんな』という視線を送ってくるので恐縮してしまう。菊地原くんの感情はもっともなので何かを言ったことはないけど、俺が防衛任務で会うとそんなに苛ついてないときが多いので………多分、特例という事実がむかつくんだろうな、ボーダーのトリガーじゃ大した技量もないから。
そんなこんなで風間隊の作戦室をあとにしてC級ブースを覗くと常連の上級隊員がちらほら見え、挨拶しようとも思ったが自分の立場を考えて自粛した。きっと多くの人は気を使うなって言ってくれるけど、プライドの高い人や頭のいい人はよく思わないだろうから。みんながみんな、優しいだけで成り上がってきたわけじゃないから。
なので、廊下ですれ違った諏訪さんにも短く挨拶をして通りすぎようとしたが、何故か「なんだその他人行儀!」と顔を下から片手で掴まれ動きを止められたので、隣にいる同じ隊員の人に「こんにちは」と反応した。それに対してオイコラ無視すんな、と言われたので嫌々諏訪さんと顔を合わせると色々お小言を言われた後、タコのような口のままそれを聞くことになる。体調には気を付けろとか、緑川くんとの戦いのこととか、この五月後半から九月まで全然本部で見かけなかったことやら、もうなにからなにまでもう…………。
諏訪さんからの連絡といえば麻雀ばっかりなので途中から適当な返事しかしてなかったけど、いっぺんに聞かれるのなら今度麻雀に参加してもいいかもしれないと思った。東さんや冬島さんにも会える気がしたし。

「今度麻雀、行きますから、ね?」

という俺の言葉で収束した立ち話を隣で聞いていた隊員さんはずっと呆れの視線を向けていたが、止めなかったのは止めたときの方が長くなると経験でわかっているからのようだった。なにそれこわ。
そんな諏訪さんから解放されてエレベーター待ちしていると、三輪くんと古寺くんともう一人のスナイパーの人………うん、スナイパーの人と鉢合わせになった。最初に言うと、ボーダー本部のエレベーター待ちは物凄くながい。
三輪くんは俺に気づいた瞬間めーっちゃ嫌そうな顔と視線を向けてからガン無視したが、そんなことに気が付かない古寺くんが挨拶してくれたので俺は微笑みながら挨拶を返した。古寺くんは俺が合同練習に出なさすぎることをたまに怒ってくれたり、変な噂が流れたときとかフォローしてくれたりかわいいやつだ。けれど、もう一人の人はビックリするほど関わりがなかったが、防衛任務で何回も見かけてる手前改めて名前を聞くのもあれだったので小声で古寺くんに聞いた。すると「狙撃手二位の方ですよ!?」と大変驚かれたので俺も驚く。

「え、攻撃手とか狙撃手とか銃手射手ランキングとか、個人総合ランキングとかもう、知り合いのすら全く覚える気ないんだけど」

と小声でいうと物凄くランキングの重要性について普通の声量で力説され、何となくわかったけど俺がそれを覚えるのにやっぱり有用性がないので適当に謝った。

「けど、奈良坂……くんの狙撃の正確さはランク戦のログ見てるから知ってるよ。誰がどう強いのかとか見当つけて、後からランキングで確認して上位にいたら『ほらー』ってなって楽しいよ」

そう続けると奈良坂くんへの評価を古寺くんのほうが先に誇らしそうな顔をし、ランク戦を見ることのメリットを語りながら俺を少し誉めてくれたのでお礼を言っておいた。当人の奈良坂くんも俺がランク戦のログを見てるという事実と俺の楽しみ方に少し驚いたような視線を向けてきたが、結局口にしたのは「ありがとうございます」だけだったので俺も短く返すだけに留めた。けれど、古寺くんには「お前が他人にとやかく言える立場なのか」と言っていたようだったが、その間ずっと閉じたままのエレベーターを見ていた三輪くんにチラチラと古寺くんが視線を向けていたので仕方なく、俺も三輪くんの横顔をガン見する。すると三輪くんはギロッと俺を睨み付けた。こえーよ、顔も視線も。

「こんにちは三輪くん、元気? 風邪引いてない?」
「……話しかけるな、馴れ合うつもりはない」
「、馴れ合いじゃないし気も使ってないよ。それに………先輩には挨拶しないといけないと思わない?」

そう言ってへらりと笑ってみると、三輪くんは俺を見ることなく舌打ちをしてから物凄く嫌そうな顔をした。
おれはなにもしてないのに…………まあ、迅よりはマシな対応されてるか。

「おまえにする挨拶などない」
「………ああ、いや、俺が後輩で三輪くんが先輩ね。ボーダーの」
「…………チッ」

俺の言葉にもっと嫌そうな顔になった三輪くんに首を傾げるが誰かに物珍しそうな視線を向けられたので周りを見回すと、ばちっと奈良坂くんと目が合ったので「なにが珍しい?」と尋ねた。奈良坂くんは驚いたような視線を向けながらも顔の表情を変えずに「いえ」と返して古寺くんに視線をずらすので、この子は多分頭のいい子だなー、なんて思っていた。そういう子にサイドエフェクト阻止されるのは結構痛手なんだけど。
そして俺の待っていた下りのエレベーターが来たので別れの挨拶をし、相変わらずちっとも此方を見ようとしない三輪くんを諦めてエレベーターに乗り込む。想像していたより厳しい三輪くんの態度にエレベーター内では正直心が泣いていたが、俺の降りる階ではないところで扉が開いた。
ボタンを押していると、入ってきた人物が鋼くんと哲次と犬飼くんだったので適当に挨拶しておく。犬飼くんは俺の横顔をじーっとみつめて観察してくると「なんか落ち込んでるじゃん」とケラケラ笑ったのでちょっと冗談で睨み返すと、犬飼くんは少し驚いてから嬉しそうにまた笑った。なぜ喜ぶのか不明だったけど、後ろにいた鋼くんが「そういえば」と発言したのでみんながそちらを向く。
見られた当人は気にすることなく「今日、荒船の誕生日なんですよ。名字さん」とまさかの俺に対する発言をしたので、今度は俺に視線が集まった。誕生日だなんて聞かされてないし、水くさいぞ……と思ったおれは哲次にあげられるものがないかリュックの中身を思い出したけど、何もなかったのでとりあえず謝った。

「哲次、今度肩叩き券あげるね」
「俺はお前の親か!」
「ごめん、俺親いないけど」
「…………それは、悪い」
「いや別に、哲次がいるからいいよ」
「意味わかんねえよ」
「ほんとにあげるからね、一生涯有効だから」
「……それはちょっといいな」

そんな会話を繰り広げた後エレベーターを降り、これから鋼くんと犬飼くんが哲次にご飯を奢りに行くらしいので三人を見送った俺は、帰る前にトイレに寄ろうと男子トイレを探して歩いている最中にいつも通り迷子になった。こんなことならトイレ我慢しときゃよかった………なんて思いつつとりあえず歩みを進めていると、見たことのある人が目の前に現れた。
けどそれは不運ながら女性で、しかも大して話したことのない慶の隊のオペレーターの柚宇ちゃんとかいう子と嵐山隊の木虎藍ちゃんだったので、なんかもう絶対聞きたくないと思った俺はスルーしようとしたが、柚宇という子が「あ、太刀川さんのお嫁さんー」と俺に手を振るので呼び止めざるを得なかった。なに? 嫁?
慶も公平も柚宇とか柚宇さんとしか呼ばないので名字の知らない俺は「柚宇ちゃん? だよね?」と確認して名前を呼ぶと、そうですよとほわほわ笑顔を浮かべて頷くので素直にかわいいと思った。けど、言うときは言う人だと二人から聞いてるのであれだけど。

「お嫁さんって誰から言われたのか見当つくけど、改めよう? その認識改めようね」
「えー、いいと思いますけどねー、お嫁さん」
「柚宇ちゃんならいいけど、俺は男だから」

そう言って弁明したが、柚宇ちゃんは「わたしも太刀川さんはやだなー」と言うだけで聞き入れてくれなかった。どうせ発信源は太刀川隊の誰かだ、というかどちらかだろう………慶ならあとでシめる、公平ならだめだろー? って言う。そしてさっきから、日常的に何度か向けられるような視線を感じると思いきや木虎藍ちゃんが俺見ていたので微笑んで目を合わせると、木虎藍ちゃんは少し焦ったようにしてから何か考え込んで俺を睨み付けたので、その変化に戸惑いしかなかった俺はサイドエフェクトを意識した。
そして『格好いいからって自惚れないで、特例なんて私は認めない』と読み取れて意外に面食いだなと思った俺は、そんなことよりトイレに行きたかったので柚宇ちゃんの誤解が解けたのかわからないまま二人と別れた。
そんなこんなでようやくトイレに辿り着いた俺が用を足して手を洗おうとすると、久しぶりに見た二宮さんが現れた。その衝撃で俺は間違えて手洗い場の水圧を強め、ぶしゃーっと水を飛び散らせてしまうというアホ丸出し行為を行った。その光景をバッチリ目撃した二宮さんは一度此方を見てから俺を無視し、トイレへと向かったが、俺としては無視された悲しみよりほっとかれたことの安心感のほうが強かったのを覚えている。
トイレの個室に戻ってトイレットペーパーを持ち出し、いそいそと鏡や周りに飛び散った水を拭いていると用の終えた二宮さんが隣の洗面台を使用したので、少し避けながら壁を拭いて横を見る。そこには自前のハンカチで手をふいた二宮さんがいて、なんか様になりすぎて困るわ……なんて思いつつ使ったトイレットペーパーを流しに行くため二宮さんの後ろを通ろうとすると「おい」と呼び止められた。

「えっ!? は、はい」
「………何をしてる」
「? 見ての通り後始末を………」
「そうじゃない、訓練の話だ」
「く、訓練」

この流れでどうしてそんな話になったんですかあはは、なんて簡単に聞ける間柄じゃないので話の展開についていくのに必死になってる俺は「えっと」と視線を上に向けて考え言葉を放った。

「五、六月から今までは殆ど、ブラックトリガーの技術向上と言いますか………けど、これからまた一ヵ月かは本部に来てスコーピオンとか練習するつもりです」

なんてぼそぼそと小さい声で答えると、二宮さんは洗面台に若干寄りかかりながら何を言うでもなく俺をずっと見下ろしていた。
いやだからこえーよ、なんなの、ほんとに慶と同じ年齢? なに食べて育ったらそんなになるの? てか慶より身長高いな。なんて訳のわからないことを考えて視線から逃げていると、二宮さんは眉間に寄せたシワをよりいっそう深くして口を開いた。

「お前、出水とは知り合いなんだろ」
「は、はい」
「なにも言われないのか」

だから話の展開分からなすぎなんですけどー? とヘラヘラして笑いたい気持ちはあったが、そんなことしたらこの張りつめた空気が嫌な方向に向かう気がしたので、めいいっぱいサイドエフェクトを使用する。バカに厳しいから、二宮さん。
そしてなんだかよくわからないけど何故射手には目を向けないのか、的なことを言いたいらしい二宮さんに俺は変に混乱していた。なぜに俺が射手っていうか、なんで二宮さんが俺に?

「えっと………俺はその、まだスコーピオンしか使ったことないんであれなんですけど」
「"しか"だと…………? 試すこともしてないのか」
「あ、ごめんなさい。いやその……ブラックトリガー使いこなさないとっていう思いが強くて、ボーダーのトリガーまで頭働かなかったっていうかごめんなさい」

語尾がごめんなさいになってる俺はこの場から逃げ出したかったが、そんなことできる筈もないので手にある湿ったトイレットペーパーを気づかれないように指でネジネジして心を落ち着かせていた。二宮さんのことは菊地原くんと合わせて心のなかでプライド王と呼んでいたが、俺のネーミングセンスは間違ってなかったなと思う。
二宮さんはそんな俺に一歩近付いてきたので俺は思わず一歩下がり、それに気づいた二宮さんがまた近付いてきたので壁に追い込まれた俺は二宮さんの顔をずっと見上げることで許しを請いた。けれどまるで伝わってない二宮さんは俺の頭の横に手をついて顔を近づけると、何か品定めをするような視線で俺を三十秒ほど見つめてきたので、その間俺は無意識に息を止めていたらしく死ぬ思いをした。
そしてその行為に対して何を言うでもなく、二宮さんは立ち去っていった。

何時間か経って一人バス停の近くにあるコンビニで買い物してる時でさえ思い出して、壁ドンする二宮さんこわい、となっていたが、雑誌コーナーでボーダー関連の雑誌が見えたのでそちらに興味が湧いた。けれど、なんでか手を伸ばすのが面倒になったので移動しようとすると「読まないんだ」と声をかけられ後ろを振り向こうとしたが、その前に目隠しされて驚く。
俺の周りには後ろから声をかけて驚かせようとするやつが多すぎる気がしたが、それは俺のサイドエフェクト故だと勝手に結論付けて視線を読み取った。

「………なにすんの、陽介」
「ありゃ、バレるのはえー」
「声でわかるよ………って当てたけど離してくんないの」
「名前さんがおれの質問に答えたらいいっすよ」
「なにさ」
「質問1、」
「一…………?」
「最近、秀次となんかありました?」

コンビニの店内で堂々と目隠しして話し掛けてくる陽介の精神力にもの申したい気持ちで一杯だったが、この状況を打破するのが先決だと判断して適当に言葉を返す。

「んんと、もう構うなって言われた……けど、今日少し構わざるを得なかったから話し掛けたら、怒られた」
「ぶはっ、うける! 流石名前さん!」
「ウケないよ…………」
「じゃー、質問2! 今日の俺の晩御飯はなんでしょうか?」

そう言ってシンキングタイムの音を口ずさむ陽介にあきれを通り越してかわいささえ覚えたので「カレー」と適当に答えると、目隠しを外され、眩しさで目を細める俺を陽介が笑いながら「外れー、正解は?」と俺を見つめた。わざとらしい視線に目を伏せてサイドエフェクトを使用すると、ひとつの単語が読み取れたので「からあげ?」とそのまま呟く。俺の答えに「正解ー、」と小さく拍手をして俺を称える陽介はへらへら笑ってからいじけるように唇を尖らせた。

「だってさー、なんでもサイドエフェクト先行の名前さんなんてつまんねーっすもん」

高校一年生にもなってそんなこと思って行動する陽介に驚いたが、その感情は俺が迅に対して向ける感情と酷似していたので、少し面白かった。
そんなかわいい陽介に「陽介のそういうところ好きだな」なんて言ってから、お菓子を買ってあげると、子供扱いされてることに苦笑いしつつちゃっかりお菓子を受け取った陽介は自分の買い物袋にそれを入れて家へと帰って行った。流石に送るのは子供扱いし過ぎと怒られたのでやめたけど。
そんなこんなで俺は孤児院に帰り、双子の小学生に頼まれていたコンビニの消しゴムを渡し、早々に風呂に入ろうとしたが丁度幼稚園組も入るらしかったので、一緒にお供しなくてはならなくなって溜め息をはいた。あれって自分のこと後回しにして洋と千恵の二人の面倒見なきゃいけないから疲れるんだ、そういえば洋は迅のこともう忘れてるのかしらないけど、前より名前を出さなくなったな………中学生の塁はたまにうるさいけど。
風呂を入れさせて疲れた俺は自室のベットに倒れこんで携帯を確認したが、何人かからメッセージが返されているだけで緊急性はないようだったので目を瞑って今日一日を振り返っていた。
そしてたった今思い出せるすべてを思い出し、詰め込まれるように色々な人と遭遇した今日が、なんだか幸せに思えて一人微笑む。きっかけはたくさんあったけど、いつも結局思うのは迅への感謝なので………本人にこの幸せが伝わればいいなと思った。

そして、俺の気持ちもいつか…………、なんて。

そんなことを考えている女々しさを消すように起き上がって、携帯の中に沢山ある画像を眺めて髪が乾くまでの時間を潰した。
ほとんどが孤児院ファイルに入ってるものだけど、迅がここへ泊まりに来た時期くらいからボーダーファイルを作っていて着実に増えていく写真に俺はまた微笑む。
俺が撮ったのでいえば陽太郎と作ったお菓子や、雷神丸と陽太郎の写真。トリマルくんの無表情でのダブルピース。学祭のときの嵐山との写真。迅の寝顔……寝顔についてはアイツも俺のを持ってるらしいから、感情に困る。
あとは………慶から柚宇ちゃんと公平がゲームしてる後ろ姿だけのムービーとか、公平からは陽介の顔のどアップ写真とか色んな人の学校ジャージ姿の写真が来たり……このときはジャージの着崩し方について話してたっけ。
鋼くんからは、俺が来馬にあげたアルパカのマグカップを割って土下座してる別役くんの写真が来たり………あとで来馬からも謝りのメッセージが来たな。あとは哲次と穂刈くんが腕相撲してる様子のムービーが来たり。
嵐山からは学祭のときの迅とか、時枝さんちの猫写真とか、弟妹の写真とか、自分ちの犬の写真とかかな………全体的にかわいい、隙がない。
あとは、仁礼ちゃんから来た影浦隊が仲良く人生ゲームしてる様子のムービーとか、北添くんからはお菓子のレシピのスクショとかかな、お菓子の写真とか送りあったりしてたっけ。
因みに、影浦隊の仁礼ちゃんとは連絡先を交換してる仲なのに「おまえはアタシを下の名前で呼ぶな! 他の女の視線が怖い!」と直球に言われたので仁礼ちゃんと呼んでいる。
そもそも仁礼ちゃんや他の影浦隊と話すようになったきっかけは、俺と影浦くんが話してる姿をユズルくんが見て隊の皆に何気なく言った結果「ソイツを呼べ!」と仁礼ちゃんが召集をかけたことによる。
初対面の当時名前も知らなかったユズルくんに顔かして、と呼ばれたときの緊張感と、着いた先の見知らぬ作戦室でソファで腕を組んで待ってる女の子と隣でにこにこしてる男の人が此方を見てきたときの緊張感ったらなかった。男の人のほうは何度か見掛けたことがあったが誰の隊だったのか思い出せなかったし、ユズルくんはスナイパーらしいからそうそう見てなかったしオペレーターなんてもっと関わり薄い。リンチされるのではないかと怯えていたが、二人の目の前のソファに座らせられるとユズルくんが『面倒』という視線を送ってきたので少しホッとしたのも束の間、女の子がドンッと机を叩いたかとおもえば「さて、洗いざらい吐いて貰おうか……」と言われて俺はポカーンとしてたっけ。隣でにこにこしてた北添くんが「うーん、刑事物漫画の見すぎだね」と呟いたのはあのときよくわからなかった。今なら漫画好きだから、ってわかるけど。
そして結局影浦くんとの関係を聞かれ、出会った経緯やユズルくんが俺たちを見かけたときに話していたであろう会話の内容まで洗いざらい聞かれたが、影浦くんの好きなところ三つ答えろとか言われたから『不器用なところ』『強いところ』『褒めるとすぐ嫌がるところ』と即答すると最初にあった緊張感は何処へ行ったのか、生ぬるい視線を受けることとなった。いつのまにか手作りっぽいお菓子と温かいお茶も出されたし。
まあ、そこから何度か影浦くん抜きで付き合いの増えた三人だけど、それを秘密にしていたとは知らない俺が影浦くんに普通に喋ると舌打ちしてたな。照れてた、あれは。

「………結構たくさんあるな」

指で画面をスライドさせていると、諏訪さんからきた麻雀でいい役でた、と送られた写真とか、慶から頻繁に送られるうどんの写真とか、陽介から送られた公平の横顔の写真とか、たまに何で俺に送るの? みたいなものまで送られるときもあるけど、結局全部保存してしまうし消せないから、俺ってアホだなとたまに思う。

なんか消せないんだよなー、なんでかな。
なんて思いつつ乾き始めた髪に手をあて、寝る支度を始めた。
あー、今日もいい日だったわー。

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