意気地なしヒーロー。

屋内対人戦闘訓練


「おはよー瞬」
「あ、おはよー耳郎さん」

 朝、普通に挨拶をして席に着く。皆それぞれ仲のいい子を見つけたようでわいわいやっている。みんなすごいなーそれに比べて私は昨日今日でまともに会話したのは耳郎さんと爆豪だけって………しかも爆豪はあれ会話って言えるのだろうか………ひたすらに怖いだけで会話出来てなかった気がするんだけど…………あ、そういえば話したの、もう一人いたな。昨日クラス間違えた時に会ったあの優男くん。可哀想なものを見る目が印象的だった………忘れてるといいな………あのときのこと………はは……
 耳郎さんは他の子たちと話しだしたので、私はすることもないのでポツーンと席でぼーっとする。うーん寂しい……あんまり超仲いい子とかいたことないし当たり障りない反応なら出来るけどそれからどうしたらいいか分からん………寂しいから本でも読んどこ…

 それから、その日の午前は普通の高校でやるような授業をこなした。勉強は割と得意なので真面目に取り組んだが、プレゼント・マイクの授業テンション高過ぎ……やっぱり雄英って普通じゃないや……しかし授業が終わって耳郎さんに「案外普通の授業だったね」と言われてやっぱり感覚違うのか……とちょっとカルチャーショックを受けた。あれ普通じゃなくね…? 私の知ってる英語の先生はあんなテンションじゃないよ…?
 そして昼。食堂があるのを知らずに弁当を持ってきてしまった私は一緒に食べる人もおらず、一人で人気のない場所へと向かった。階段に座って、弁当を開く。明日からはお金持ってきて食堂のご飯食べよ……とぼんやり考えて弁当をつっついていれば、「あれ」と人の声。

「うわっ、入学早々ぼっち飯してる奴がいると思ったら昨日のマヌケ女子」
「げ」

 出会い頭にイヤミをぶつけてきたのは昨日B組の教室の前で会った優男風の子だった。見た目と違いすぎるだろ………どこが優男だよ………大して話したことないのにイヤミ炸裂じゃねえかよ………

「………君こそこんな所で何やってんの? それ弁当でしょ? まさか君もぼっち飯?」
「そんなわけないだろ何で僕がぼっち飯なんか」

 冷たい目で見下されたのでついごめんなさいと謝ってしまう。…えなんで私謝ったんだろう………別に悪くない気がする………あれ……?
 優男くん曰く、食堂があるのを知らずに弁当を持ってきてしまったのを知られたくなくてここに来ただけで一緒に食べる友達はちゃんといるらしい。それってなんにせよぼっち飯なんじゃ…という言葉は飲み込んだ。あーじゃあ、と少し考えて、口を開く。

「今日のところは私もここでぼっち飯だからさ、君も一緒に食べる?」
「……、」

 優男くんは虚を突かれたような顔をして、少し考えたあと、「しかたないね」と肩をすくめて私の隣に座ってきた。…え、いやしかたなくなら別に一緒に食べてくれなくてもいいんだけど……とそう言ったら静かに睨まれたのでまたごめんなさいと謝った。

「僕は物間。物間寧人。よろしく」
「え、ああどうも」
「………」
「………?」
「………君の自己紹介の番だろどう考えても!!」
「!? え!?」

 優男くん…物間が名乗ってきて、へー物間っていうんだーとか考えていたら怒られてしまった。どうやら私も名乗らなくてはいけなかったらしい。ほうなるほど。

「石動瞬。よろしく物間くん」
「……はあ……よろしく、石動」

 物間は呆れた顔で返してくれた。


 ▽


 物間との食事を終え、(始終イヤミばっかだった)私達のクラスの午後の授業はヒーロー基礎学だ。今回の担当はオールマイトらしく、授業内容は戦闘訓練。それを聞いて盛大に顔を歪めたのは恐らく私だけだと思う。
 そうして私達は要望を書いて提出したコスチュームを着て、グラウンドβに集まった。私の個性には距離制限以外に特に弱点らしい弱点はないのだが、ただいつも着ている服のほうがやりやすい、というのがあるのでとりあえず要望の欄にはいつも着ている普段着の絵を描かせてもらった。パーカーにポロシャツ短パン、に黒タイツスニーカー。地味でダサいがまあこれが一番着慣れているのでこれでいい。耳郎さんには「マジかこいつ」みたいな目で見られたが気にしない。耳郎さんコスチュームかっこいいね…!

 訓練内容は屋内での対人戦闘訓練。敵組とヒーロー組に分かれ、2対2の屋内線を行うらしい。設定は核兵器を所持している敵組と、それを処理するヒーロー組。コンビ及び戦闘相手はクジで決めるらしい。ああ………むりだ………いきなり戦闘訓練とか鬱すぎる………帰りたい………しかしまあ、私の個性でこの設定ならヒーローチームに当たれば楽勝じゃね?と頭を巡らせて、うんと頷く。どうかヒーロー組でありますように。
 組分けの結果、私は尾白くん?と葉隠さん?と同じIチームになった。人数の関係で一組だけ三人になるらしい。「よろしくね!」と手を差し出してきてくれた葉隠さんはきっと可愛い。姿見えないけど。というか手袋と靴だけってつまり今葉隠さん裸なのか……大丈夫なんだろうか……女子として……

 一番最初に当たったのは爆豪・飯田チームと緑谷・麗日チームだった。なんか爆豪がギラギラしてる………こわい………というかどうでもいいけどあの真面目眼鏡くん飯田っていうんだ………知らなかった……
 結果だけ言うと、勝者は緑谷・麗日のヒーロー組だった。しかしなんか緑谷は勝ったのにボロボロになっていて、なんだか痛々しかった。爆豪容赦ないや………怖いなーほんと………私爆豪への感想というか印象怖いしか言ってない……ボキャ貧つら……

 そして場所を移し第二戦では、私達のチームが敵、轟・障子チームがヒーローという振り分けで行われた。思わず遠い目をしてしまった。…マジか……敵かよ………よりによって………はあ………ヒーローチームならテレポートして核兵器にタッチしておわりだったのに………ヒーロー攻撃してくんじゃん……こわ………
 葉隠さんは本気を出すと言って手袋もブーツも脱いでしまったがそれいいのか………尾白くん男の子だよ………みて……微妙な顔してるよ尾白くん……私も微妙な顔をしていると、目があった尾白くんが柔らかく微笑んできた。

「頑張ろうね、石動さん」
「え、あ、ああうん、頑張ろうね尾白くん」

 何だろう最近男の子といえば爆豪とか物間とかなんか性格破綻者とばっかり絡んでたからすごい落ち着くんだけど………ヒーロー科でもちゃんと良い人いるんだな…!(当たり前)
 そんな中行われた第二戦。私達はとにかく防衛戦でいこうと話し合い、相手チームを迎え撃ったが、しかし相手の…轟くん?が入ってきた瞬間部屋を凍らされ、動けなくなった。無理に動くと足の革剥がれるぞと言われてゾッとする。こわっ。
 しかしまあ私には足の裏凍らしただけじゃあんまり関係無かったりする。テレポートで靴を置いて轟くんの後ろに移動する。咄嗟に反応した轟くんの首辺りを狙って手を振り下ろしたが、それを防がれ、今度は下半身全てを凍らされてしまった。待って冷たい痛い冷たい痛い痛い!! 死ぬ!! 寒いの嫌いなんだって!! 余計なことしなきゃよかった!! 轟くんこわい!!
 核兵器にタッチした轟くんは左から炎を出して氷を溶かしていく。私のは本格的に凍らされたので溶かすのに時間が掛っているがだんだんと下半身の氷がなくなっていく。なんか痛覚以外の感覚ないや………寒いし………泣きそう………

「………悪かったな」
「…え?」
「つい大袈裟に凍らしちまった。軽い凍傷になってるから、保健室行ったほうがいいぞ」
「あ、ああハイ………どうも」
「………あ、悪い、歩けねえな。ついて行く」
「い、いやあのテレポートで行けるんでいいです…」
「正確な位置、分かんねえだろ」
「………」

 完全に氷が溶けて、轟くんの背中に乗ってオールマイトの所へ戻る。今回の批評を聞いて、保健室へ行く許可をもらい轟くんに連れて行ってもらった。うひい、イケメンに背負われてるよーなんだこの展開!! やだ帰りたい!!

 リカバリーガールに凍傷を治してもらい、轟くんと並んでみんなの所へ戻る。会話がない。気まずい……でも運んでくれたのに置いてテレポートで帰るのもなあ……

「あー、と」
「えっ、あ、はい!?」
「悪い、名前」
「あ、石動です! はい!」
「……石動は、テレポートの個性なのか?」
「え、ああ、うん。戦闘向きじゃないよね」
「そうか? 氷、抜けられて吃驚したけどな」

 余所向きの笑みを浮かべながら、轟くんと会話を弾ませる。これは弾んでいるというのか微妙だけど、まあないよりはマシだった。
 みんなの所へ戻ると、一番に葉隠さんが駆け寄ってきた。

「あっ、石動さん大丈夫だった?」
「え、ああうん、すぐに治してもらえたよ。なんか疲労感やばいけど」
「そっか、轟くん運んでいってくれるなんて男だね! 優しいね!」
「そ、そうだね…?」

 ちらりと隣の轟くんを見ると、ふい、と顔をそらされる。…………うん………まあ轟くんが原因の怪我なんだけどね……

 そうして授業は緑谷以外の大きな怪我人を出すこともなく終了した。何だか最初の試合が終わってから暫く爆豪が静かで逆に怖かった。普段キレまくってる人が静かって怖いんだ……何しても怖いな爆豪……


 ▽


「なあ石動! 今度飯行かね? なんか好きなもんとかあるか?」
「………え」

 授業が終わり、皆が今日の反省会をしている中、一人本を読んで過ごしていると、金髪のメッシュの入った男の子がそう声をかけてきた。ビビって思わず体を引くと、金髪くんは「おっとわりい」と彼も少し身を引いた。

「俺上鳴電気! よろしくな!」
「は、はあ………どうも……?」
「んで、今度飯行かね!?」
「え…………いや………あはは?」

 なんなんだろうと笑って誤魔化していると、隣で聞いていたらしい耳郎さんが割り込んでくる。

「上鳴アンタ節操無く女子誘うのやめなよ。嫌がってんじゃんか、瞬」
「何だよ嫌がってはねーだろ! なあ石動!」
「あはは」
「気ぃ使われてんじゃん」

 なるほど軽い上鳴からのナンパのお誘いだったわけだ……なるほど。なら真剣に取り合う必要もないな……うん。笑って誤魔化して、帰るために席を立つ。「帰んの!?」と上鳴の言葉にまた笑って返し、教室を出た。あー今日も疲れたな……

 途中で包帯まみれの緑谷とすれ違った。

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