意気地なしヒーロー。

学級委員長決め


「オールマイトが授業をしていることについてどう思いますか!?」
「うひい!?」

 朝、学校に行くと大勢のマスコミに囲まれた。あれ私なんかしたっけ!?とか思ったがまあ普通に考えてオールマイトのことだよねー知ってたよ……うん。いや別に注目されたかったわけではないんだけど。とりあえず軽くいなそうとしたら腕を掴まれてしつこく聞かれる。ひいこわいなにこの人たち。止めて放して校舎入らせて!! オールマイトのことについて聞かれても困る!! 昨日初めて授業受けたばっかだもの!! 答えろって方が無理だよ!!
 困っていると、突然反対方向から腕を引かれた。パッと見ると不機嫌顔の物間がいて、なんか少しビビった。多分恐らくマスコミがうざったくて不機嫌なのだろうけど。
 物間はパッと余所向きの笑顔をうかべ「スミマセン僕ら急いでるんで」とマスコミを一蹴すると、私の腕をぐいっと引っ張り中へと入っていく。
 するとなんか上からピピッと音が聞こえ、ガラガラ!と何かが落ちてきた。落ちてきたっていうか下りてきたっていうかこれアレじゃん雄英バリアーじゃんマジでなんでだ私生徒じゃん。物間は咄嗟に手を放しギリギリ学校に入ったみたいだが大丈夫だろうか。マスコミがヒソヒソ話をしている。ひいこわい、どうしよう………あそうだテレポートでいけるくね? あでもなんか警報鳴りそう……とか考えていたら雄英バリアーがガラガラと開いた。見ると物間と相澤先生が立っていて、相澤先生の形相に思わずヒッと後ずさった。

「………不合理だ……」
「あ、あの相澤先生、何かここ通れなくて……」
「お前生徒証は」
「え? …あっ、忘れた」
「………」
「ヒィ!! ごめんなさい!!」

 とりあえず相澤先生に何とかしてもらって、物間と一緒に校舎へ向かう。

「ねえ馬鹿すぎない?」
「……返す言葉もございません………」

 それから暫く物間のからかいのネタに使われていた。


 ▽


 学級委員長を決めてもらう、と先生が言った。クラスのみんなはとてもやる気で、一斉に手を挙げていた。挙げていないのは私くらいだ。まあヒーロー志望としては委員長職はリーダーシップを鍛えられる絶好のチャンスだよなあ。私はヒーローになりたくて入ったわけじゃないから委員長には全く興味はないのだけど……
 みんながやりたがって結論が出ないので、飯田の提案により推薦で決めることになった。みんながみんな自分に入れるだろう中で、複数票をとったものこそ委員長に相応しいとかうんたら……私は委員長に興味がないので自分には入れない。誰に入れようか思案して、取り敢えず一番委員長!って感じのする飯田に入れることにした。結果は緑谷三票、八百万…さん?二票、他その他大勢一票。私の入れた飯田は他に入れたらしく、「一票…!!」と喜んでいた。これで喜んでくれたなら何よりである。
 結局、委員長は緑谷、副委員長が八百万さんで決定した。緑谷はなんだか委員長らしくないが、みんなは賛成らしく(爆豪以外)緑谷に激励を送っていた。いい人の集まりかよ……

 そんなこんなでお昼、私は変わらず一人で、今日は食堂に向かっていた。今日からお弁当いらないとお母さんに言ったら「反抗期!?」と驚かれたので朝からちょっとめんどくさかった………なんなんだろうあの親……なんかもう色々面倒くさいよ……
 溜息を吐きながらご飯を買って席を探していると、ぐい、と制服の裾を掴まれた。え、とそちらを振り返ると、物間が座っていて、ポンポンと隣の椅子を叩いていた。

「え…………なに物間くん」
「一緒に食べてあげるって言ってんだけど!?」
「えーいいよ別に……」
「良いから座れよ!!」

 グッと引っ張られて座らされた。面倒くさそうな顔をしたら睨まれた。ごめんなさい。というか一緒に食べたいならそう言えばいいのに……

「相変わらず独りみたいだね石動は?」
「え、ああうん…」
「あーそんな独りな石動と一緒にお昼食べてあげてる僕って優しー! もっと感謝してもいいんだよ?」
「え………そんな嫌嫌なら別にいいんだけど…」
「うるさい」

 急に真顔になるのでまた思わずごめんなさいと謝ってしまった。なんなの物間何がしたいのか分かんないんだけど……
 それから昨日と同じようにイヤミをさんざんぶつけられ、若干鬱陶しく感じていると、不意に隣が静かになった。ん?と隣を見ると机に伏している物間と、サイドテールの女の子がいて、思わず目を瞬かせた。何事だ。

「悪いね、なんか困ってた?」
「え? あ、ああいえ……まあ若干鬱陶しくなってきてはいましたけど」
「何かコイツ心がアレなんだ、許してやって」
「心が」

 アレってなんだいや待ってなんとなく分かる。そうか物間心がアレなのか………ごめんね、今度からもうちょっと優しくするわ………うん。
 サイドテールの子はB組の拳藤さんというらしく、見る限りだと早くもB組内では姉御の地位を確立しているようだ。「物間の友達?」と聞かれ友達になった覚えはないので首を横に振ると、拳藤さんは苦笑して、「多分絡んでくるのは友達になりたいからだと思うよ」と言われ、今までの言動を思い返しつつ、首を傾げた。拳藤さんそれは見当違いじゃないかな……
 首を攻撃された物間は暫くして意識を取り戻し、何が起こったのか分からないというような間抜けな顔をしていた。そんな物間を見て拳藤さんと二人で顔を見合わせ笑った。やば拳藤さんめっちゃいい人。友達になりたい。
 しかし拳藤さんは少しすると他の友達のところに行ってしまい、私はまた物間と二人になった。物間の顔を見て思わず溜息を吐くと、ぐいとほっぺを引っ張られた。いたたたた。

 と、そんなやり取りをしていると、ウウー、と警報が鳴った。ほっぺを引っ張られた体勢のまま固まり、顔を見合わせる。放送によれば、セキュリティ3が突破されたらしい。今すぐ屋外に避難しなければならないのだとか。物間はガタンと立ち上がり、「逃げるぞ!」と私の腕を引いた。私はそんな物間を引き止めて、落ち着くように言った。

「何だよ早く避難しないと……」
「大丈夫だってば! 手! 貸して」
「はあ?」
「行くよ」

 物間の手を取り、頭に屋外の中庭を思い浮かべると、次の瞬間にはその場所へテレポートしていた。物間は呆けた顔をして暫くボーッとしていたが、すぐにハッとして私から手を放した。

「石動………い、今のはテレポート…?」
「うん。私の個性」
「……それならさっさと言ってくれれば自分でやったのに」
「、え」
「僕の個性はコピー。触れた相手の個性をコピーする」
「え、何それやば………物間くんすごいね…」

 物間の個性を聞いて、素直に感心した私は思ったことを口にした。すると物間は驚いたような顔をして、次の瞬間顔を真っ赤にさせた。

「え」
「っ、み! 見るな!!」
「え、え、何それ物間くんもしかして褒められ慣れてないの? うっそ意外」
「違うし!! うるさいな!! 馬鹿のくせに!!」

 物間の罵倒も照れ隠しだと思えば可愛いかった。


 ▽


 そして午後、他の委員決めが行われた。しかしそれを行う前に緑谷の提案により、委員長を飯田と交代することになった。なんでも先程の警報の騒ぎの際、騒ぎを体を張って沈めたのが飯田だったのだとか………いやまあそれはいいんだけどみんなの言ってる非常口飯田とはなんと事なんだろう。私物間と一足早く外行ってたから分かんないや……というかあだ名が非常口でいいのかい飯田………いや本人がいいなら良いんだけど…?

「あ、ねえ瞬」
「ん? なに? 耳郎さん」
「昨日も今日も昼一緒に食べようと思ってたら居ないからさ、どこ言ってたの?」
「え? ああ………えっと、B組の子と成り行きで一緒に食べてた……」
「成り行き?」
「成り行き…」

 私の答えに耳郎さんは首を傾げたが、すぐに気を取り直し、パッと笑みを浮かべた。

「まあもし良かったらさ、明日はウチらと食べない? 仲良くなりたいし」
「、え」
「あ、B組のその子と食べたかったら無理強いはしないんだけど」
「え、あ、いや! そんな! 一緒に食べよう!」

 パッと今日見た物間の真っ赤な顔が浮かんだが、まあいいかと頷く。だって耳郎さんが誘ってくれたのだ、一緒に食べなきゃどうするんだ。

「(だってまあ物間とは友達じゃないし…?)」

 若干の罪悪感を覚えつつ、私は自分に言い聞かせた。

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