意気地なしヒーロー。

最下位の星座占い


『今日の最下位は、獅子座のあなた! 友達と上手くいかなかったり、思いもよらない大変な事が起きたり、憂鬱なことが続くかも! ラッキーアイテムは……』

「うわあ、最悪……」

 朝の情報番組をなんとなしに見ていると、星座占いのコーナーでそんな声が聞こえてきて、私は思わず顔を歪めた。確かこの情報番組の星座占いはよく当たるとかうんたら聞いた気がする。なんだっけ、星座占いの個性を持ってる人がいるんだっけ。まあどの道、私はあまり占いなんてものは信じるタチではないが、やはり人並みに気にはするもので……

「なになに、ラッキーアイテムは眼鏡……と」

 ほうそれならいつも授業で掛けているのがある。今日一日掛けてたら災難は免れるだろうか。というか友達と上手くいかないって………私まだ友達らしい友達いないんだけども………イヤミかな……? まあそれはさておき、思いもよらない大変なこととはなんだろう。あんまり怖い事じゃないといいな…
 ボーッとテレビを眺めていれば、「遅刻するわよ!」と怒られてしまった。おっとしまった電車に遅れる………いやでも今日学校を休んでしまえば嫌なこと起こらないんじゃないか……とか考えてみたがまあ理由もなく学校なんか休めないし、ヒーロー基礎学はともかくとして、他の授業で遅れを取るのは怖い…! 考査で点数採れないとか私の取り柄が一個もなくなるじゃないか…! それは死活問題だ急ごう遅れる。

「行ってきまーす」

 はあ…………憂鬱だ………


 ▽


「おはよう石動、相変わらずぼっち臭漂ってるね」
「おはよう物間くん今日もイヤミ絶好調だね」

 朝、今日は生徒証を鞄に入れて校門をくぐると、丁度物間と出会した。朝からイヤミを炸裂してくる物間にうんざりとしつつ、並んで歩く。というかなんだよぼっち臭って…? 私そんなに友達いなさそう…? 一応中学の頃の友達がいないことはないんだよ…?

「っていうか、眼鏡? どうしたのそれ」
「ああ、うん。ラッキーアイテム」
「は?」

 奇妙なものを見るような目で見られた。私は憤慨する。なんて失礼な。
 ちょうど靴箱のところまで来たところで、私はふと言わなければならないことを思い出した。この前耳郎さんに誘われてから、何となくうやむやにしてきた話。上履きを履いてまた物間と並んで歩き出したとき、あ、と声をあげると、物間は怪訝そうに私を見た。

「なに?」
「いや、あのね。なんか最近は物間くんと昼ご飯食べてたから一応言っとこうと思って」
「? うん?」
「私今日からクラスの子と食べるから」
「……え」
「まあ別に友達ってわけじゃないし言う必要もないんだけどさ、一応ね。っていうかちょっと前から誘われてたんだけど、いうタイミングが見つかんなくて……はは」
「………」
「物間くん?」
「………たら、………んだよ」

 物間がぼそぼそとなにか言ったようだが、聞き取れなかった。え?と聞き返すと、ギッと睨まれた。…え。

「昼一緒に食べたり、こうやって話したりするのが友達じゃなかったら一体何なんだよ」
「、」

 思わぬ物間の言葉に、私は何も言えずに固まった。物間は私をもう一度睨み付けると、「もういいよ」と先に行ってしまった。

「…………え………」

『友達と上手くいかなかったり…』

 ………もしかして…………これのこと……?


 ▽


「ヘイ! そこの眼鏡の女子リスナー! この英文を訳してくれ!」
「ヒッ、…あ、は、はい!」

 プレゼント・マイクの英語の時間、物間のことで悩みボーッとしていると、突然指名されて、私はガタンッ、と席を立った。クスクスと笑う声が聞こえる。ぅわあ、恥ずかしい……ええと……英文英文………これの訳は、

「��どう言えばよいか分からず、彼にかける言葉が見つからなかった�=cです」
「ハイ正解! 完璧だ! ナイスだぜ!!」

 言い終わって、椅子に座る。…また物間の事を思い出した。��どう言えばよいか分からず�=cまさに今の私みたいじゃないか、この英文。
 …いや、でも少し違うか。

「(��どう言えば�=c…��何を言えばいいのか�≠ヘ、ちゃんと分かってるんだ)」

 勇気が、出ないだけで。


「瞬って頭いいんだ」
「っへ!?」

 お昼休み。私は耳郎さんに今日は一緒に食べれることを告げ、一緒に昼食を摂っていた。耳郎さんの他には八百万さんがいて、私が入ると聞くととても嬉しそうに快諾してくれた。可愛い。いい人だ。
 当たり前だがイヤミが飛んでくることはまったくなく、普通に世間話をして過ごしていた。食堂に来てすぐ物間を探してみたが見つからず、私は完全に謝る機会を逃し肩を落とした。
 そんな私に首を傾げつつ、耳郎さんからの問い掛けが先ほどのアレである。

「まあ、勉強は得意かな…?」
「ふーん、まあ頭良さそうだもんね。眼鏡、掛けてると特に。つかそれどしたの?」
「あー、えっと………ラッキーアイテム、的な」
「的な?」
「的な…」

 正直に答えると首を傾げられた。物間ほど失礼な反応ではないがなんか似たような反応なのでやっぱりおかしいのだろうか……と考えていれば、パン!と八百万さんが手を叩いた。

「それ朝の星座占いですわね?」
「、え? あ、ああうん。あんまり良くなくて…」
「へえ、ヤオモモ知ってんの?」
「ええ! 朝の情報番組でやってるんですの。それのコーナーであるんですけど……」
「けど?」
「今日は私の運勢も芳しいものではなくて……」

 八百万さんも朝の情報番組とか見るんだ…とか少し驚きつつ話を聞いていていると、どうやら八百万さんも運勢があまりよろしくなかったらしい。確か天秤座が獅子座の次に悪かった気がするから八百万さんは天秤座だろうか。

「ふーん………っていうか瞬はラッキーアイテムまで持ってくるなんてそんなに悪かったの?」
「……うん………まあ眼鏡はもともと持ってたし使うから掛けてきただけなんだけど………最下位だったんだよね………んで気休めに」
「うわ最下位? 今日午後ヒーロー基礎学あんじゃん。大丈夫?」
「………保健室行こうかな……」
「サボりは行けませんわ、石動さん!」

 八百万さん真面目………うんいやちゃんと出ますともハイ。ヒーロー基礎学が一番単位多いし出ないと不味いことになる………でも今日ヒーロー基礎学で怪我しそう………やだな痛いの嫌いなんだけど……

「まあウチらも内容によっちゃフォローするしさ、ね」
「耳郎さん……」

 ジーンと感動して、頷く。もしかしたら占いは今朝の物間と喧嘩したことについてだけで、後はもう大丈夫なんじゃないだろうか。全然運勢悪くなんてない。
 …なんてその時私は、そんな甘っちょろいことを考えていた。


 ▽


 今日のヒーロー基礎学は、レスキューの訓練をするらしい。私の個性は多分戦闘よりも救助のほうに力を発揮するので、やはり今日私に悪いことなんて起こらないんじゃないかと思った。半分は願望だったのだけど、まあそれはさて置こう。
 私たちはコスチュームを着てバスに乗っていた。レスキュー訓練用の訓練場は少し離れたところにあるらしく、バスに乗って行くしかないらしい。バスに乗る際、飯田が委員長フルスロットルで仕切っていたのだが、想定していたらしいバスのタイプと違い全て無駄に終わった。落ち込んでいたが恐らく彼は失敗から学ぶ真面目君なので大丈夫だと思う。
 途中、蛙吹さん?が緑谷の個性がオールマイトに似てると言い出して、個性の派手さの話、それから人気の話云々になった。爆豪はすぐキレるから人気が出なさそうという意見にはついつい頷いてしまった。その通りだ確かに。
 しかしそのあとなぜか私の話になったのには驚いた。

「あ、そういや梅雨ちゃんの個性もレスキュー向けだけどさ、石動もそうだよな」
「っ、え!? わ、私?」
「おう、驚きすぎだろ」

 隣に座っていた、確か切島くん、にそう声を掛けられて、思わず私は大袈裟に反応してしまう。爆豪からの睨みに冷や汗を流しつつ、愛想笑いを浮かべる。

「テレポートってさ、色んなことできていいよなー。正直ヒーローじゃなくても潰し利くだろ?」
「あ、あはは………まあそもそもヒーローになりたくて来たわけじゃないし……」
「え」
「あ゛あ!?」
「ひっ」

 私の言葉に一番反応したのは爆豪で、私は突然の大声と剣幕に飛び上がる。怖い。やめて。

「テメエヒーローになる気なしでここ来るとか嘗めてんのか!? あ゛あ!?」
「ひぃぃ」
「ば、爆豪落ち着けよ。女子に怒鳴るとか、男らしくないぜ。なんか事情あるんだろ? な?」
「え、えっと、」

 切島くんに促され事の経緯……つまり両親に無理やり受験させられて気付いたら受かっていたことを簡単に話すと、周りの反応は感心したような、呆れたようなそんな感じだった。

「何となくで受かるとか凄いなー…」
「うんよっぽど実力がないと出来ないことだよ多分きっともともと素質があるんだろうねそれに加えてテレポートっていう強力な個性が…」
「緑谷ちゃん、怖いわ」

 こんなこと聞いて気分を悪くするんじゃないかと心配していたのだが、割とみんな気にしていないようで(爆豪以外)普通の反応だった。こんな奴が受かって申し訳ないよねとぼそりと溢したら、隣の切島くんが反応した。

「そんなことないぜ、すげえことじゃんか! それに、今はやる気なくても、こうやって最高峰で勉強してるうちにヒーローになりたくなるかもだろ? 先のことは分かんねえって」
「き、切島くん……」

 なんだ切島くんめっちゃいい人なんだけど……なんと云うか、男前?っていうか。とにかくちょっと男前すぎて惚れそう………やばいなこれが人間的なかっこよさか……爆豪も見習えばいいのに……

 そんな感じでワイワイやっていれば、訓練場に着いた。USJの様なその場所にみんなのテンションが上がる。嘘の災害や事故ルーム……略して本当にUSJというらしいそこにはプロヒーローの13号がいた。どうやら今日は相澤先生と13号、そしてオールマイトの三人体制で見ることになっていたようなのだが、オールマイトは諸事情で来られなくなってしまったらしい。諸事情とはなんなんだろうか……
 それから13号からのお小言を聞いて、これから訓練が始まろうとしていた。しかしその瞬間、��それ�≠ヘ起こった。

 広場の方で空いた、ワープゲートのようなもの。それを見た瞬間の、相澤先生の焦ったような声。一かたまりになって動くな、とその声にみんなは異変に気づかず首を傾げた。

「敵だ!!」

 相澤先生のその言葉でようやく気付いた生徒たち。しかし気付いたところで動けるわけもなく、私たちは固まっていた。

「石動」
「っ、え、あ、は、はい」
「お前ここから校舎にテレポートできるか」
「あ、い、いえあの、三キロはあるので一度では………三回に分けると、少し時間かかります」
「それでもいい。警報が鳴らない………校舎に今すぐ戻って応援を呼んでくれ」
「は、はい!」

 言われたとおり、私はギリギリ一キロ先に神経を集中させ、個性を使った。…いや、使おうと、した。


「………、?」
「おい石動何してる早く――…」
「できません」
「………は?」
「て、テレポート………なんでか、出来ないです…」

『今日の最下位は、獅子座のあなた! 友達と上手くいかなかったり、思いもよらない大変な事が起きたり、憂鬱なことが続くかも! ラッキーアイテムは……』

 ああ………今日日の占いは良く当たる。

prev next
Back to top
ALICE+