意気地なしヒーロー。
生半可な覚悟すらない愚図
「はあ……」
ハイ、ドウモ、コンニチハ。なんやかんやで土砂ゾーンのほうに飛ばされてきました石動瞬です。一緒に轟くんもここに飛ばされてきたんだけど轟くんやばい強すぎて私何も出来ないわ。いやまあ今のところ私ただの役立たず以外の何物でもないのだけど。
…いや、なんというか、一応テレポートは出来るのだ。さっき信じられなくて近い距離にテレポートしてみたら出来たし、この外に出ようとすると出来ないだけで、使えることには使えるのだ。先程まで一緒にいた相澤先生曰く、どうやら移動系の個性限定で使用距離が狭められているのだとか。何それ当に私の天敵みたいなの。こわ……むり帰りたい……占い当たりすぎじゃね…?もう占いとかしなくていいよ………なんかそっちのほうが平和な気がする……
「…そしたら物間と喧嘩することもなかったのかな…」
ぽつり、つい呟く。いや、まああれは確実に私が悪かったのだけど。友達ってこと完全否定してしまった私が悪かったのだけど。いやでもね、いつもの物間の態度もあれ結構問題だと思うわけですよ。あんなイヤミばっか言われてて友達だと思われてるなんて思わないじゃないか? ね? ぼっち臭とか言うしさ………あんなの気づけって方が無理じゃんね…?
「なにブツブツ言ってんだ?」
「うおわあ!? とととと轟くん」
「…? ああ?」
「あはは、お、終わったの?」
「……ああ……まあな。とりあえず相手の自信の根拠を聞き出した。今すぐ広場に向かわねえと」
そう言って歩き出した轟くん。私は広場とか怖くて行きたくないので普通に見送ろうとしていれば、ふとなにかに気付いたらしい轟くんが小さく声を上げて私を振り返った。
「……そういや、石動」
「…え? な、なに?」
「お前USJ内ではテレポート出来るんだよな?」
「………」
「石動?」
「……で、デキマス」
「…? じゃあ広場まで連れてってくれねえか」
轟くんからの申し出に、ついつい私は耳を塞ぎたくなった。いや、普通に無理だから………広場とかここ以上に敵いるし怖すぎる…! 頷くことも、かと言って断ることも出来ずに固まっていると、轟くんが不思議そうに「石動?」と首を傾げて近づいてくる。
「……怖えのか?」
「…あ、あはは?」
「そういやヒーロー志望じゃねえんだったな」
「え、ああ、うん、まあ。轟くん聞いてたんだね」
「ああ、まあな」
轟くんは少し考える素振りを見せて、私の隣に座り込んだ。何だろうと首を傾げると、轟くんは「あー」と声をあげる。
「怖えのは分かる。だが雄英にいる以上、ずっと��そう�≠ナいられねえってことは、分かってんだろ?」
「………」
直視したくない現実を急に突きつけられたようなな気がして、私は顔を逸らした。「石動」と名前を呼ばれる。
「相澤先生がピンチかもしれねえんだ。もしかしたら、オールマイトも。クラスの奴らだって。ヒーロー志望じゃなくたって、自分のしなきゃいけねえことくらい、分かるだろ」
「………」
私は何も言い返せなかった。
私は少し悩んだ挙句、結局轟くんを連れて広場に移動した。物だけなら単体で飛ばす事ができるが、人だけをテレポートさせることは出来ない。必ず私が触れて、一緒に移動しなければいけないのだ。本当の所広場になんか行きたくないし、すぐ場所を離れるにしてもやはり怖い。だが先程のあの轟くんの説教を聞かされた上で尚駄々をこねていたら流石に最低だ。
広場の端の方にテレポートすると、轟くんは軽く礼を言ってきた。
「ありがとな。危ねえから後は隠れられそうなとこ移動して隠れてろよ」
「ああ、うん……」
ありがとう、とそう告げ、さっさとその場を離れようとした時、轟くんが血相を変えて振り向き、私の腕を掴んだ。
「石動!! あそこまでテレポートしろ!!」
「っ、は!?」
「テレポートだ!! 早く、オールマイトが!」
「は、はい!?」
オールマイトがどうかしたのだろうか…と困惑しながら、私は轟くんを連れて中心までテレポートした。ああ……結局中心まで来ちゃったよ……
どうやらオールマイトがピンチだったらしく、轟くん、と、他に爆豪と切島くんがそこに駆けつけていた。あとよく見たら緑谷もいた。っていうか平和の象徴がピンチになるほど強いのこの敵……なにそれ怖すぎ………普通に私らだけじゃ無理に決まってんじゃん……
テレポートするのをつい忘れて、爆豪が敵を脅しに掛かっているのを見ていれば、ふ、と体中に手が貼り付いた奴と目があった。手の隙間から覗く瞳は狂気に染まっていて、ひ、と思わず後退りした。
「目が合っただけで怖がるなんて、傷つくなぁ」
「っ、!?」
ゆっくり近づいて来たそいつは、す、手が伸ばしてくる。横で轟くんと切島くんが「逃げろ!!」と叫んでいるのが分かる。私は伸びてくる手に言い知れない恐怖を感じて、五指が完全に私に触れる直前に少し後ろにテレポートして逃げた。バランスを崩して後ろに尻餅をついた。先程まで私のいた場所に、テレポートが間に合わず触れてしまったらしい眼鏡がボロボロになって、カシャンと落ちた。
……私も一足遅ければ、ああなっていた…?
「ヘェ、テレポートかぁ。ワープゲートはいるけど、移動系はいくらいたって困らないよなぁ」
「はっ………はっ、はっ…………?」
恐怖でバクバクと波打つ心臓を抑えて、浅い呼吸を繰り返す。そんな私を少し離れたところで見下ろして、そいつはにやあ、と笑った。
「生徒、一人くらい攫っていくのもアリかなぁ…?」
「…!?」
ゾッとするような笑みと台詞に思わず後退りすると、そいつはあははと笑って、「まあそれは置いておいて、」と��脳無�≠ニいう異形型?の個性の奴にワープゲートの奪還を命じていた。
気まぐれ、か、それとも、悪い冗談だったのだろうか、と首を傾げて、私は一度、とりあえず大きく息を吐きだした。しかし心臓はうるさいままで、震えも止まってはくれなかった。
それからしばらく、私はそこから動けずにいた。震えが止まらなくて、自分の体が自分のものでないようだった。怖いと子供のように泣き喚きたい気分だった。
オールマイトが脳無とかいう化物のショック吸収を��なかったこと�≠ノして、USJの外に殴り飛ばした。300発以上も、全力でパンチを打っていたオールマイトはやはり��プロ�≠セった。かっこいいと思った。そして、私にはできない事だと、思った。
「石動! 大丈夫か?」
「っ、え、あ、き、切島くん、」
「立てるか?」
「あ………うん、ありがとう……」
「とりあえず俺達がいてもオールマイトの邪魔になるだろうし、他の奴ら助けに行こうぜ」
「……もうやだよ……」
「え?」
「え、あ、い、いや何でもない! あはは」
切島くんの手を借りて立ち上がり、先程の呟きを隠すように笑う。切島くんは不思議そうな顔をしていたがすぐに快活に笑って、「じゃあ行くか」と前を歩き出した。
「(行かなきゃダメなのかな)」
怖い。
さっき、敵を目の前にして、本当に怖くて、脚が震えて動かなかった。テレポートも、直前まで忘れてしまうくらい、頭が恐怖でうめつくされていた。ヒーローというのはその恐怖と戦っていく仕事で、決して生半可な気持ちで立ち入っていいものではない。まして、生半可どころか、その半分の覚悟もない私なんかが。
「(やっぱり私なんか、雄英に来なきゃよかった)」
私は暫く、そこから動けなかった。
prev next
Back to top
ALICE+