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痛い。
ズキスギと身体に走る痛みで顔を歪める。
何とか自分は生きているらしい。
死んでいてこの痛みはない。
マジでない。やめてくれ切実に。
目に力を入れ、何とかこじ開ける。
一番に目に入ったのは、知らない天井……ということは、もしかして誰かに助けて貰ったのだろうか。
首を横に動かしてみる。
動いた。良かった首はなんともないようで。
ホッとしたところに視界に入ったのは、なんだか豪華に見える扉。
何処かでこんな扉を見ましたよ。ええ。
流された異世界で魔王になってしまったアレとか、メイドになって働くことになったアレとかで。
そんな扉を使うお金持ちに拾ってもらったのだ。
そうに違いない。
そんな事を思っていると控えめに扉がノックされた。
え、どうしてたらいい?
寝てるふり?
今、目覚めた風?
と、わたわたしてる内に扉は開かれる。

「あ!良かった!目覚めたんですね!」

飛び込んで来たのは赤。
そして、にこりと微笑む若草色の瞳を持つ女性だった。
赤い髪……漫画やアニメ、ゲームではよく見るけれど。
千穂が驚いて凝視している内に、彼女は千穂に近付くと、てきぱきと作業を始める。
慣れた手つきで、治療に使うのであろう器具やら、すごい色のした液体やらを取り出す。

「失礼しますよ」

突然向いていた逆の方向から降ってきた男性の声にビクリと体が震える。
顔を向ければ、黒髪の男性がちょっと困ったように此方を見下ろしていた。
黄色……いや、金の瞳がかち合う。
きっと赤髪の女性を見つめていたが為に気付かなかったのだろうけども。

『(全く気配が無かった!)』

もう、なにがなにやら……。頭が、とにかくグルグルと回り、何か言っていたのは分かったが録に返事も出来ずに、されるがままに治療をされたのだった。
千穂は上半身を起こした状態で背中の柔らかいクッションに凭れていた。
そして赤髪の女性だけ部屋を出て行く。
なにやら千穂にも言葉を掛けてくれたが、千穂はそれどころでは無かった。
さらりと揺れる赤い髪は、どう見たって染めているように見えなかったし、根元まで赤かった。
あれは地毛で赤い。
そんな髪を日本で見たことがない。

『(いやいや、まさかそんな)』

崖から落ちて外国とかあるわけない。
漫画じゃあるまいし。
きっと、ここの人が外人の医者を雇ってるんだ。
そうだそうに違いない。
無理矢理そう納得したところで、扉がノックされた。
部屋に残っていた黒髪の男性が扉を開ける。
入って来たのは、そう今まで服装なんて気にしないようにしていたけども……。
騎士のような格好をした二人(男女)に囲まれたマントを羽織った男性がやってきた。
なに?なんなの?コスプレなの?

「目が覚めたって聞いてな」

人が良さそうに微笑みながら近寄ってくるマントの男。

『(なに?なに言ってるの?この人!)』

英語であるなら多少は分かると自負していた千穂でも全く理解が出来ない。
そういえば、治療中は全く話を聞いていなかった。
だから、言葉が分からないというのも気付けなかった。
そして回りの人達も喋りだし、

『(ああもう、何なのこれ……)』

混乱しすぎてキャパオーバー、くらりと千穂は意識を飛ばした。
お願い。どうかこれは夢であって。
せめて、言葉が通じる人に会わせて。

「ありゃ、気を失っちゃったね」

オビの声に白雪が慌てて見れば、クッションに凭れたまま、くたりとしている女性。

「大勢で押し掛けたのが悪かったか」

ゼンも申し訳なさそうな顔をしつつ、すぐ切り替えたように真剣な瞳をオビに向ける。

「それで、どうだった?」

どうというのは、オビもゼンも傷だらけで見たこともない不思議な格好の彼女が、城内で倒れているのを見た時、何処かの刺客ではないのかと疑っていたことだった。
ゼンを狙いに来たのか、それとも白雪を狙いに来たのか。

「そうですね。何処かの刺客っていうのは無いでしょうね」

オビはキッパリ言い切ると再び口を開く。

「お嬢さんの髪の色にも驚いていたようですし、俺が気配を消して近付いても全く気付かなかったですし」

「確かに。可哀想なぐらいびっくりしてた」

白雪も顎に手を当てて頷く。

「あれが演技だったら大したもんですよ」

オビは大袈裟に肩をすくめてみせる。
考え込んでいたゼンにミツヒデは軽く肩を叩く。

「ま、今どうこう考えても分からんし、彼女がまた目覚めたら聞いてみればいいんじゃないか?」

俺も彼女が刺客だと思えんしな。
ミツヒデはそう付け加えるとニカリと笑った。

「そうだな」

ため息混じりにゼンは吐き出すと、ミツヒデに答えるように少し口角を上げる。

「話がまとまったなら早く行かないと、仕事が溜まっていく一方だよ」

「それは言うな。木々」

ゼンはうんざりした顔をすると、くるりと白雪とオビに顔を向ける。

「白雪、一応まだ刺客じゃないと決まった訳じゃないからオビを置いていく」

「う、うん」

白雪が頷いたのを確認するとゼンはオビに目を向けた。

「オビ、頼んだぞ」

「はい。主」

ゼンはオビに頷くとミツヒデと木々を伴って部屋を出て行った。

「さてと」

オビはおもむろに彼女に近付くと、優しく体を抱き上げクッションを退かして寝かし付ける。

「お嬢さんは、これからどうするの?」

布団を肩まで被せてから、オビは白雪に振り返って問いかけた。

「一旦、薬草室に戻ろうかと思ってるよ」
「そっか、じゃあ送るよ」

薬草室に戻す物を白雪から受け取り、オビはちらりと彼女を振り返ってから白雪と一緒に歩き出した。

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