彼は誰時
門前までたどり着くと、ひとりの男が立っていた。
その男は黒い着流しを纏い、首に白い襟巻きをしている。
お客さんか何かかな?
そんな事を思いながら声をかける。
「あんた、そこで何をしてるんだ?」
男は私の方へ振り向くと少し考えるようにした後、黒ずくめの着物によく似合う落ち着いた口調で訪ねた。
「……近藤さんか、土方さんは居られるか?」
「……」
よく見れば、その男はいつでも刀を抜けるように……なのか柄に手をかけている。
恐々としないように気をつけながら、その男に私は問う。
「あの人達の知り合いか?」
「……そんなところだ」
本当に知り合いかな……。怪しい……。
「用件はなんだ?得体の知れないやつを入れる訳にはいかない。すまないが名前を聞いてもいいか?」
男はその言葉に虚をつかれたようだった。
少し驚いたように目を見開く。
「俺の名は斎藤一。江戸にいたころ、近藤さんや土方さんに世話になっていた」
「江戸にいたころ……」
「ああ。名前を言えば分かるはずだ。取り次いでもらえるか?」
斎藤と名乗った男は存外に柔らかい口調でそう答える。
斎藤一……?
近藤さんの名前を聞いた時と同じような違和感に内心首を傾げる。
なにかが出てきそうで、結局なにも出てこないことにイライラする。
あー!どこで聞いた事があったのかな!?
まあ、この人が知り合いなら案内しても問題ないよね。
「……疑ってすまなかった。二人は中にいるはずだ。ついて来てくれ」
「いや、こちらも手間を取らせて済まない。あんたも、ここの人間か?」
「いや、俺は……ここで働かせてもらってるんだ。名前は井吹龍之介」
「……なるほど」
斎藤という男が小さく頷いた。
今の説明で納得したのかな。
そう思いながら案内した。
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