彼は誰時

斎藤を案内した時の土方さんや他の面々の喜びようは凄いものだった。
土方さんは昨日のイメージとは違い、砕けた表情をしていたのだ。
土方さんも笑うんだな。なんて失礼なことを思ってしまった程だった。
斎藤が浪士組に参加するとかなんとか言ってたけど、私にはよくわからない話だった。
そうだ。早くお酒を買いに行かなくちゃ。
すぐ側にいた平助に酒屋の場所を聞いて、そっとその場を離れた。


お酒はなんとか買えた。買えたのはいいが私は道に迷っていた。

「えーと、あっちからきた……よな……?」

京というのは、どこの道も同じように見える。
初めて出歩いたから本当に道が分からない。
目印でも付けとけば良かった。
両脇に店の連なる大通りを歩いていると、前方から男の必死な声が聞こえてきた。

「お、お侍様!何卒(なにとぞ)お許し下さい!」

子供連れ――五歳ぐらいの男の子だろうか――を連れた商人と思われる男が、柄の悪そうな男達(三人組)に囲まれている。
彼は重そうな巾着を震える手で男達に差し出した。

「安心しろ。この金は国の為、我らか使ってやる」

「そうだそうだ。我らは、天子様の御為に働く勤皇の志士だからな」

男達はそれを受け取り満足そうに笑う。
それを子供は上目遣いに睨み付けていた。

「餓鬼!なんだ、その目は!?」

一人の男がそれに気付き喚く。

「お金返せ!泥棒!」

「泥棒だと!?餓鬼がぁ!」

子供の言葉にカッとなった男は、その子供を殴り付けようと拳を振り上げた。

「――おいっ!」

たまりかねて、私はその手首を掴みこちらに注意を向かせると手を放す。

「いい加減にしろよ、相手は子供だろ」

つか、子供に手を上げるなんてなんちゅー奴らだ。

「子供であろうと、武士を愚弄すれば容赦はせん」

側にいた男が凄みのある声を張りながら私を睨み付けた。

「武士だかなんだか知らんが、金を巻き上げて子供を殴ろうとするのが武士だっていうのか!だったら俺はその武士ってのは願い下げだね!」

「なんだと!?」

「叩っ斬ってくれる!」

血気盛んな男三人組は一斉に刀を抜いて、一歩私に近づいた。
ああ、やってしまった。
怒りに任せて、相手を怒らせてしまった。
後悔しても後の祭り。
じり、と後退りをする。
なにか、無いだろうか……。と無意識に腰に手を持っていくと、刀の柄に手が触れた。
……仕方ない……か。
なにもしなかったら殺られてしまうかもしれない……。

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